Halloween Trap
──数時間後。
完成したものを持って、リコリスお姉ちゃんの部屋へ向かった。
パパとママのはアガットに届けてもらうようにお願いした。
「リコリスお姉ちゃん、いる?」
「もちろんよ、アリス!」
「あれ?……もしかしてお出掛けやめちゃったの?」
「気にしないで、アリス。断る口実が出来て助かったんだから」
「リコリスお姉ちゃん……」
「クッキー、上手に出来たのかしら?」
泣きそうになった私に気付いたのか、リコリスお姉ちゃんは話題を変えてくれた。
「はい、これ……リコリスお姉ちゃんの分」
「アリス……これって……」
「うん! 大きく描いたよ、お姉ちゃんの絵。パパ達のは折りたくなくて、小さいけど……」
「素敵な絵ね、アリス。折れ目がないの、真っ直ぐなアリスと同じ……か、勝ったわ! 両親にも!! 折れ目の付いてないポスターサイズの……アリスが描いた絵!! 直ぐにでも額を発注しないとだわ!!」
「……リコリスお姉ちゃん?」
「あら、やだ! 聞こえちゃった?」
「早口だったけど、呪文なの?」
「え、ええ。呪文よ……それより、はあくんにも作ったの?」
「作ったよ。すっごく大変だったの……」
砂糖を入れすぎて、床にぶちまけちゃって蟻だかりが出来たりとか。
砂糖が多すぎて中々、混ざらなくて小麦粉を足したり……
「はあくんもきっと、喜ぶわよ」
「うん、渡してくる!」
ハルクはきっと、私の部屋にいるはず。
いつものように漫画を読み漁ってるんだろうな。
「……ハルク! って、あれ?」
ハルクは私の部屋にいなかった。
暫く探し歩くと、ハルクはお客様に挨拶をしていた。
真剣な顔、営業スマイル……普段のハルクとは別人で一瞬……ホントにほんの一瞬だけ、ドキッとした。
「……忙しそう……」
私は静かに部屋に戻った。
部屋の外、ドアノブにハルクへのクッキーをかけて眠った。
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