Insensitive

翌日。
学校が終わり、アガットの車がある場所まで走り、乗り込む。



「アガット!今から街に行きたい」

「街ですか?少しの間ならば、行けなくはないですけど」

「お願い!少しだけでもいいから行きたい」

「わかりました。たまには寄り道しましょうか」

「ありがと!」


数十分後、街に着いた。
駐車場に停めて、車から降りる。



「なあなあ。ここら辺でアリスくらいのヤツが行きそうなところってわかる?」

「うーん。若い女の子なら服屋や雑貨屋とか行きそうですよね。しかし、どちらも沢山ありますし。メイズならば、そういうのは詳しいんですけど、俺だとまったく…」

「そっか…」


取りあえず、ショッピングモールの方に行ってみることになった。ここなら、色々な店があるからってアガットが言っていたから。



「上の階から見て行きましょうか?」

「うん」


二人でエレベーターのある方に歩こうとした時、



「あれ?お坊っちゃまとアガットさん?」


振り返ると、大きな紙袋を肩から下げたアリスが立っていた。まさか会うとは思わなかった。てか、服が全然違う。オレと出掛けた時とまた違う服を着てた。最初見た時、一瞬、誰かと思ったぞ。



「アリス!」

「やっぱり来ちゃったんですね、お坊っちゃま…」

「え?やっぱりって…??お坊っちゃま、アリスさんが行くことを聞いて、街に行こうって言い出したんですか」

「……」


バレた。
図星されたオレは、聞こえないフリした。



「これからクレープを食べに行くんですけど、お二人も一緒にどうですか?」

「行く!」

「そうですね。せっかく来たんですから、食べましょうか」

「…って、やっぱり聞こえてるじゃないですか。お坊っちゃま。聞こえないフリなんかして」

「……」

「まあまあ、アリスさん。俺は気にしてないですから」


3人でクレープ屋に行くことになった。

行った先のクレープ屋は人気があるのか、少し並んでいた。てか、女ばっか。たまに男がいても、隣にはやっぱ女いるし。男だけは浮くもんな。オレもアリスいなきゃ、一人で並べないし。



「メニューはこっちにありますよ」

「どれ…」


すげー。メニューが沢山ある。逆にありすぎて食べたいやつがわかんねェ。
迷っていたら、アリスが教えてくれた。



「お坊っちゃまなら、チョコ系のがいいんじゃないですか?この定番のチョコバナナとか、他にも…」

「じゃあ、それにする」

「わかりました。アガットさんはどうします?」

「俺もお坊っちゃまと同じのでいいですよ」

「アガットさんはこっちのクレープでもいいんじゃないですか?前にこの組み合わせ、好きだって言ってませんでした?」

「あ、本当ですね!じゃあ、俺はこっちにします」


何かこの二人、仲良すぎじゃねェ?お互い意識してないにしてもさ、距離が近過ぎる…。

そうしているうちに注文はオレ達の番になり、アリスが3つのクレープを注文した。



「お客様。カップルの方でしたら、割引になりますけど、どうしますか?」

「カップル??」

「はい」


は?カップル割引??何だ、それ。
どうやら店員からはオレの姿は見えてないらしく、アリスとアガットしか見えないようだ。てか、カップルじゃねェよ、この二人。



「そうなんですか?じゃあ、それでお願いします」

「ありがとうございます。お値段変わりまして…」

「違ェよ!……むぐっ!」


アガットがいきなりオレの口を手で覆う。何すんだよ!



「お坊っちゃま。注文も終わりましたし、俺達はあちらにいきましょうか?」


強引に会計の列から連れ出され、クレープ屋付近にあるベンチで待つことになった。
すると、アガットが一度オレから離れ、アリスと一緒にクレープを持って、戻って来た。



「はい。お坊っちゃまのチョコバナナクレープですよ」

「……」


アリスからクレープを渡される。オレは黙って、クレープを受け取ると食べ始めた。うまい。うまいんだけど…。



「また怒った顔して…。何に怒ってるんですか?」

「別にー」

「もしかしたら、カップル割引を気にしてるんじゃないかと」

「え?あれは普通で買うよりも安く買えるから使っただけですよ。カップル割引だと通常で買うよりも少し安くなるので」

「ふーん…」


割引なんかで買ったことないから、よくわかんねェよ。金を気にして、物とか買ったこともないし。



「クレープ屋には他にも15日はいちご系のが安くなったり、9のつく日にちは半額になったりと割引が多いんですから!」

「オレ、クレープ屋自体に今日初めて来たし…」


どうせオレだとカップル割引なんて使えねェよ。アガットの方がそう見えるのだってわかってる。大人だし。わかってても、イライラはなかなか治まらない。

黙々と食べていたら、クレープは食べ終えてしまった。アリスはまだ食べ始めたばかりで、クレープを食べていた。ジッと見ていたら、アリスがオレに気づく。



「このクレープ、食べたいんですか?」

「違ェよ」


オレ、食い意地張ってるように見えんのかよ。すると、アリスはオレの前に食べかけのクレープを寄越す。



「食べかけですけど、良かったら一口どうぞ」

「別に食べたくて見たわけじゃ…」

「そうなんですか。てっきりいちごのクレープも食べたかったのかと」


そう言って、アリスは再びクレープを食べ始める。オレと違って、ニコニコしながら食べていた。オレが子供だから、子供扱いするんだろうけど、本当に子供としか見られてないんだ。何か余計にイライラは募った。





クレープを食べ終え、オレ達はそろそろ帰らないといけない時間になり、先に帰ることになった。アリスはまだ買い物があるからとそこで別れた。


車に乗って、窓の景色をボーっと眺める。イライラはいつの間にか治まっていたが、何か物足りない気がした。

そっか。明日もアリスは休みなんだ。



「…つまんねェ」


何で休みなんてあるんだよ。休みなんかなきゃいいのに…。





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