Sweets Power
それから六日が経過した。
私は穏やかな日々を過ごし───てない。
リク様に婚約者が出来ると思うと、気が気じゃない!
あー。やだな。
帰って来て、紹介なんかされたら…。
想像もしたくない!
そうなったら、ここで続けてく理由がなくなるから、退職届を書かなくちゃ。
せっかく楽しく仕事が出来る職場なのに…。
「はああああああああ…」
「随分と大きいため息ね、アリス」
「だって、リク様に婚約者が出来たら、しばらくは立ち直れない…」
洗濯物のシーツを掴んだまま、私は答えた。
すると、シーツを干し終えたスマルトが私の方に近づいてきた。
「リク様、あまり上手くいってないみたいよ」
「え?」
「リク様だけでなく、他のご兄弟もね。特にハルク様とドラ様なんか婚約者候補の令嬢と初日の夜以外、会ってないみたいよ。ハルク様はともかく、ドラ様が反抗するのは珍しいわよね」
「確かに………ん? でも、リク様もそっち側なのよね?」
「えっと……どちらかといえば、そうなるわね」
はぁ。
良かったわ……って、逆にチャンスじゃない!
叶わぬ恋なら、せめてリク様が少しでも元気を出せるお手伝いだけでも……
「そうだわ! こういう時こそ、お菓子を差し入れて元気出して貰わないと! ついでだわ、お坊っちゃま達にも渡そう!」
思い立ったら、即行動よ!
「え? ちょ、アリス!?」
「スマルト、情報ありがとう! 私、頑張るわね!」
その夜、私は心を込めてショートケーキ風なマドレーヌを作った。
リク様が少しでも笑顔になれるといいな。
ついでに、お坊っちゃまも。
……もちろん、ドラ様にも送った。
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