Lemon




「花。一緒に選んでくださり、ありがとうございます」


彼女と別れると、直ぐに花束を地面に投げつけ……何度も踏み潰す。


「アメジスト様」
「ノワールか」
「これを」


渡されたのは、黒い薔薇の花束。


「悪いな」


花束を受け取り、車に乗り込む。


「……もう何年になるんですか?」
「さあな。数えたくもない」
「それなら、もう──」
「アイツへの警告だ」
「……彼へ、ですか。娘にはその為に?」
「今日のは偶然だ。俺も驚いたよ」


車が止まると、雨が降っていた。


「ここからは一人で行く」
「お気をつけて」


一年ぶりに訪れる。
相変わらず綺麗に手入れがされていた。


「一年ぶりだな、ラピス……」


彼女の墓石に花束を投げ置く。
花束は無様に花びらを散らせ、音もなく地に落ちる。


「誕生日、おめでとう」


何の感情もない、只の言葉を添えて。









END.
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