Pair(対/つい)




屋敷に帰って来た私は、部屋で着替えてから、エクルと共に書斎に向かう。ここには沢山の本があるから、楽しいのよ。私が気になっていた本とかもあるし。リクやカルロに聞いたら、好きな本を読んでもいいと言ってくれたし。ここは甘えよう。

その時。
前方に私の片割れの姿を見つけた。機嫌が良いのかスキップしていた。何かムカつくわね…。ここは、この片割れに何か言わないと気が済まない!


「ちょっと、そこの変態!」

私が後ろからそう叫ぶと、ライが振り返る。そして、私を見るなり、ニヤニヤし出した。


「メアじゃん!どーした?おにーちゃんが恋しくなったか!?よし。ハグしてやる!」

「違うわよ!何なのよー!あの女は!!」

「女?」

ライが不思議そうに首を傾げた。短期間だが、この顔は本当にわかっていないようだ。


「メア様が言ってるのは、カメリア様のことです」

「カメリア?あー」

エクルがライに伝えたことで、ライがようやく言った意味がわかったらしい。


「カメリアに何か言われたのか?メア」

「あの女に喧嘩を売られたのよ!!」

私がそう言えば、エクルも何度も頷く。エクルもあの女のこと、嫌いだからね。


「ケンカ………メア。カメリアに比べると、胸ないしなー」

「……………はあああ?」

今なんて言った?こいつ。私に胸がないと言わなかった?しかも、私の胸辺りを見て、言いやがった!


「ライ様!!どうして、そんなひどいことを言うのですか!」

「え、だって、事実じゃん。おまえもメアよりはあるみたいけど、小さいよな!」

ライが笑いながらエクルにまで、やはり胸を見ながら暴言を吐いた。私とエクルは無言で頷き合うと、ライに襲いかかった。


「この変態が!!その顔をぶん殴らせろ!!」

「は!?……危ねー!」

私はライを殴ろうとしたが、ライは避けた。何度か繰り出すもライには当たらない。


「この、ちょこまかと…!」

「メア様。私がライ様を押さえます」

「お願い!エクル」

ライはあっさりと捕まり、エクルに羽交い締めされた。私はライをぶん殴ろうとしたのだが、ニヤニヤするライを見て、何故だか殴る気が失せた。


「……………」

「どうしたんですか?メア様」

「そうだ!メア。どーしたんだよ?ヤれよ!」

「何か今、違う意味に聞こえたわよ。……止めとくわ。エクル。ライはもう良いから、行きましょう」

「わかりました」

エクルはライから離れ、その場から離れる私の後について来た。
部屋に戻って来ると、エクルが私に言った。


「メア様。どうして、ライ様を殴らなかったのですか?」

「………あれはライがニヤニヤとしていたからよ」

「え?」

「だって、あの変態があっさり捕まるなんておかしいでしょ!それにライは、わざとあの状況を楽しんでたんじゃないかと思って…」

「確かに。ライ様、力はかなり強いはずなのに、あんなにあっさり捕まるのはおかしいとは思っていたのですが」

「きっとエクルに羽交い締めされたのも喜んでいたんだわ。だから、あのニヤニヤとしまりのない顔してたのよ!あの変態は!!」

「え……」

私とエクルは互いに震え合った。
そこへ部屋のドアがノックされ、返事をすると、入って来たのは───


「メア様」

「アリス!珍しいわね。私の部屋に来るなんて」

「今日は帰りにお坊っちゃま達と街に寄ったので、その時に見つけたおみやげをメア様に渡したくて」

「おみやげ??」

アリスが紙袋の中から、何かを取り出して、私に渡してきた。それは、可愛い動物達が書かれた缶とお菓子の入った四角い箱。


「メア様、前にここのお店の紅茶とフィナンシェが好きとお聞きしましたので、買ってきました」

「え!?フェアリーズの紅茶とフィナンシェ!覚えててくれたの?ありがとう!」

「喜んで頂けて良かったです。それでは、私は戻りますね」

アリスは私にこれらを渡すと、すぐに部屋を出てしまった。おそらくハルクが早く戻らないとうるさいのだろう。それなのに、わざわざ私のところに持ってきてくれるなんて、感謝しかない。


「メア様。早速、お飲みになりますか?」

「うん!お願い」

「かしこまりました。すぐにご用意しますね」

私が紅茶缶を渡すと、エクルがそれを手に部屋を出ていく。持って来るまで、フィナンシェを食べることにした。箱を開けて、その一つを手に取り、袋を破り、口に入れる。おいしい!フェアリーズのフィナンシェ。何個かあるし、エクルにもあげよう。

さっきまで嫌なことがあったけど、もうどうでも良くなっちゃった!





【END】
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