School infiltration Edition(前)




私は、何故か中等部に来ています。

ことの始まりは、お坊っちゃまをいつものように見送った後、一旦、使用人屋敷で今日の当番表を見に行こうと歩き出した時だ。玄関口にタスク様が乗っている車から顔を出した。



「アリス、いたいた!ちょっとこっち来てー!」

「タスク様。どうかしました?……っ!?」


そっちに向かった瞬間、タスク様に何かを投げつけられ、目の前は白い煙のようなものに覆われ、周りが見えない。しかも…



「な、何これ!ごほごほ!」


咳き込みながら、手でこの煙を何とかしようとするが、煙はなかなか消えてくれない。

しばらくして、白い煙がなくなり、辺りが見えるようになって、私はタスク様に言った。



「タスク様!いきなり何するんですかー!」

「お!薬、効いたじゃん」

「薬?何を言っているんですか??」

「アリス、鏡見てみなよ」

「鏡?」


車のミラーに自分を映す。すると、私の姿が少し幼く映った。さっきまでピッタリだった制服も少し大きく感じる。



「あれ?目がおかしくなったかな。私が少し小さくなったような…」

「小さくなってるよ、アリス。多分、五歳は若返ってるはずだから」

「え!?」


五歳若返ってるということは、13歳。お坊っちゃまと同じ年。



「成功した!よし!」


そう言って、タスク様が車から降りて、私の腕を取って、車に乗せられた。私を後部座席に乗せると、タスク様はドアを閉めて、助手席に乗り込む。



「タスク様!?何で私、車に乗って…」

「よし。出発!」


タスク様のかけ声で車は、動き出す。運転しているのは、ノワールさんだ。そっか。メイズって、まだ免許ないんだっけ?だから、代わりにノワールさんが運転しているのか。



「アリス、横にうちの制服があるから、それを着て。着替えたら、教えて」


突然、後部座席との間に仕切りが現れ、窓も外から見えないようにスモークガラスになっていた。

これは着替えないと、話をしてもらえないようだ。拒否権もない。用意されてたし、最初から計画されてたのね。仕方なく、私は制服に着替えることにした。髪も中学生の頃の髪型にしてみた。車内に櫛や鏡も用意されてあったし。

着替え終えたと言えば、仕切り板は下がっていった。



「似合うじゃん!どこから見ても、うちの生徒に見える!」

「本当だ。可愛いな。アリス、学園にいても違和感ないよ。どこかのご令嬢みたいだ」

「そうですか?似合わないよりはいいですけど、バレた時が怖いですよ…」


お世辞とわかってはいるけど、ノワールさんに言われると、信じてしまいそうになるな。これがブランさんなら、絶対に信じないけど。あの人、口では褒めてても、心こもってないんだよね。



「でも、何故私が学園に?」

「アリスもハルクがどんな学園生活を送っているか知りたいでしょ?」

「それは確かに気になりますけど。だからって、ドラ様の薬を使って、わざわざ私の身体を5歳も若返らせて、潜入させることですか!?」

「自分の目で見たいでしょ?そこは」

「いえ、タスク様のスマホで撮影するくらいで良かったです」

「それじゃあ、つまんないじゃん!」


つまんなくない!私はそれだけでいい。というか、私の場合、静かにやり過ごそうとすればするほどに遠ざかるんだよね。

そうこうしているうちに学園近くに着いたようだ。私とタスク様は車から降りた。



「アリスのことだから、変なことはしないとわかっているけど、あまり目立たないようにね。じゃあ、昼休みに!」

「タスク様!?」


タスク様はそう告げると、行ってしまった。きっと自分の教室だろうけど。だけど、それまでは私はどこにいろと!?

……仕方ない。図書室にでも行こう。あそこなら、時間は潰せるはず。

私、場所がわからなかった。図書室の場所をタスク様にLIMEで聞けば、すぐに返信が来て、場所を教えてもらえたので、早速、そこへ向かった。



図書室は、私が想像していたよりもかなり広かった。街にある図書館と変わらないんじゃ…。流石はお金持ちの通う学園だわ。

本を読むところと勉強するところもちゃんと分かれているし。それでも司書の人はいるから、あまり人目につかないところに行こう。バレたら、やばい。

読みたい本を何冊か見つけて、奥で読む。しばらく夢中で読んでいたら、一冊読み終えた。
ふう。こんなにゆっくり本を読んでるのは久々かもしれない。最近、読めてなかったからな…。


ふと騒がしい声が聞こえてきた。私は立ち上がり、窓の方に向かう。グラウンドを見ると、体育の授業で男の子達がサッカーをやっていた。

あ。お坊っちゃまだ。ということは、一年生か。
マークされながらも、お坊っちゃまはかわして、同じチームの子にパスし、それを受け取った子がゴールに向かって、シュートする。ボールはゴールキーパーの子の手をすり抜けて入って行く。
お坊っちゃまが同じチームの男の子達と喜び、ハイタッチしていた。

笑ってる。あんなに楽しそうに笑うお坊っちゃまは、屋敷ではあまり見たことがない。私の前でも、あんな風に笑うことがなかなかないのよね。アガットさんには見せるけど、私にはいつもむすっとした顔ばっかだし。大体は怒った顔なのよ!ニコニコするのは、お菓子を食べてる時くらいよね。いつもああいう顔をしてれば、可愛いのになー。

隣のグラウンドから、女子達がきゃあきゃあと騒いでいた。女の子達は別の競技をしていたが、見学している女の子達は、ほぼ男子の方を見ているようだ。もしかしたら、同じクラスの女の子達かもしれない。
競技に参加していない男子の中にリゼルの姿を見つけた。つまらなさそうに座ってたが、隣にいる優しそうな感じの男の子と話していた。リゼルにも友達はいるみたいだ。良かった。


学園での姿も見られたし、タスク様と合流したら、屋敷に帰ろう。姿も戻してもらわないと。



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