Gloss
「あれ?カルちゃんって、カメリアとはしたことあるの?」
「俺は一度もないよ。屋敷で会うと、腕に絡みついて、胸を当てながら誘ってくるけど、毎回断ってるし。今後もカメリアの誘いを受けることもないよ」
「あら、意外。いつもなら、遊び慣れてる女の子とすぐにヤるくせに」
グレンがカルロを見ながら、ニヤニヤ笑う。そんなグレンの笑いを受け流し、カルロは言う。
「俺、遊び相手の女の子達と連絡先を交換したこと、一度もないよ。最初からそういう約束で、遊ぶんだから。終わってから、連絡先を教えて欲しいって言われても、一切断ってるし」
「徹底してるね。カメリアの場合、気に入ったら、連絡して来そう。現にうちだとエド、ブラッド、ライ、スミレとは会ってるからね。あ。でも、ライとブラッドの話だと、スミレは三人と比べるとあまり会えてないんだっけ」
「そうみたいだね。スミレの好意には気づいてると思うけど」
「あと上手いやつにしか興味ないとかもありそう。あれだけ遊んでると上手いとか下手なのは、わかるだろうし」
グレンが腕を組みながら頷く。すると、カルロが何かを思い出したかのように話し出す。
「そういえば、うちの兄弟全員を狙ってるみたいだよ。カメリア」
「全員?うちには、まだ小学生の弟達もいるけど」
「小学生コンビは、もう少し成長してからみたい。ハルク辺りまでは狙ってるって」
「ルクまで?とうとう年下まで狙い出したんだ。でもさ、あの子はカメリアじゃダメでしょ?前みたいにアリスの身体だったら、違うけどさ」
「あったね。アリスとカメリアの入れ替わり騒動」
少し前に屋敷で起こった騒動について、二人は思い出していた。
アリスの姿のカメリアとカメリアの姿をしたアリス。普段とは違う彼女達を見て、あんなにも雰囲気は変わるのかと二人は思っていた。
妖艶なアリスと天然なカメリア。あれは、また違った意味で男にはうけることも。
「あの二人、中身は異なるけど、体型は似てるらしいね。ライが確かめようとしたらしいけど、アリスに股間を蹴飛ばされたって」
「あー。カメリアの姿をしたアリスがしたことか。あの娘、必死にライから隠れてたからね」
「カメリアもアリスの姿でリクを誘惑したらしいけど、すぐ見破られたって」
「リクは基本的に女性に触られるのを嫌うから」
「アリスだけは平気なんでしょ?リク」
いつだったか、アリスが倒れた時、リク自らが彼女を抱えていた。それを見た兄弟達は皆、驚いていた。
「そうだね。アリスだけは平気みたい。リク自身も不思議がっていたけど」
「何かアリスって、ちょっと他の娘達と違うよね?」
「違うね。俺達を見ても、ぽーっとならないし。リクにだけは違うけど。真面目だから用事もなければ、近づいても来ないね」
「そうそう。下の弟達に懐かれてるし。マシロもアリスには警戒心ないんだよね」
「タスク、ドラ、フェリもアリスとは普通に話してるな。ハルクに至っては、自分の世話係にしたし」
「ルクは、自分以外の男がアリスの隣にいるだけで、すっごい睨むからね。自分の専属執事のアガットにですら、嫉妬してたからね」
「あそこまで一途なのもすごいよね。タスクもそうだし。俺にはもう…」
カルロが少し遠い目になる。おそらく昔を思い出しているのだろう。初めて好きになった彼女のことを。父親によって、無残にも引き離され、二度と会うことはなくなった。
「そんなのわからないよ?」
「え」
「カルちゃん、俺達はまだ20代だし。人生はまだこれからなんだよ?今は誰も好きになれなくても、ある日、突然に恋に落ちることもあるんだからさ」
「グレン…」
「落ちないで終わることもあるかもしれないけど」
「何だよ、それ。期待させといて…」
「落ちなかったら、俺が傍にいてあげるよ。俺、カルちゃんのお兄ちゃんだからね!」
「………はは、そうならないように頑張らないと」
二人は笑う。
口だけかもしれないが、今の彼には救いでもあった。
【END】