Chocolate Warning Issued
──それは、2月某日の出来事だった。
「しまった……僕とした事が……」
目の前のカカオの山に溜め息が止まらない。
次に注文明細と睨み合う。
「カカオ100%、か……処分に困りますね…………仕方がない。アリスに相談しますか……」
あるある話ではあるが、探している時に限ってその人物がなかなか見付からないもの。
「カルロ兄さん、アリスさんですか?……そういえば、今日はまだ見てませんね」
屋敷中の皆がリクと同じ事を言った。
「……ハルクもいないな。外出中か」
と、なると暫く帰ってこないのは目に見えている。
最近のハルクは下心が芽生え始めたのか、恋の戦略を誰かに教えられたのか……
“外”でなら彼に甘いアガット監視下のもと、アリスといられる時間が多少長いという事に気付いたらしい。
探すのを諦め、部屋へ戻った。
そこで事件は起きていた。
「……ライ、何をしているんですか?」
「へ? 見て分かんねーの? チョコ、食べてんだけど」
それですよ。
それなんですよ、問題なのが。
「それはチョコの原料のカカオですよ。しかも100%の」
「どうりで濃厚だと思った。漲るワケだな!」
「……み、漲る?」
「おれの息子、すげー元気で聖剣レベルなんだよ!」
世界壊滅レベル……
チョコレート、もとい“カカオ”には性欲を増す効果もあるという噂は聞いたことがあった。
我が家とは無縁と思っていたが、よりによって彼にそれがあったとは……
「兎に角、今すぐ食べるのをやめなさ──」
「今すぐ、ヤりてー! どんどんかかってこーい!」
うっわぁ……
最早、全人類の危機的状況じゃないか。
「落ち着くんだ、ライ」
「先ずはカルロに──」
全速力で部屋から出て、ドアを抑える。
「僕の部屋が穢れてしまった……」
今後は外用、内用と鍵を2つ作っておかないと……
いや、そうじゃない。
ライは“カカオ”の過剰摂取で興奮状態にもあるらしい。
ただでさえ屋敷の事で問題は山積みだというのに、最大級のものまでのし掛かるとは……
頭を悩ませるなか、ライがドアに向かって体当たりを始める。
凶悪な性欲モンスターを任せられる人物なんて──
「あれ? カルロさんが部屋を追い出されるなんて珍しいですね」
「いや、相手は女じゃ──」
言い掛けて顔を上げると、そこには未熟だが頼もしい救世主が立っていた。
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