Imitation Work




「はぁ!? オレ以外に振る舞ったのかよ!」
「だって、気になったんだもん! 皆さんもスゴく喜んでくれたし」


その光景、想像できんの何でだ?


「そりゃ、喜ぶだろ……ってか、オレの分は!?」
「あるわけないじゃない。取り合うくらいだったんだから」
「やっぱ、コイツらトドメ──」
「ハルク」
「へ?」


不意に呼ばれた名前にドキッとした。


「来てくれて……ありがとう」
「ん、あぁ……」


笑顔のアリスに心が乱される。
……理性保つの……すげェ、大変なんだって。


「…………アリス」
「…………ハルク──」


見つめ合い、互いに自然と距離が縮まる──
と、その時だった。
──勢いよく、ドアが開いた。


「お坊っちゃま! アリスさん!…………あれ?」


アガットが入ってくる直前、オレはアリスの手を取り窓から外へ出た。


「お坊っちゃま、アガットさんでしたよ。どうして逃げるんですか」
「オレは今、アリスと二人きりになりてェの。それに追手から逃げる王子と姫、いい設定だろ?」
「ええっ!?」


戸惑うアリスにキスをして、屋根の上を渡り歩いていく。

このまま、二人だけの世界に飛び込みてェな──









END.
(2023.11.23)
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