Imitation Work




“アリスさんが家を出て間もなく、何者かに連れ去られたのを屋敷のものが偶然見たそうです──”

くそッ……油断した──!
“前例”が無かっただけ、大切なモノが物とは限らねェだろ!


「くそ……くそ…………くそくそくそ──ッ!」


外に飛び出し、二つ目の角を曲がった時だった──


「……なッ!」


前後から黒ずくめの野郎共に囲まれ両手を拘束され、目隠しされ……車に乗せられた。
最初こそ抵抗したが、好都合と抵抗をやめた。

ロープや手錠やらされると思いきや、片手ずつ素手で拘束されているだけだった。

……力に自信があるってことかよ。

暫くして車が止まり、下ろされ……目隠しを外された。
そこは倉庫……と思われる場所だった。


「おい、どういうつもりだ? ここでアイツを人質に凹ろうってか?」


そいつらは黙ったまま何も答えない。


「不安を抱えるとよく喋る、単純だな」


その声はオレの後ろから聞こえた。


「テメェは……!」


いつぞやのナンパ野郎じゃねェか!
それなりに金持ちだった筈だが……親が倒産でもしたのか……?

そいつは、あろうことかアリスに跨がり──


「や、やめろ!」
「てめぇは黙って見てろ!」


そう言って、奴は自らの服を勢いよく──


「いやぁぁああああ……っ!!」


奴のボタンが勢いよく飛び散ると同時にアリスの悲鳴が響き渡る──

目の前で好きな女がヤられる──!
……ッ…………こんな屈辱的なことがあってたまるか──ッ

…………………………しかし、いくら待ってもこの先に進まない。


「……はぁ。遂に殻を破ったぜ……しかも憎きドルチェ家相手に、な」
「………………は?」
「ついにやりましたね! 童貞卒業もおめでとうございます」


状況が全く分からない中、拍手喝采。

ふと、ピンと来た。


「……見せるの専門か! この変態がッ!」


拍手で両手が解放されたついでに雑魚共を殴り倒す。
力は強いものの、隙だらけじゃねェかよ。


「おい、雑魚のボス」


そう言って、一撃でナンパ野郎を仕留める。

本当はもっとボコボコにしてやりてェけど……
さっきの光景が哀れすぎて、そんな気にはなれなかった。


「……ガキだった頃のオレでも知ってたってのに……」


そう呟いて、アリスを抱き抱える。


「……あの様子じゃ、変なこともされなかったんだろ?」
「それが……えっと……」
「は?! まさか何かされたのか?」
「実は──」



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