Nampa





翌日。
周りを警戒しながら、息子達がいないかを確認。邪魔されたらかなわんし。よし。いない。
それからアリスに声をかけた。すると、彼女は、俺に優しかった。



「ゾウゲくん、大丈夫?」

「大丈夫。心配してくれるんだね。ありがとう」


俺の心配をしてくれた。これはイケる。よし。邪魔者がいない今がチャンス!



「あのさ、アリス。昨日の話なんだけど…」

「あれ?アリス。そこで何してるの」


振り返ると、ここの息子達が現れた。しかも、長男と次男コンビだ。並ぶとやっぱイケメンだわ、こいつら。



「リク様、カルロ様」

「アリスさん、こんにちは」

「…こ、こんにちは!」


てか、アリスの顔、赤くない?長男のファンじゃなかったよな??じゃあ、もしかして…。



「アリスさん、今時間ありますか?これから庭の花に水やりをやりたいんですけど、一緒に手伝ってもらえませんか?」

「はい!!」


アリスはそう返事すると次男と行ってしまった。え、待って。アリスって、次男のファンなの?嘘だろ。
そこに残されたのは、俺と長男。



「君も懲りないねー。ハルクに蹴飛ばされたにも関わらず、アリスに近づくなんて」

「いや、近づくなんて、そんな…」

「それにアリスは筋金入りのリク派だから、君が誘っても行かなかったと思うよ?」


だろうな。
あの顔を見れば、すぐにわかった。あれは俺がいくら誘っても来ない。次、また探そう。



「あ、そうそう。そんな君に紹介したい人がいるんだよね」

「え…」


紹介!?こいつのことだから、きっと可愛い女の子だよな。絶対にそうだ。



「会いたい?」

「是非!お願いします!!」

「じゃあ、俺の後についてきてくれる?」

「はい!!」


早速、長男の後をついていく。
すると、本邸の方に入る。うわー、こっちは初めて入ったな。俺、こっちの鍵は持ってないし。別館と同じ作りなのに、雰囲気が全然違う。

しばらく歩いていると、ある部屋の前に立ち止まった。すると、先を歩いていた長男が振り返る。



「先にこの部屋で待っていてくれるかな?呼んで来るから」

「わかりました!」


俺は言われたままにその部屋に入った。中は客室のようだ。まるで高級ホテル並の部屋だったけど。
俺はベッドの上に座って、相手が来るのを待つ。
それよりどんな女の子が来るんだろう。楽しみ!その後のことを考えて、ニヤニヤが止まらない。



ガチャ。
そこへ部屋のドアが開いて、俺は顔を上げた。どんな女の子かな!?





「……」

「……」


おい、男が来たぞ。てか、こいつは三男だよな?早く出てけよ。女の子が俺に会いに来るんだから!



「んー。そこまで好みってわけじゃねーけど、これでもいっか」

「あの、何か…」


突然、俺の視界が反転し、三男が俺の上に覆い被さっていた。俺、押し倒されてる?何で!?



「お前だろ?アリスに声かけたヤツって。カルロ達が相手を探して淋しがってるだろうから、お前の相手してあげてってさ」

「はあ?」


長男が言ってた相手って、まさかこいつのことじゃないよな!?な?



「あの、カルロ様が言ってた紹介したい人って…」

「お・れ」


マジかよ。女の子じゃなかったのかよ!?あいつに騙された!!三男から逃れようと必死に暴れるが、全然ビクともしない。こいつ、力が強すぎる!



「お前さ、男相手は初めてなんだろ?ラッキー。久しぶりに男の初めてを奪えんだ。カルロ達に感謝しなきゃ…」

「ひっ…!」


妖しく微笑む三男に俺は、寒気がした。まずい。これは貞操の危機だ!逃げねば。



「離せ!俺の上からどけよ!」

「は?」

「どけよ!変態野郎!!」

「…………ちっ。あんまごちゃごちゃ言ってると、優しくしてやんねーぞ?それとも何。痛いのが好みなわけ?」


さっきまで笑っていたのが、一瞬にして冷たい表情に変わり、怖くなった。これは逆らったらやばい。命、大事。



「優シクシテクダサイ…」

「よしよーし。なら、可愛いがってやるよ。お前の名前は?」

「ゾ、ゾウゲと言イマス…」

「ゾウゲ。お前の世界、変えてやるよ」





その言葉通りに俺の世界は、変わってしまった。もう女の子じゃ満足出来なくなった。


あの後、俺はドルチェ家を辞めた。別の場所ですぐ働けるように推薦状はもらったが、きっと俺は普通のところでは働けない。でも、問題はない。

気づかせてくれてありがとう、ライ様!





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