Imitation Work




「お帰りなさい、お坊ちゃま──」
「アリス」


オレはアリスの手を引き、部屋に入る。
そして……彼女を背中から抱き締めた。


「ちょ、お坊っちゃま! こういうのは──」
「良いだろ、二人きりなんだから」


すると、アリスはオレの手を振り払って言った。


「ダメです! いくらその……恋人だからって……お父様の公認というワケではないですし」
「公認とか、どうでもいい……」


どんだけ我慢してたと思ってんだよ。
付き合う前に比べりゃ、全然マシだけどさ……


「良くないんです!……ましてや、皆さんだって知らな──」
「うるせぇっての!」


アリスをベッドに押し倒し、唇を塞ぐ──

だから……ッ
そういうの……ねェんだって……ッ……

指を絡め、角度を変えながら幾度とキスを落とす。

──ずっと、我慢してた。
この関係だって、いつまで続くか分かんねェ……
一年先?
二年先……?
もっと続く?
いや……突然明……日、終わりを告げるかもしんねェ……


「お坊っちゃま!」


アリスに胸を押され、我に返る。


「アリス……前も言ったよな? “オレも男”だって」


アリスに覆い被さり、再び唇を奪う。
今度は片手で指を絡め、片手で服の上から身体のラインをなぞる。

付き合って──日……
限られた期間限定の恋人関係。
こうしてコイツを抱くことも、ましてや抱き締めること……
二人だけでいること……
──誰にもバレるワケにはいかねェんだよ。
それは……お前が思ってる以上に、な……


「……オレだって……男なんだ。好きな女、目の前にして“待て”なんか出来ねェんだよ!」


そう言って、オレはアリスを抱いた──

もう何度目か……そんなの数えらんねェし、数えてもいねェけど。
ずっと待ち望んでいた関係……
“初めて”は、今でも鮮明に覚えてる──



.
3/8ページ
スキ