Imitation Work
「お坊っちゃま。時間ですよ!」
「おう……」
いつもと何ら変わらない。
アリスに見送られて、アガットの車に乗り込む。
もう……何年だ?
けど、今までと違う。
──アリスは頬を赤らめながら、小さく手を振っている。
おい、バレバレなんだよ。
……バーカ……
…………っ…………可愛すぎんだって……ッ
…………はぁ。
オレもアリスのこと言えねェな……
「……アガット、もう少し急げるか?」
「え? あ、はい……けど、お坊っちゃま。時間に大分、余裕が──」
「うるせェな……向こうで色々と準備あるんだよ」
──準備? そんなのねェよ……
ただ、このまま此処にいたらヤバいんだよ──
「分かりました。ところで──」
アガットの話に適当に相槌を打ちながら、車内の時間を過ごす──
頭の中はアイツの事ばかり。
それも昔から変わらねェ……
けど、今は……
──“別世界”みたいだな、本当に……
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