Nightmare Ranger
「……目覚めなければ、私もその他全員に入るところだったわ……」
ベッドから出て、顔を洗い着替えて髪を整えている時だった。
「なぁ、スマルト。見てみてみて~」
窓の外から声が聞こえてきた。
「…………この声は……」
変態か。
本人を前にしては絶対に口にしないけど、ね。
……彼、関わるとろくな事がないのよね。
無視が一番ね。
「オーキッドがおれの為に用意してくれたんだぜ!」
変態がひょっこり窓から顔を覗かせる。
瞬間、全身から血の気が引いた。
「うさムー……」
彼の格好はアリスの好きなパープルうさを連想させるものだった。
「これは悪い夢よ……忘れなさい、スマルト……」
自分に言い聞かせて、言い聞かせて……心を落ち着かせる。
「な、こっちとどっちがいい?」
変態は何やら着替えはじめたみたい。
……よし、今ならさっき見たものを忘れられ──
「猫バージョン」
……嫌な予感しかしないわ……
変態の頭上の猫耳らしきモノが見えた時だった。
「おい、こんな所で何をしている?」
「うぉぉおおおい!! びーっくりしたぁ!!」
変態のド派手な驚きッぷりの方に私がビックリしたじゃないの。
でも、待って……?
この声──
「大丈夫か、スマルト」
「き、きゃぁぁぁああああ──!!」
最初に言っておくわ。
これは完全に黄色い悲鳴……
ただ、想定外な事があっただけ。
「ん? 顔が真っ赤だぞ! しっかりしろ、スマルト!」
酷く驚いた変態の頭から猫耳フードが飛び、うまい具合にボルドーの頭に被さった。
本人は悲鳴をあげ、倒れたスマルトに驚き気付いていないようだ。
「めーめー……だ……わ……」
「ん? めーめー?」
トドメが胸に刺さってしまった。
私は幸福死するわ……
──その後、スマルトは3日程目覚めなかった。
しかし、誰一人と心配する者はいなかった。
何故なら──
「なんかスマルト、すっごく幸せそうに眠ってる。起こすの悪いよね」
「まあ、お腹空いたら起きるだろう……きっと俺の夢を見ているんだろう」
「アンバーさんってば、本当にスマルトのこと好きですね」
END.
(2023.10.04)