Conveyor Belt Sushi 中
それから無事屋敷に到着し、私達はアンバーさんと別れると、そのままお風呂へ直行した…。
お坊っちゃまは、待ってはいなかった。それはそうだ。今日は、月に一度の本邸の屋敷のロックがかかってしまう日だからだ。そういえば、執事の方々が何人かいなかったはず。だからか…!
翌日。
今日は珍しく遅番だ。昨日は早番だったけど。私、基本的には早遅番じゃないんだよね。ほとんどが朝から晩までのフルだよ!お坊っちゃまのせいで。その分、手当が厚いからいいんだけど。
「おはようございます!」
「……………おはよう」
入るなり、お坊っちゃまがドアの前に立っていた。仁王立ちで。
「お坊っちゃま?」
「昨日のこと、説明しろよ!」
「えー。もういいじゃないですか…」
「説明!しないなら、リク兄に色々バラすからな。お前のドジの数々を。特にひどかったのを!」
「止めてくださいよ!リク様に私の恥を晒さないでください!」
「昨日の話をちゃんとすれば、リク兄には黙ってやる」
仕方なく、私は話すことになった。だって、リク様に幻滅されたくないし。
私は、昔から家族と一緒に何度か行ったことはあったけれど、皆と話してる時に回転すしの話になり、「最近行ってない」→「じゃあ、行こう」となった。だが、決めたはいいが、タイミングが合わず、なかなか行けなくて、昨日ようやく回転すしに行けたのだ。
回転すしのことを知らないお坊っちゃまに説明をした。すると、お坊っちゃまの目は輝き出す。まずい。これは興味を持っちゃった…!
「オレも回転すしに行きたい!」
「ダメですよ!お坊っちゃまは…」
「何でだよ!誰でも行けるんだろ?」
「お坊っちゃまの口には合わないです」
「食べなきゃわかんねェじゃん!」
「お坊っちゃまは行かなくても、ここで既に一流の料理を食べてるんですから!」
「食べたいもんは食べてェんだよ!」
こうなると、利かないんだよね…。よし、こうなったら───
「それならご兄弟の二人以上が行きたいと言うなら、回転すしに行きましょう」
「わかった。オレを除いて、最低でも二人行きたいヤツを連れてくればいいんだよな。行ってくる!」
そう言い、お坊っちゃまは部屋を出ていく。
他の兄弟が行くわけないわ。リク様だって、興味ないはずだし。
今まで黙って、私達のやりとりを見ていたアガットさんが聞いてきた。
「アリスさん、いいんですか?」
「何がですか?」
「回転すしの件です。お坊っちゃまが興味を持つなら、他の兄弟の方々も興味を持ちますよ」
「……」
そう言われると、自信なくなってきた。確かにタスク様なら、興味を持ちそうなのよね。お坊っちゃまとは実の兄弟だし。
でも、興味を持たない兄弟の方が多いはずよ!そう自分に言い聞かせた。
ちょっとして、お坊っちゃまは戻って来た。え、早くない!?
「アリス!全員に聞いて来たぞ。そしたら、ブラッド、スミレ、マシロ以外のヤツらは行くって」
「ええっ!?」
「スミレだけは行かないって言ってたな。でも、ブラッドとマシロは用事で行けねェけど、行きたがってたぜ!」
スミレ様以外、行きたがってた?行かない人数を抜いても、9人いるじゃない!何で!?
「大人数ですし、私は行かなくてもいいで…」
「お前が来ないでどうすんだよ!」
だって、目立つ!この兄弟と来たら、目立つじゃないの!
「リク兄、来るぞ?いいのか?」
「……………うっ」
リク様が来るなら、行きたいわ!あわよくば、同じ席で一緒に食べたい…。だって、こんな時でもなきゃ一緒の席に座れないし。
……ん?ちょっと待って。女子、私だけ!?嫌だよ!これがバレたら、親衛隊に更に睨まれる。せめてスマルトかベゴニアを一緒に来てもらわないと。あ、ベゴニアは今、別仕事を請け負ってるから難しいんだ。というか、食べることならスマルトだわ。スマルトなら…!
「行きます!ですが、お坊っちゃま。せめて、私の仲間を一人だけでも同行させてください!スマルト。彼女が来ないなら、私は行きませんからね」
「わかった。ソイツもいるなら、来るんだろ?それでいい」
お坊っちゃまの許可はもらったぞ!
早速、夜にスマルトに聞いてみたら、あっさりと了承。「今度、新作が出るのよ。大歓迎だわ!」と。そうだった。スマルトはそういう子だったね。「車で行くなら、兄さんも必要ね」とスマルトの言い分により、アンバーさんも強制参加である。アガットさんも行くしね。
他の兄弟の専属執事の方々は、クロッカスさんやルチルさんは行き帰りの運転はするけれど、お店に行かないそうだ。
回転すしに行くのは、一週間後。意外にも早く決まった。何で!?私達が日にち合わせるよりも早かったよ!
【to be continued】