Conveyor Belt Sushi 中
食事を終えて、店を出る。何と今回、アンバーさんが奢ってくれたのです。私や他の皆はアンバーさんにお礼を伝えた。
すると、スマルトが───
「いいのよ。皆、兄さんは私達よりも稼いでいるんだから。桁が違うの。だから、これからもたかってあげて」
「ちょっ…スマルト!?」
「いいんですか~」
「そういうことでしたら、バンバンお願いしちゃいますよ」
後輩二人───ライラとミントは容赦がない。本気でたかろうとしてるよ。真面目なスカーレットはそんな二人に呆れていた。
「スマルトの言う通り、確かに専属執事って、普通の執事と比べて、大分給料が違うのよね」
「ベゴニア!俺よりもお前の兄貴の方が更に桁が違うからな!」
「お兄ちゃんは、ご当主に仕えてるからね」
「ベゴニア先輩のお兄さん??」
後輩三人が首を傾げる。あれ。知らないのかな?
「知らない?ご当主の側近兼秘書のノワールさん」
「え!?」
「あの無表情のイケメンの方ですか!?」
「ノワールさん、クールですよね~」
「たまにブランさんとの会話中にふと見せるあの微笑がいいんですよ!」
「あまり笑わない人が笑うと、結構きますよね」
皆、知ってたんだ。
私、ノワールさん達のこと、最近になってから知ったのに…。しかも、ベゴニアのお兄さんってことも。アンバーさんがスマルトのお兄さんってことも一年経ってからだし。
「あんた、リク様しか見えてないからね」
「確かに。他の人には興味がない…かも」
「かもじゃないでしょ?リク様しか見てないわよ!あんたは」
「アリスは本当に真っ直ぐよね。だから、ハルク様も…」
「お坊っちゃま??」
「ふふ。何でもないわ」
駐車場に着いて、車に乗り込むと、ライラが隣に座って、ある物を見せてきた。
「アリス先輩!私、イエローちゃんをゲット出来ましたよー!」
「私もパープルくんゲットしたよ!」
お互いの推しのキーホルダーを見せ合うと、無言で握手を交わした。
「まったく何をやっているんだか。あの二人は…」
「はい。私もああいう時の二人にはついていけません…」
ベゴニアとスカーレットが何か言っているが、私とライラには聞こえていない。うさレントークに花を咲かせていた。
「スマルト先輩も欲しいの当たりましたか~?」
「ええ。めーめーが来たわ!」
「先輩も悪の猫族派なんですね~!私も一匹狼のふーふーが好きなんです~」
「あら、そうなの?猫族いいわよね!」
「はい~。最高です~!」
スマルトとミントも悪役の猫族のキーホルダーを見せ合っていた。
行きと違い、帰りはそれぞれが後輩と話していた。
「でもさ、他にも何個か当たったけど、余っちゃったんだよね。珍しくかぶったりはなかったけど」
「こっちは、何個かかぶりました。シークレットは二つは出ましたが、超シークレットの方はまったく出なかったです」
「そういえば、3つくらいわからないのあったな…。あれ、シークレットだったのかな?」
「え、見せてください!」
そう言われて、その3つを見せると、ライラが叫ぶ。
「アリス先輩、これ超レアですよ!第一シリーズの第58話でピンクちゃんを助けて、代わりに死んでしまったオーロラ先輩です」
「え!?オーロラ先輩!あの男らしく散ってしまった…」
「更にこっちは、レインボーくんですよ!第一シリーズの最終回間際で、うさレン達が全滅しかけた時に現れた救世主的存在の!」
「レインボーくん!?噂ではパープルくんのお兄ちゃんだと言われてる…」
「これもです!第二シリーズの中盤である理由から悪の猫族にいることが耐えられなくなり、命からがらに逃げ出し、うさ丸レンジャーのレッドに助けられたそーそー!!どれも超レア中のレアじゃないですか!!何で全然覚えてないんですか!」
「だってさ、あんなに話数あると、覚えてられないし。第四シリーズまであるじゃない?」
「パープルくんメインの回は、全部覚えてるじゃないですか!」
「それは推しだもん!当然だよ!常にクールで、表情を変えないのに、病弱な妹のリラちゃんの前で優しく笑うんだよ!あんなの見たら、推すに決まってる!」
「それなら私も負けないですよ!イエローちゃんだって、いつもは明るいムードメーカーなのに、時折寂しい顔を見せるんですから!あれはきっと過去に暗い影の出来事から…」
ライラと言い合っていると、後ろからベゴニアに頭をチョップされた。しかも、「やかましいわよ!もう少し静かにしなさい」と怒られた。何で私だけなの!?解せぬ!
「そうえば、セージさんも誰か推しがいたよね?私、セージさんにうさレンを布教されたから」
「私もです。明日辺りにセージさんに聞いてみましょう!」
「そうだね。ねぇ、セージさんにこれら見せたら、どうなるかね?」
「セージさんだと、真顔で「キタコレ」って言いますよ。その後は早口で、「どうやって手に入れた?てか、どんな徳を積んだ?俺ですらこんな神引きしたことないし…」とか言ってきますね」
「奇遇だね。私もそう思ってた…」
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