Cute Grandmother
「ライちゃーん!」
ん?この声は…。振り返ろうとした瞬間に何かがおれにぶつかった。一瞬、どこのガキがぶつかって来たのかと思ったら、ジルだった。
「…ジルじゃん。相変わらずちっせぇな!」
「ライちゃんが大きくなったのよ!」
てか、ジルがちっせぇんだよな。おれがガキの頃から、全然変わんないし。
だって、これでもう還暦いってんだろ?見えねーよな。下手すると、ドラやフェリよりも下に見える。
「む。ライちゃん、今失礼なこと考えなかった?」
「ジル、還暦を過ぎたんだよな……痛っ!」
「やっぱり失礼なことを考えてるじゃないの!」
むーっとした顔でおれを見上げるジル。おれ、ガキには興味ねーけど、これならアリかもな。流石に自分のばあちゃんには手は出さねーけど。ばあちゃんと言ったら、ジルが怒るから口に出さねーようにしねーと。
「てか、最近じいちゃんも屋敷によく来るよな?使用人の女どもがよく騒いでるぜ」
「ふふふ。そりゃ、コルちゃんは世界一カッコイイもの!」
かっこいい?
おれからしたら、歳を取ったカルロにしか見えねーんだけど。じいちゃんも年齢に比べると、すげー若いからな。
「ジルは本当にじいちゃんが好きだよな。飽きねーわけ?」
「飽きないわ!飽きるわけないじゃないの!!ワタシの愛する旦那様なんだから」
「えー…」
おれ、一人だけとか無理。てか、一人で満足出来ねーし。色んなヤツとヤりてーわ。うちの兄弟のほとんどには、理解されねーけど。わかってくれんのは、エドとスミレくらいだな。
カルロだって、一時期は色んな女と毎日ヤッてたのにさ。あ、今もたまにあるか。でも、屋敷には絶対に連れて来ねーんだよな。
「ライちゃんだって、今は考えられなくても、そのうち現れるわよ。ライちゃんの意識を変えてくれる娘が」
「そんな日は来ないし」
「まだ出会えてないだけなのよ」
こういう時はジルも大人なんだって思うんだよな。普段がガキ過ぎんだけど。
「じいちゃんも未だにジル以外ともヤッてんじゃん!」
「いいのよ。それを含めて、わたしはコルちゃんを愛してるの!」
「えー。マジ?すげーな、ジル」
全然、理解出来ねーよ。
しばし話してから、ジルと別れ、部屋に戻って来ると、何故かカメリアが待っていた。
「カメリア…?」
「遅かったわね、ライ」
相変わらず自分の身体を自慢するかのように露出した服を着てる。カメリアは、美人でスタイル抜群だから、余計に目を引くんだよな。芸能界に入らないかみてーなスカウトとかも、何度かされたことあるみてーだけど、興味ないって断ってたな。
「今日、約束してたっけ?」
「してないわ。今日、遊んだ子があまりにもひどかったから。ライに上書きしてもらおうと思って」
カメリアが抱きつき、おれの首に腕を回してくる。こういう風におれを誘う時は、余程、相手が下手くそだったんだろう。カメリア、結構な人数とヤッてるから。童貞は仕方ねーとしても、あまりにテクもねーと、途中でも止めて帰るからな。
「ライ。いいわよね?」
「いいぜ。でも、その前にオーキッドにしばらく部屋に来んなって連絡しとくわ」
ポケットからスマホを取り出す。あいつ、カメリアとは犬猿の仲だからな。連絡しとかねーと、後がうるせーし。
「あら。前みたく見せつけてあげてもいいわよ?」
「勘弁して。あの後、すげー大変だったんだぜ?あいつ、暴れまくってさー」
「あら、そうなの?」
カメリアは楽しそうに笑うが、こっちは全然楽しくねーし。…っと、よし。オーキッドには送ったから、しばらくは部屋に来ないはずだ。おれはスマホを投げ捨てて、カメリアを抱き寄せて、楽しむことにした。
カメリアとの行為中に、ふとジルの言葉が浮かんだ。
“ライちゃんだって、今は考えられなくても、そのうち現れるわよ。ライちゃんの意識を変えてくれる娘が”
ジルはそう言っていたが、おれに現れるとは思わない。だって、おれもカメリアだけじゃなく、色んな女ともヤッてるし。たまに男ともヤるけど、それもずっと同じやつだけでは満足出来ねーよ。
「ライ。どうかした?」
「ちょっと、な…」
おれの下にいるカメリアがしばし見つめてから、言った。
「私じゃ満足出来ない?」
「そうじゃねーよ。ただ…」
「ただ?」
「……いや、やっぱ何でもねー」
それ以上、何も考えたくなくて、おれはカメリアにキスをして、行為を再開する。しばらくの間、考えることが出来ないくらい快楽に溺れた。
たった一人を愛することが理解出来ない。この時のおれは、そう思っていた───。
【END】