Alice in the Land of Maids
タスクがメイド喫茶の調理の仕事を始めたと、聞いたので早速、はあくんと一緒にそのお店に来てみた。
「お帰りなさいませ。ご主人様、お嬢様」
ドアを開けると、メイド服を着た女の子が笑顔で私達を見ながら、そう言った。
席に案内されると、「メニューが決まったら、呼び鈴を鳴らしてください」と言って、メイドの女の子は去っていく。
店内は人気なのか、席はほとんど埋まっていた。メイド服を着た女の子達があちこちのテーブルにいて、お客さんとやりとりをしている。私は入ってから、あることが気になっていた。
「はあくん。ここの女の子達のスカート、短くないかしら?」
「メイドカフェだからじゃね?てか、メニューもすげーな…」
はあくんと一緒にメニューを見る。普通のフードもあるが、一部メイドさんに文字を書いてもらえたり、おまじないをしてもらえたり出来るらしい。丁度近くでやってもらってる人がいたから、見てみた。
「それでは、このオムライスが更においしくなるように、私の愛を込めますね。おいしくなーれ。おいしくなーれ!」
「シトラスちゃん!」
「私のオムライス(愛)、食べてくださいね?」
「もちろんだよー!」
その男性は目の前のオムライスを勢い良く食べ始めた。メイドの女の子は作っていない。ただケチャップで文字を書いただけ。それなのに…。
すごいわね!メイドカフェ。
「……何だ、ありゃ…」
「メニュー限定でやってもらえるみたいね。しかも、メイドさんを選べるのね」
「リコリス。お前、指名すんのかよ?」
「気に入った子がいればしたいわ」
私の理想とする女の子は、しゃしゃり出てくる子よりは、ちょっと控えめな子がいいわね。キャピキャピした子も遠慮したい。明るい子よりちょっとおとなしい子の方がいい。それで優しくて、笑顔が可愛い子。
でも、私の理想の女の子は、ここにはいないわよね。そんな簡単にいるわけないし。
そこへさっきのメイドの女の子とは、別の子がテーブルに来た。
「失礼します。お水をお持ちしました」
「!?」
……いたー!
私の理想とする女の子が目の前にいるΣ(゚Д゚)
髪が長いから、ツインテールにしているけど、似合っている!この子となら一緒に写真を撮りたいわ(≧▽≦)スカートが少し短いのがけしからんけど!そんな短いと狙われちゃうわよ。
その子はテーブルに水が入ったコップを二つ置く。
思わずその子を見ていたら、その子が私の視線に気づいたのか、私を見る。
「ご注文、お決まりですか?」
「え……あの」
「沢山ありますから、迷ってしまいますよね。でも、ここの料理はどれもおいしいですよ」
「……天使」
思わずそう口にしてしまった。だって、控えめながら笑った顔が可愛いかったから。
私の理想が目の前にいるのよ!興奮しないわけないわ!ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ
「あなたを指名することは、出来るのかしら?」
「え?」
しまった。つい言ってしまったわ。
向かい側にいるはあくんが呆れた顔で見ている。
「出来ますけど。私よりも他の子の方が…」
「あなたがいいの!」
そう伝えたら、一瞬、キョトンとしていたが、笑みを浮かべた。
「わかりました。ご指名ありがとうございます。私は“アリス”と申します」
「アリスちゃん…」
何て可愛いの(*≧з≦)しかも、エプロンのポケットから名刺を出してくれたの!その名刺も可愛らしいの!白いウサギの絵がちょこんと座っているのよ!?
アリスちゃんははあくんにも名刺を渡してた。というか、はあくんもアリスちゃんに興味があるみたいね。いつもなら女の子に声をかけられても「いらない」とか言って返すのに、受け取っていたし…。
そういえば、私とはあくんは好みが似てるんだったわ!
「それではお決まりになりましたら、こちらを鳴らしてください。私が参りますので」
アリスちゃんから渡された呼び鈴。彼女が来てくれるなら、絶対こっちを鳴らさないとね(ФωФ)
「はあくん」
「ん?」
「私、今日からここに通うわ!」
「……………は?マジで」
「当たり前でしょ!私の理想の女の子がいるのよ!通う以外ないわ!それにこれを見て!!」
私ははあくんの後ろにある壁を指差す。
そこには、ここで飲食やお店に通ったりするとポイントがあり、それをポイントに応じて、好きなメイドと写真が撮れたり、ゲームをすることなどが出来るらしい。中には、席で一緒にドリンクを飲んだりすることも出来ることまでも。
「本当だ。てか、これをさっきのメイドにやってもらおうとしてんの?」
「当たり前じゃない!アリスちゃん以外にいないわよ!」
アリスちゃんと写真、何枚でも撮りたい。ゲームも沢山したい。勝った顔や負けた顔を見られるのよ。文字を書いてもらえたり、ドリンクも一緒に飲めるなんて…。何て素晴らしい企画なのかしら( *´艸`)
「リコリス。まだポイントすらねェじゃん」
「ふふっ、甘くみないで。そんなのあっという間に貯まるわ( ̄▽ ̄)」
それからメニューが決まり、早速アリスちゃんから渡された呼び鈴を使った。本当にアリスちゃんが来てくれたの!何度でも鳴らしたかったけど、はあくんに止められちゃった…。
メニューを頼んで待っていたら、「リコリス」と私を呼ぶ声。振り返ると、タスクがいた。
「タスク!」
「来てくれたんだ!リコリス。……てか、何でお前もいんの?ハルク」
「それは…」
タスクって、たまにはあくんにはきつかったりするのよね。仲が悪いわけではないんだけど。
「私が呼んだの。一人だと入りづらかったから」
「そっか。それなら仕方ねェな」
そう言い、タスクは私の隣の席に座った。服は着替えたのか、私服だった。
「タスク。出てきて良かったの?」
「今日はもう上がりなんだ。オレも何か食べるかな」
タスクがメニューを手に取ると、食べたいものは決まったらしい。注文しようとしたから、私はアリスちゃんが来てくれる方を鳴らす。呼び鈴を鳴らすと、アリスちゃんはすぐに来てくれた。すると、タスクを見て、驚いていたけど、話しかけることもなく、注文が終わると、アリスちゃんはまた行ってしまった。寂しい…。話したい!こうなったら、通いつめて、アリスちゃんと仲良くならなくちゃね。
でも、ここに来なかったら、アリスちゃんと出会えなかったんだし。タスクに感謝しないとね。
「タスク。ありがとう。あなたのお陰で私は素敵な出会いが出来たわ」
「ん?素敵な出会い??」
「さっき来てくれたメイドのアリスちゃん。私、彼女を推すことにしたの!」
「アリスを?」
「ええ!だから、ここに通うわ!」
「……リコリスが通うなら、オレも嬉しい!」
タスクも喜んでくれた。良かったわ。
それから毎日このメイドカフェに来た。
そしたら、アリスちゃんがいない日もあって、次の日に聞いてみた。例外もあるが、基本的に火曜、土曜がおやすみだと。ちゃんとチェックしないとねφ(..)
「いらっしゃいませ。リコリスさん、本日も来てくださって、ありがとうございます」
「ここに来れば、アリスちゃんと会えるんだもの!こっちからもお礼を言いたいわ!」
「ふふっ。リコリスさん、優しいですね」
アリスちゃんの笑顔キタ━(゚∀゚)━!
毎回思うけど、本当にタイプだわ。この笑顔が見られるなら、私、死んでもいい!……Σ(゚Д゚;)だめよ。まだまだ死ねないわ。
こうして、一人で行くこともあるが、たまにはあくんも一緒に来てくれた。はあくんも口には出さないが、アリスちゃんのことが気に入っているらしい。だって、メイドカフェに行くタイプじゃないのよ!
毎日通っていたら、顔を覚えられて、他のメイドの女の子達とも仲良くもなった。そしたら、その子達にこっそりと教えてもらったんだけど、はあくんが私と時間をずらして、一人でもここに来てることを。その度にアリスちゃんを指名してるらしく、メイドさんにやってもらえるサービスもアリスちゃんにお願いしているそうで…。
聞いてないわよ!はあくん((ヾ(≧皿≦メ)ノ))
今日ははあくんと一緒にメイドカフェに来ていた。席に案内され、メニューを見ているはあくんに私は言った。
「はあくん、毎日ここに来ているでしょう?」
「……っ!な、何でそれを知って…」
「別のメイドの子に聞いたのよ。アリスちゃんを指名していることもね」
私がはあくんに詰め寄る。
メイドの女の子だけじゃなく、タスクにも聞いていたんだけどね。
「ハルクもリコリスが帰った後に来てんだ。アイツさ、フードかぶって目立たないようにしてるけど、めっちゃ目立ってんだよな!黒着てるから余計に」
「そうなの?」
「そう。アイツ、他のメイドからも声をかけられてんだけど、アリス以外は断ってんだよ」
「え!?アリスちゃん、大丈夫なの!?」
「その辺は大丈夫。うち、メイド同士は仲良いから」
それを聞いて、安心したわ。だって、意地悪する人とかいるから。
「はあくん、今どれだけポイント、貯まっているの?」
「……これくらいだな」
見せてくれたカードは、8割ほど埋まっていた。私よりも埋まっているわ!
「はあくん、抜け駆けしないで!」
「してねェよ!」
「してるわ。これからはここに来る時は私と一緒に来ましょう!」
「……………勘弁しろよ」
はあくんと話していると、ふと私の耳にアリスちゃんの声が聞こえた。振り返って、店内を見渡す。アリスちゃんはどこ!?(`Д´≡`Д´)??
「いえ、そんなことないです!私なんてまだまだで…」
「アリスさん、上達してますよ」
「そう言ってもらえると、嬉しいです…」
とある席の前にアリスちゃんはいた。
その席には、二人の若い男性がいて、その一人の黒髪で眼鏡をかけた人と話していた。何だかアリスちゃん、顔が赤くないかしら?
「え、誰あの人…」
「知らねェの?たまに来るんだよ。アイツ」
「え、そうなの?見たことないわよ」
「アリスのヤツ、アイツが好きらしくて、来てる間はずっとソワソワしてるぞ。名前はリクって言ってたな」
好き!?
嫌だわ。アリスちゃんは取られたくない!
こうなったら、アリスちゃんに私を見てもらえるように頑張らなくちゃ!!
リクさん。
あなたにアリスちゃんは渡さないわよ!(o・`Д´・o)!!
【END】