Cultural Festival2
列が待機してあるドアとは、反対側のドアからタスク様は中にいるお坊っちゃまに声をかける。
「ハルクー!お兄ちゃんが来てやったぞー!」
「げ、来たのかよ。そのまま忘れて来ないでくれた方が良かったのに…」
「お兄ちゃんに向かって、そんな口をきくわけ?よし。ここは全部お前の奢りな!」
「はあ!?何でそうなんだよ!」
「皆、ここはハルクの奢りだから、バンバン頼んでいいよー!」
タスク様が振り返りながら後ろにいる私達に向かってそう言うと、お坊っちゃまが慌て出した。
「てか、4人もいんのかよ!?」
「お坊っちゃま!」
「アガット。来てくれたんだ!」
お坊っちゃまは、手を振るアガットさんに気づいたようだ。少し恥ずかしそうにしていたが、嬉しそう。ちなみに私とメイズを見ても、まったく気づいてないようだ。
「(ハルくん、俺らには気づいてないみたいっす。でも、アリスは声を出さないように)」
「(わかりました)」
すると、お坊っちゃまはキョロキョロとしていた。まるで誰かを探しているような…。
「アガット。アイツ、今日は仕事なの?」
「そうですよ」
「二日共、仕事だって言ってたけど、一日くらい何とかなんなかったのかよ…」
「あれー?やっぱりアリスいねェと寂しいの?」
「寂しくねェよ!またドジってんじゃないかって思っただけ!こないだ、リク兄と話した後に浮かれて、何もないところですっ転んでたから。リク兄と会うと、浮かれて必ずドジってんだよ。アイツ…」
タスク様とメイズが必死に笑いをこらえていた。ちょっと、そこは笑うところじゃないんですけど。アガットさんまで口を手で押さえて、私を見ないようにしてるし。そもそもお坊っちゃま、何でそれを知ってるの!?見てたの?恥ずかしい…。
「それよりハルク、早く席に案内してよー。オレ、もう少ししたら、戻らないといけないんだからさ」
「……ご案内します」
お坊っちゃまに促されて、私達4人は予約席のプレートが置かれていた空席に案内された。来ないでいいと言いながらも席は取ってくれてたんだ。素直じゃないなー。
「はい。メニューはこれだから」
「ちょっと!もう少し丁寧にやれよ!ハルク」
「何で身内相手に笑わなきゃいけねェんだよ」
「お前、身内じゃなくても笑ってねェじゃん」
「……。ともかく決まったら、他の店員を呼んでくれ」
そう言い、お坊っちゃまは仕切りがある方へ入ってしまった。おそらくそこで飲食を準備しているのだろう。
それにしても…。
私は教室内を見渡す。本当に可愛いな。うっとりしてしまう。カフェ内で動き回る子達や飲食してる子達を見て、つい微笑んでしまう。
「アリス、にやついてる」
「そ、んなことは…!」
「いや、あるから。学園内を回ってる間もすげーニヤニヤしてた。ここに入ってから、更にニヤニヤしてる」
「ニヤニヤしてませんよ!ニコニコと言ってください!」
「ターくんの言う通りっす。ニヤニヤしてる」
そんな!ニヤニヤなんて、変態みたいじゃないの!
「まあまあ。俺もアリスさんの気持ちはわかりますから」
「そうですよね!」
「はい」
「それより何を頼むか決まった?注文するよー!」
メイズが近くにいた男の子を呼んで、注文をする。それを何となく見ていたら、その男の子はシンジュくんだった。注文を終えて、シンジュくんが去ろうとした時に彼は私に向かって、にこっと笑った。
え、私とわかった?いやいや、それはないよね。お坊っちゃまはわかってなかったし。
「今注文聞いてたヤツ、見たことあんなーって思ってたら、たまにうちに遊びに来るヤツだよな」
「あー、彼はダイヤモンド家の子っすね。何度か屋敷に来たことあるっすから」
「ええ。お坊っちゃまと仲良くしてくれてます」
「それなら絶対にアリスに気づいてたな。最後にアリスのこと、見てたし」
少しして、お坊っちゃまやコウくんが私達が頼んだものを運んでくれた。すると、アガットさんがお坊っちゃまに「写真を撮らせてください」と頼んで、お坊っちゃまは渋々了承した。意外にアガットさんの頼みは、断らないのよね。
写真を撮るため、席から離れ、タスク様とメイズもそれについてった。私は頼んだアイスミルクティーを飲もうとしていた時、コウくんが私に話しかけてきた。
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