Cultural Festival1
学園内にある専用の駐車場に停めて、中等部へと向かうと、沢山の人で賑わっていた。
「すごいですね…」
「この学園は、行事にかなり力が入っていますからね。…あ、すみません。お願いします」
アガットさんが校門付近にある受付で、職員の人に家族用に渡された文化祭チケットを三枚渡す。職員がそれを受け取り、隣にいる人に生徒名を伝え、ノートパソコンで確認していた。
「3Bタスク・ドルチェ、1Dハルク・ドルチェ……はい。確認、出来ました」
「それでは、こちらをお持ちください」
と、渡されたものは、首から提げるストラップがついた許可証が三つ。見てみると、お坊っちゃまの名前やタスク様の名前が印字されていた。おそらく確認出来た時にプリントアウトしたものだろう。
「学園内では、必ずこれを見えるようにつけてください。なくされますと、再発行は出来ませんので、ご注意ください」
それらを受け取り、私達三人は中等部の敷地内に入った。
「かなり厳重なんですね」
「ここはお金持ちの子息や令嬢が沢山いますからね。私服警備員もいますし」
「え!?」
「当たり前じゃないっすか。誘拐目的に狙われたりもするんだから。前に何件かあったみたいだし。ほとんどが未遂っすけど」
知らなかった。私の通ってたところは、誰でも入れたのに。私立と市立じゃ違うのかもな。
それにしても、中学生は可愛いな。一年生なんて、半年前までは小学生だったし。うちのリンネもお坊っちゃまと同い年だから、学園祭はやるわよね。帰ったら、電話して聞こう。日にちが合うなら、行きたいし。
まずは、三人でタスク様のいるところに向かった。タスク様のクラスは、お化け屋敷をやっているようだ。
だから、教室ではなく、第一体育館に来た。お化け屋敷から出て来たらしい人達を見ると、女の子はほとんどの子達は泣いていた。男の子でさえも、泣いてはいなかったが、「怖すぎる」と話していたし。かなり本格的に作ったのかもしれない。これなら、お坊っちゃまは絶対に来たがらないだろう。
そうこうしていると、体育館前に着く。受付に三人の生徒がいて、そのうちの一人はタスク様だ。
「あ、ターくんいたっす!……ターくん」
「え、今、メイズの口から女の子のような声が聞こえたんですが」
「メイズ、声色を変えられるんですよ。たまに女装して、街でアンバーを驚かせて遊んでますから」
「そうなんですか?」
「はい。アンバーは騙されやすいんです。からかいやすいのもありますが」
スマルトは騙されないのに。兄妹でも全然違うんだな。
うちも姉の私が騙されやすいから、リンネが騙されないのよね。よくリンネに「お姉ちゃんは騙されやす過ぎる」って怒られたわね。
受付にいるメイズと話すタスク様をアガットさんと離れたところから見ていたら、タスク様がこちらにやって来た。
「来てくれたんだね。てか、メイズとアリス。二人共、並ぶとそっくりじゃん。一瞬、わかんなかった」
「タスク様がそう言ったんじゃないですか…」
「軽い気持ちで話したからさ。そこまでそっくりになるとは思わねェじゃん?あ、あともう少しくらい待って。そしたら、休憩だからさ」
「じゃあ、グラウンドの方に行ってるっすよ」
「ついでにオレの分も何か買っといてー」
「わかりました!」
体育館を離れ、グラウンドに行くと、沢山の屋台があった。その屋台は生徒ではなく、大人達がやっていた。おそらく学園側が頼んで、来てもらったのだろう。中にはドルチェグループがやってる飲食店もあったし。
グラウンドには飲食スペースもあったが、買ってから席を探すと皆で座れないからと、メイズが席を取っておくと言ったので、私とアガットさんで何か食べ物を買うことにした。
「何を買いましょうか?」
「メイズやタスク様の分もありますからね。二人は甘いのより辛いもの、しょっぱいものがいいかもしれません」
「そうなんですね。私は甘い物も食べたいです!」
「俺もです。クレープとかありましたし、近いところから回りましょうか」
「はい!」
アガットさんと手分けして、色々な食べ物を買い、人数分を買ってから、メイズが待つ飲食スペースに戻った。二人で探していると、タスク様が私達に気づいて、手を振る。もう来てたんだ。
早速、メイズとタスク様のいるところに向かう。
「お待たせしました」
「オレ、お腹ペコペコ!早く何かちょうだい」
「タスク様、これをどうぞ。メイズはこれでいい?」
「ありがとう。いただきまーす」
「アガくん、流石わかってるっすね。ありがと」
4人で食べ始めた。メイズとタスク様は食べ物を交換して、食べたりしていた。この二人も仲が良いんだな。
私も屋台で買ったものを食べてみた。おいしい!やっぱり屋台はいいな。出来立てをすぐに食べられるし。パクパクと食べ進める。
食べ終えてから、私はタスク様にたずねてみた。
「そういえば、お坊っちゃまのところは、何をやっているんですか?」
「ハルクんところはカフェだよ。アイツ、裏方がやりたかったみたいだけど、ウェイターに強制的にされたらしくて、すげー怒ってた」
「お坊っちゃまが…」
お坊っちゃまが配膳する姿なんて、屋敷では絶対に見られないわよね。
「それは写真におさめないといけませんね!アガットさん」
「はい。俺、カメラを持って来ました!」
「形に残すんですね!私もスマホで撮ります。動画もいいかもしれませんね!」
「ええ。お坊っちゃまの姿を早く見たいですね!」
アガットさんと二人で、お坊っちゃまの姿をどう撮ろうかと盛り上がった。
一方で、タスク様とメイズも話していた。
「アガットとアリスさ、何か子供の成長を喜ぶ夫婦みたいに見えんだけど、気のせい?」
「気のせいじゃないっすよ、ターくん。俺にもそう見えるっす」
「二人、似てるもんな。優しいし、子供好きだし、自分のことに関しては鈍感だし」
「言えてるっす。意外にこういう二人がくっついたりするんすよね」
「そうなったら、ハルクは立ち直れなくなっちまうじゃん」
「今の段階だと、互いに全然意識してないっすから大丈夫っすよ。アガくんもアリスも」
「なら、大丈夫だな!」
それから私達は食べた容器などをゴミ箱に捨ててから、お坊っちゃまの教室へと向かった。
【to be continued…】