Cultural Festival1
今日は、お坊っちゃまとタスク様の通う学園で学園祭が行われています。体育祭同様にチケットがないと、入れないようになってるみたいです。何かあるといけないから、チケット制になってるのよね、きっと。それでも迷惑かける人達はいるけど。
実は数日前にお坊っちゃまから、学園祭に来ないかと誘われました。
「アリス」
「はい。何ですか?」
「明後日から二日間、学園祭があんだけど…」
「そうなんですか。……あ、申し訳ありません。両日共、休みじゃないんですよ」
「え!?一日くらい休みないのかよ!」
「はい。頼まれている仕事がありまして…」
「……そ、そっか。わかった…」
そしたら、物凄く落ち込まれた。その姿があまりにかわいそうで、行きますと言いかけそうになったくらいに…。
理由があって、お坊っちゃまには嘘をついた。
本当は、土日休みだった。いつもなら土日の休みはないんだけど、メイド長からこの二日間は有休を使っていいと言われたからだ。最初は不思議だったけど、お坊っちゃまの学園で学園祭があるからと納得した。
私が嘘をついた理由は、タスク様に言われたから。言われてなかったら、お坊っちゃまの誘いは受けてた。タスク様曰く「アリスが来るってわかったら、ソワソワしっぱなしになるからさ、来ないと言って、来た方が絶対に面白いから」と言ってまして。
私が来るくらいで、お坊っちゃまがそんなに喜ぶのかよくわからないけど。こういう機会がないと、お坊っちゃまの学園での姿は見られないし。
そして、当日。
いつもより30分早く起き、着替えて準備しようとしていたところ、ベゴニアが私の部屋に来て、服をコーディネートされ、メイクまでされた。わけもわからず、言われるままに私はそれを受け入れる。
数十分後。
ベゴニアに鏡を渡され、完成した自分の姿を見て、驚いた。鏡に映っているのは、まるで別人だったから。
「……これ、誰!?」
「あんたよ。あんた以外に誰がいんのよ!」
「だって、私の要素が全然ないから」
「残してたら、意味ないからよ。声を聞けば、あんたがアリスってわかるし」
確かに髪色から全然違う。メイクだって、私がしたことのない感じだし。というか、このメイク、私の手では絶対に出来ないし。
「……そろそろ時間ね。はい、立ち上がる!これが鞄ね」
「これまた派手な感じの鞄だ。ベゴニアの?」
「そうよ。今回それは貸すから使いなさい。忘れ物はない?財布やスマホとか」
「ちょっと待って。……うん、入れたよ。ベゴニア、ありがとう。行ってくるね!」
「行ってらっしゃい。慌てて転ばないようにね!」
私は子供か。しかし、私、たまに何もないところで転ぶことがあるので、それには触れなかった。ベゴニアに礼を言い、手を振る。見送られながら、私は自分の部屋を出て、使用人屋敷を後にする。
学園にはアガットさんとメイズと行くことになっていたから、本邸の玄関口に向かうと、車を停めたアガットさんが既に待っていた。
「アガットさん、おはようございます」
「アリスさん、おはようござ……え!?」
私の姿を見て、驚くアガットさん。そうだった。私、ベゴニアにやってもらって、いつもと違うんだったんだ。
「アリスさん、ですか?」
「はい。朝、起きたら、ベゴニアが部屋にやって来て、色々とやってもらいまして…」
「女の子って、メイクでかなり変わりますね。俺、街でその姿のアリスさんに会っても、絶対気がつけませんよ」
確かに。私もそうかもしれない。
今度、ベゴニアにメイクのやり方を教えてもらおうかな。美容関連は結構詳しいし。前にファッションやメイクの話をしてたら、「あんた、興味なさすぎ」って怒られたし。スマルトも興味なさそうに見えて、私よりは知ってたのよね。私、疎すぎるのかな。
「アガくんも意外に鈍いっすからね!」
「!?」
現れたメイズを見て、私は驚いた。
だって、私と同じ顔をしていたから。服は若干、違うものの色の配色はほぼ同じだ。
「メイズは、毎回違うね…」
「そう?ま、今回はターくんに頼まれて、こういう感じにしたから」
「えっ。メイズ、自分でしたの!?」
「そうっすよ。アリスのメイクはかなりヤバイって、ベゴニアから話は聞いてたんで、あいつに頼んでおいた。やっぱりベゴニアに任せて正解っすね」
私をマジマジと見ながら、メイズが言った。何か鏡を見ているみたいで落ち着かない。
「何か二人で並んでいると、双子みたいだね」
「そうっすか?ま、似せてメイクしたのもあるんじゃないっすか?」
「確かにビックリしたよ!」
「さて、そろそろ学園に行きましょうか!アガくん、運転よろしく!」
「メイズ。格好と声が一致してないよ」
それは私も思う。
その後、屋敷を出発し、お坊っちゃま達の学園に向かった。
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