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アリスがトイレに行くというので、紙袋を渡され、オレはそれを持って、店の外に出た。すると。



「ハルク」

「げっ………ダンビュライト…」


昔からの知り合いでもあり、同じ学園に通うダンビュライトがいた。オレはコイツのことが苦手だ。昔から何を考えてるかわかんねェんだよ。表情が読めねェ。キレイな顔しているから、余計に不気味なんだよ、コイツ。たまに占いめいたことも言って来るし。占い関連は、おじさんに似てるのかもな。血の繋がった親子だし。コイツの兄貴もまたコイツと違って、扱いが難しいけどな。



「珍しいね。学校帰りに寄り道するなんて。しかも、チョコレート店」

「別にいいだろ。オレが寄り道したって」

「チョコレートまで買ってる。よっぽど好きなんだ」

「これはオレのじゃ…」

「知ってるよ。カフェで楽しそうにしてたね。使用人の女と」

「っ!」


見てたのかよ。でも、オレがカフェにいた時はいなかったよな?ダンビュライトは。



「アガットはわかるよ。キミの専属執事だし、アメジスト様に仕えているから。でも、あの女は違うよね。ただの使用人。キミと立場が全然違う。それなのに、馴れ馴れしく接している。庶民の分際で」

「アイツはオレの世話係だからいいんだよ!」

「ただの世話係じゃないでしょ?好きなんでしょ?だから、授業終わると真っ直ぐに帰るくらいに」

「……」


確かにアリスが来てからは、ほとんど授業が終わると帰っていたけど。でも、わざわざコイツに言うのも何かヤダ。言いたくねェ!



「何も言わないってことは、図星だね。あの女の前だと、ハルクは表情が全然違う。やっぱりアメジスト様と血は争えないんだね」

「どういう意味だよ!」

「さあねー。教えない。じゃあねー」


言いたいことだけ言って、アイツはオレが出て来た店に入って行く。誰かと来てるんだろうが、興味はねェ。オレは停めてある車にさっさと乗り込んだ。アリスの買ったチョコレート、もらわないとな!ダンビュライトに絡まれたのは、この紙袋が原因だしな!





一方。店に入った少女は、すぐに出てきて、搬送口近くの場所からハルクの様子を静かに見ていた。



「本当にハルクは面白いなー」

「……ハルク・ドルチェのことか」

「そうだよ。パパ」


彼女の隣には、年齢不詳に見える全身黒い服を着た男が立っていた。そこにいるだけで存在感を放っていた。



「彼は父親に似てるんだろうね。本人は嫌がりそそうだけど」

「嫌がるよ。仲悪いみたいだし」

「……それにしても、一緒にいた娘と執事の彼はそっくりだな」


その男が懐から数枚の写真を出す。一枚目はアリスに似てる少女、二枚目はアガットに似てる少年。どちらもパッと見はそっくりだが、よく見ると髪色や目の色が違っていた。



「パパ、その人達は誰?」

「アメジストが大層気に入っていた者達さ。どちらももう亡くなっているが」

「え!?」


ラピスラズリ・マリーゴールドとコーラル・スノーホワイト。二人は十数年前にそれぞれ命を落としていた。ラピスラズリは、アメジストによって、コーラルはアメジストの妹であるシトリンによって。
直接的に関わっていないが、原因は彼らのせいでもあった。



「おそらく悲劇は、また生まれるだろうな」


謎の男……ジルコン・パネットーネは、そう呟きながら、楽しいことであるかのように笑っていた。





【END】
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