Key
仕事を終え、お坊っちゃまの部屋を出て、本館から出ようとした。しかし、ドアは開かない。
「開かない…うそっ」
まだ23時になってないのに!?何で開かないの!まだ22時過ぎだよ…。だが、いくらドアノブを掴んでも開くことはない。
「あれ?アリス、そこで何してるの」
そこへカルロ様がやって来た。助かった!カルロ様なら、わかるはずよね。
「カルロ様。あの、まだ23時になってないのに、ドアが開かなくて!」
「ああ。ここは月に何度か、自動で22時にロックされちゃう日があるんだよ。だから、今日はもう外に出られないよ」
「まさか、それが今日ってことですか?」
「うん」
……しまった。朝、その話があったのに!すっかり忘れてた!これじゃあ、部屋に帰れない!?どうすればいいの!
「たまにあるんだよ。親父や俺達の執事達が数人抜ける時にこういうことがあるんだ。セキュリティもかねてだろうね」
「そうなんですか。じゃあ、私は明日までここから出られないんですか?」
「そうなるね…。あ、ボルドーならいるけど、聞いてみる?」
絶対に怒られる。前にもお坊っちゃまのことで言われたんだから。
最近、執事長、私に対して厳しいし。このことがバレたら、また怒られる。バレたくない!!
「やめておきます。あの、本館に空いてるお部屋はないですか?一晩だけお借りしたいんですが」
「客室なら空いてるはずだけど、ボルドーにバレたらまずいんじゃないの?」
「じゃあ、私は朝までどこにいれば…」
「俺の部屋に来る?」
「遠慮します!」
カルロ様の部屋にいて、何もないのに誤解されたら嫌だもの。それにリク様に見られて、誤解されたくない!
「速攻で断られちゃった。じゃあ、どこに行くの?ここにいると、そろそろライが来るよ。あいつ、大体がこの時間に風呂入るはずだから。見つかるとやばいんじゃない?」
「…そうでした」
それも困る。昼間やたらしつこかったし。アガットさんに言い寄ってるの見かけるけど、何故か今日に限って、やたら私に言い寄ってきたし。今捕まったら、確実に部屋に連れ込まれてしまう。
それだけは避けたい!
「あ、それともリクの部屋に行く?」
「無理ですよ!リク様と同じ部屋にいたら、緊張するじゃないですか!?二人きりなんですよ!」
「確かに君がロボットみたいな動きになるのは目に見えるかな…」
わかっているなら、聞かないで欲しいんですけど。
「うーん、部屋がだめなら、俺達の書斎に行く?あそこならボルドーも来ないだろうし。本が置いてあるけど、ソファーもあるから寝られなくはないんじゃないかな」
「そこでいいです!泊めてください。あ、その前に布団部屋から毛布だけ取りに行きたいです!」
そうと決まれば、ライ様に見つかる前にカルロ様と書斎へと向かう。その前に毛布だけ本館にもある布団部屋から借りた。カルロ様が持とうかって言ってくれたが、自分のものですから大丈夫ですと断った。
二人で廊下を歩いていたら、お坊っちゃまと遭遇する。
「アリス……とカルロ。何で…」
「玄関がロックされて帰れなくなったんだよ」
「あ、はは…」
「ドジ…」
何も言い返せない。流石に自分のミスだし。
「それでどこで寝んの?まさか、カルロのところ…?」
「違います!書斎で寝ようと思いまして」
「書斎?親父の??」
「違うよ。俺達の方の書斎。俺の部屋に来ればって誘ったのに、速攻で断るんだよ。ひどいよね?」
「嫌ですよ。親衛隊にバレたら、何を言われるかわからないじゃないですか。それに未婚の異性の部屋で寝るのはどうかと…」
「オレの部屋に来ればいいじゃん…」
「いやいや、それも出来ませんから。それじゃあ、お坊っちゃま。おやす…」
「オレも行く!」
何故!?
お部屋に戻ってくださいと何度言っても、お坊っちゃまはきかない。仕方なく連れながら、再び書斎へと向かった。
書斎に案内され、中に入ると、思ったより沢山の本がおさまっていた。私の通っていた小学校の図書室よりも広いんじゃないかな。
「うわあ、本が沢山ありますね!」
「ここはハルクとライ以外のメンバーが本を置いてるんだ。昼間は頻繁に出入りするけど、今日はもう来ないはずだよ」
「確かにお坊っちゃまは本を読むタイプじゃないですよね」
「読まなくはねェよ!読むと眠たくなるだけ」
「ハルクは漫画しか読まないよ」
「…やっぱりそうなんですね」
お坊っちゃまを見ると、バツが悪いのか顔をそむけられた。私は近くのソファーに毛布を置いてから、本棚に近づく。
何となく本棚を眺めていたら、気になる本を見つけて、取り出す。
「あ!これ、読みたかった本です」
「それはリクの本かな」
「そうなんですか?これ読んでもいいですか!?」
「ここにあるくらいだから、読んでもいいと思うよ。借りたかったら、あとでリクには伝えておくから」
「ありがとうございます!」
リク様もこれ、読んでたんだー。嬉しい!
あ!この本は去年映画化した原作本。気になってたんだよね。あー。こっちは私の好きな●●先生の◇◇シリーズの新刊だ。え。もうこんなに出てたの??私、まだ3の途中なのに…。ああ、□■先生の新刊だよ。4年ぶりじゃないかな?あらすじ読んでるだけで読みたくなってきた!
ここは、私にとっての天国だわ。ずっといたいくらい。
「俺達なんて目に入ってないくらいに夢中だね」
「……本ばっか読んでるのつまんねェじゃん」
「本に嫉妬してるのかな?ハルクは」
「べっつに~!」
しばし本棚を眺めていたら、カルロ様が声をかけてきた。
「ごめん。電話かかってきたからちょっと出るね。アリス。あとは好きに使っていいから」
「はい。カルロ様、ありがとうございました!」
そう言って、カルロ様が書斎を出て行き、私とお坊っちゃまだけになった。
私は手に持っていた本を抱えて、ソファーの前にあるテーブルに置く。
「お坊っちゃまもそろそろお部屋に戻った方がいいですよ?」
「オレもここで寝る!」
「だめです。自分の部屋があるんですから、そっちで寝てください!」
お坊っちゃまの背中を押して、書斎から追い出す。部屋で寝る方がちゃんと寝られるんだから。まったく何でここで寝たがるのかしら。
「お前さ、その格好で寝るの?」
「はい。一晩だけですし。エプロンだけは脱ぎますよ」
「オレの服、貸そうか?」
「お坊っちゃまの服は着られないですよ。サイズが違いますし」
ムッとしたような顔のお坊っちゃま。
だって、私が小学生の服は着れるはずないし。
「お部屋に着いたら、ちゃんと寝るんですよ?」
「わかったよ!」
ぷんぷんと効果音がつきそうな状態でお坊っちゃまも部屋に戻って行った。
そうだ。今のうちにトイレ行ってこよう。
数分後。
書斎に戻って来ると、カルロ様と鉢合わせた。
「カルロ様?どうかしました?」
「そういえば、服はどうしたかなと思って…」
「このままで寝ます。一晩だけですし」
エプロンは外すけど。それを聞いたカルロ様は少し呆れていた。
「そんなことだろうと思ってたよ。はい、これ」
「え?」
そう言って、私に服を渡してきた。
「もう着なくなった服だから、返さなくていいよ。君が着るには大きいけど、そのままで寝るよりはマシなはずだよ」
「そんなわけには…!」
「その服で寝るくらいなら使って」
「わかりました。ありがとうございます」
圧がすごかったから、素直に受け取ることにした。
早速、奥の本棚の方で借りた服に着替えた。
「やっぱり大きいな…」
子供が大人の服を借りたみたいにブカブカだった。ズボンは裾をかなり折って、引きずらない程度に。ウエストにヒモが付いてたから、かなり絞って落ちないように結ぶ。袖も手が見えるくらいまで折る。これで何とか動ける。
しかし、この服、いい匂いがするのよね。洗剤とは違うし。リク様ともまた違う匂いだし。カルロ様の使ってる香水かな?
別に好きで嗅いでるわけじゃないのよ?着てるだけで匂いがするだけで…。断じて変態ではない!
着ていた服を手にしながら戻ってくると、カルロ様は本棚の前で本を読んでいた。だが、私に気づくと顔を上げる。
「どう?着れた?」
「はい。かなり大きいですけど着れました」
「だいぶ余っているね」
「そうですね。ズボンなんか時代劇に出るようなお奉行様みたくなりましたから」
「あはは。それは面白いね!」
そこへ書斎のドアが開く。
振り返ると、そこにはお坊っちゃまが自分の毛布を持って、立っていた。
「お坊っちゃま!?」
「ハルク。お前、ここで寝るつもりで自分の毛布を持ってきたの?」
「お部屋で寝てください。風邪引きますよ!」
「ここで寝る!」
お坊っちゃまの前に駆け寄る。すると、私の手を掴み、ソファーに連れて行かれる。私から手を離すとソファーに手を置く。どうやらここに座れと言っているらしい。仕方なく座る。
私が座った瞬間、お坊っちゃまも隣に座り、持って来た毛布を自分と私の膝にかける。
「お坊っちゃま?」
「オレも絶対ここで寝るから!追い出したりしたら、ボルドーにばらしてやる」
お坊っちゃまが私を脅してきた。それには頭を抱えた。どうして、部屋で寝ないのよ。この子は反抗期なの!?
「わかりました。風邪引いても知りませんからね?」
「やった。オレ、風邪なんて引かねェし」
お坊っちゃまはニコニコしていた。すると、今まで黙っていたカルロ様が息を吐く。
「お前は本当にアリスの傍から離れないよね」
「うるせェな。カルロは早く部屋に帰れよ」
「じゃあ、お前も部屋に帰るぞ」
「オレはアリスから許可もらったから帰んねェし。エロ大魔王は帰れ!」
「エロ大魔王って…。お前こそ、マセガキのくせによくそういうこと言えるよな?」
カルロ様も私の隣に座り出した。手には私が持って来た毛布。それを自分と私にかける。カルロ様が座った瞬間にお坊っちゃまは叫び出すし。余計に言い合いはヒートアップしていた。
何で私を挟んで、言い合うんだろうか。静かにして欲しい。もう夜なんだから。
時計に目をやると、0時間過ぎていた。
まだ眠くないし、本でも読もう。テーブルに置いてある本を見る。どれもずっと読みたかった本だ。さて、どの本にしようかな。
未だに言い合っている二人を無視して、私は本を読み出す。
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「開かない…うそっ」
まだ23時になってないのに!?何で開かないの!まだ22時過ぎだよ…。だが、いくらドアノブを掴んでも開くことはない。
「あれ?アリス、そこで何してるの」
そこへカルロ様がやって来た。助かった!カルロ様なら、わかるはずよね。
「カルロ様。あの、まだ23時になってないのに、ドアが開かなくて!」
「ああ。ここは月に何度か、自動で22時にロックされちゃう日があるんだよ。だから、今日はもう外に出られないよ」
「まさか、それが今日ってことですか?」
「うん」
……しまった。朝、その話があったのに!すっかり忘れてた!これじゃあ、部屋に帰れない!?どうすればいいの!
「たまにあるんだよ。親父や俺達の執事達が数人抜ける時にこういうことがあるんだ。セキュリティもかねてだろうね」
「そうなんですか。じゃあ、私は明日までここから出られないんですか?」
「そうなるね…。あ、ボルドーならいるけど、聞いてみる?」
絶対に怒られる。前にもお坊っちゃまのことで言われたんだから。
最近、執事長、私に対して厳しいし。このことがバレたら、また怒られる。バレたくない!!
「やめておきます。あの、本館に空いてるお部屋はないですか?一晩だけお借りしたいんですが」
「客室なら空いてるはずだけど、ボルドーにバレたらまずいんじゃないの?」
「じゃあ、私は朝までどこにいれば…」
「俺の部屋に来る?」
「遠慮します!」
カルロ様の部屋にいて、何もないのに誤解されたら嫌だもの。それにリク様に見られて、誤解されたくない!
「速攻で断られちゃった。じゃあ、どこに行くの?ここにいると、そろそろライが来るよ。あいつ、大体がこの時間に風呂入るはずだから。見つかるとやばいんじゃない?」
「…そうでした」
それも困る。昼間やたらしつこかったし。アガットさんに言い寄ってるの見かけるけど、何故か今日に限って、やたら私に言い寄ってきたし。今捕まったら、確実に部屋に連れ込まれてしまう。
それだけは避けたい!
「あ、それともリクの部屋に行く?」
「無理ですよ!リク様と同じ部屋にいたら、緊張するじゃないですか!?二人きりなんですよ!」
「確かに君がロボットみたいな動きになるのは目に見えるかな…」
わかっているなら、聞かないで欲しいんですけど。
「うーん、部屋がだめなら、俺達の書斎に行く?あそこならボルドーも来ないだろうし。本が置いてあるけど、ソファーもあるから寝られなくはないんじゃないかな」
「そこでいいです!泊めてください。あ、その前に布団部屋から毛布だけ取りに行きたいです!」
そうと決まれば、ライ様に見つかる前にカルロ様と書斎へと向かう。その前に毛布だけ本館にもある布団部屋から借りた。カルロ様が持とうかって言ってくれたが、自分のものですから大丈夫ですと断った。
二人で廊下を歩いていたら、お坊っちゃまと遭遇する。
「アリス……とカルロ。何で…」
「玄関がロックされて帰れなくなったんだよ」
「あ、はは…」
「ドジ…」
何も言い返せない。流石に自分のミスだし。
「それでどこで寝んの?まさか、カルロのところ…?」
「違います!書斎で寝ようと思いまして」
「書斎?親父の??」
「違うよ。俺達の方の書斎。俺の部屋に来ればって誘ったのに、速攻で断るんだよ。ひどいよね?」
「嫌ですよ。親衛隊にバレたら、何を言われるかわからないじゃないですか。それに未婚の異性の部屋で寝るのはどうかと…」
「オレの部屋に来ればいいじゃん…」
「いやいや、それも出来ませんから。それじゃあ、お坊っちゃま。おやす…」
「オレも行く!」
何故!?
お部屋に戻ってくださいと何度言っても、お坊っちゃまはきかない。仕方なく連れながら、再び書斎へと向かった。
書斎に案内され、中に入ると、思ったより沢山の本がおさまっていた。私の通っていた小学校の図書室よりも広いんじゃないかな。
「うわあ、本が沢山ありますね!」
「ここはハルクとライ以外のメンバーが本を置いてるんだ。昼間は頻繁に出入りするけど、今日はもう来ないはずだよ」
「確かにお坊っちゃまは本を読むタイプじゃないですよね」
「読まなくはねェよ!読むと眠たくなるだけ」
「ハルクは漫画しか読まないよ」
「…やっぱりそうなんですね」
お坊っちゃまを見ると、バツが悪いのか顔をそむけられた。私は近くのソファーに毛布を置いてから、本棚に近づく。
何となく本棚を眺めていたら、気になる本を見つけて、取り出す。
「あ!これ、読みたかった本です」
「それはリクの本かな」
「そうなんですか?これ読んでもいいですか!?」
「ここにあるくらいだから、読んでもいいと思うよ。借りたかったら、あとでリクには伝えておくから」
「ありがとうございます!」
リク様もこれ、読んでたんだー。嬉しい!
あ!この本は去年映画化した原作本。気になってたんだよね。あー。こっちは私の好きな●●先生の◇◇シリーズの新刊だ。え。もうこんなに出てたの??私、まだ3の途中なのに…。ああ、□■先生の新刊だよ。4年ぶりじゃないかな?あらすじ読んでるだけで読みたくなってきた!
ここは、私にとっての天国だわ。ずっといたいくらい。
「俺達なんて目に入ってないくらいに夢中だね」
「……本ばっか読んでるのつまんねェじゃん」
「本に嫉妬してるのかな?ハルクは」
「べっつに~!」
しばし本棚を眺めていたら、カルロ様が声をかけてきた。
「ごめん。電話かかってきたからちょっと出るね。アリス。あとは好きに使っていいから」
「はい。カルロ様、ありがとうございました!」
そう言って、カルロ様が書斎を出て行き、私とお坊っちゃまだけになった。
私は手に持っていた本を抱えて、ソファーの前にあるテーブルに置く。
「お坊っちゃまもそろそろお部屋に戻った方がいいですよ?」
「オレもここで寝る!」
「だめです。自分の部屋があるんですから、そっちで寝てください!」
お坊っちゃまの背中を押して、書斎から追い出す。部屋で寝る方がちゃんと寝られるんだから。まったく何でここで寝たがるのかしら。
「お前さ、その格好で寝るの?」
「はい。一晩だけですし。エプロンだけは脱ぎますよ」
「オレの服、貸そうか?」
「お坊っちゃまの服は着られないですよ。サイズが違いますし」
ムッとしたような顔のお坊っちゃま。
だって、私が小学生の服は着れるはずないし。
「お部屋に着いたら、ちゃんと寝るんですよ?」
「わかったよ!」
ぷんぷんと効果音がつきそうな状態でお坊っちゃまも部屋に戻って行った。
そうだ。今のうちにトイレ行ってこよう。
数分後。
書斎に戻って来ると、カルロ様と鉢合わせた。
「カルロ様?どうかしました?」
「そういえば、服はどうしたかなと思って…」
「このままで寝ます。一晩だけですし」
エプロンは外すけど。それを聞いたカルロ様は少し呆れていた。
「そんなことだろうと思ってたよ。はい、これ」
「え?」
そう言って、私に服を渡してきた。
「もう着なくなった服だから、返さなくていいよ。君が着るには大きいけど、そのままで寝るよりはマシなはずだよ」
「そんなわけには…!」
「その服で寝るくらいなら使って」
「わかりました。ありがとうございます」
圧がすごかったから、素直に受け取ることにした。
早速、奥の本棚の方で借りた服に着替えた。
「やっぱり大きいな…」
子供が大人の服を借りたみたいにブカブカだった。ズボンは裾をかなり折って、引きずらない程度に。ウエストにヒモが付いてたから、かなり絞って落ちないように結ぶ。袖も手が見えるくらいまで折る。これで何とか動ける。
しかし、この服、いい匂いがするのよね。洗剤とは違うし。リク様ともまた違う匂いだし。カルロ様の使ってる香水かな?
別に好きで嗅いでるわけじゃないのよ?着てるだけで匂いがするだけで…。断じて変態ではない!
着ていた服を手にしながら戻ってくると、カルロ様は本棚の前で本を読んでいた。だが、私に気づくと顔を上げる。
「どう?着れた?」
「はい。かなり大きいですけど着れました」
「だいぶ余っているね」
「そうですね。ズボンなんか時代劇に出るようなお奉行様みたくなりましたから」
「あはは。それは面白いね!」
そこへ書斎のドアが開く。
振り返ると、そこにはお坊っちゃまが自分の毛布を持って、立っていた。
「お坊っちゃま!?」
「ハルク。お前、ここで寝るつもりで自分の毛布を持ってきたの?」
「お部屋で寝てください。風邪引きますよ!」
「ここで寝る!」
お坊っちゃまの前に駆け寄る。すると、私の手を掴み、ソファーに連れて行かれる。私から手を離すとソファーに手を置く。どうやらここに座れと言っているらしい。仕方なく座る。
私が座った瞬間、お坊っちゃまも隣に座り、持って来た毛布を自分と私の膝にかける。
「お坊っちゃま?」
「オレも絶対ここで寝るから!追い出したりしたら、ボルドーにばらしてやる」
お坊っちゃまが私を脅してきた。それには頭を抱えた。どうして、部屋で寝ないのよ。この子は反抗期なの!?
「わかりました。風邪引いても知りませんからね?」
「やった。オレ、風邪なんて引かねェし」
お坊っちゃまはニコニコしていた。すると、今まで黙っていたカルロ様が息を吐く。
「お前は本当にアリスの傍から離れないよね」
「うるせェな。カルロは早く部屋に帰れよ」
「じゃあ、お前も部屋に帰るぞ」
「オレはアリスから許可もらったから帰んねェし。エロ大魔王は帰れ!」
「エロ大魔王って…。お前こそ、マセガキのくせによくそういうこと言えるよな?」
カルロ様も私の隣に座り出した。手には私が持って来た毛布。それを自分と私にかける。カルロ様が座った瞬間にお坊っちゃまは叫び出すし。余計に言い合いはヒートアップしていた。
何で私を挟んで、言い合うんだろうか。静かにして欲しい。もう夜なんだから。
時計に目をやると、0時間過ぎていた。
まだ眠くないし、本でも読もう。テーブルに置いてある本を見る。どれもずっと読みたかった本だ。さて、どの本にしようかな。
未だに言い合っている二人を無視して、私は本を読み出す。
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