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その後。
いつもなら授業が終わると真っ先に帰るオレだが、アリスの反応が怖くて、コウの家に逃げた。しかし、コウとオレの帰りたがらない理由を聞いたアガットによって、大丈夫だからと言われて、屋敷に帰らされた。
ビクビクしながら帰ると、アリスはいつも通りで、新聞のことは特に聞いて来なかった。読んでねェのか?いや、読んでるよな。
全然聞いて来ないことが気になって、思わずアリスに尋ねた。
「新聞、読んだんじゃねェの?」
「新聞?ああ、学園新聞ですか。読みましたよ!確か、ポケットに入れて……ありました!」
「出さなくていいって!」
「私、気になった記事がありまして、帰って来たら、お坊っちゃまに聞こうと思っていたんです!」
まさか、オレの好きなタイプのことか。聞かれたら、言うか?ついでにアリスに告白。何て言おう。いざ言おうとすると、すげー緊張してきた。
好きだ。オレと付き合ってくれ。
これが無難か?回りくどいことなんて、まったく伝わらないだろうし。てか、コイツはオレが好きと言っても、ちゃんと伝わるのか?付き合ってくれも、どこまでですかと言いそうなんだけど。
「お坊っちゃま、これです」
「……ど、どれ…?」
内心ドキドキしながら、オレは平静を装う。アリスが指差したのは、オレらのインタビュー───ではなく、学園近くにあるお店紹介のコーナー。今回は、毎月限定チョコレートを出しているというチョコレート専門店。
「……………は??チョコレート?」
「ここ、私がずっと行ってみたかったチョコレート店なんです!スマホで調べたら、今月限定はミルクチョコレートなんですよね。数に限りがあるので、早く買いに行かないとなくなっちゃうんです。他にもお花をイメージしたチョコとかも毎月違うんですよ!もう食べるのがもったいないくらいに…」
「お前、本当に予想の斜め上をいくよな…」
「え、斜め上!?」
はあ。気にしてたオレがバカみてェじゃん。
そうだよ。アリスは、こういうヤツだった。食い気に走るんだよ。
「なので、そのうちに買いに行こうと思いまして…」
「オレの迎えの後に寄ればいいじゃん。明日なら、早く終わるし」
「お坊っちゃまの学園、寄り道は禁止なんじゃないですか?」
「禁止じゃねェよ。お前が話すから、オレまで食べたくなった」
「それじゃあ、アガットさんに頼んで寄ってもらいましょう。あと、カフェが併設されてるんですが、そこ限定のチョコレートパフェがおいしいんですよ。ベゴニアからその話を聞いた時から行きたくて仕方なかったんです!」
「お前さ、次から次に出して来るなよ!更に食べたくなんだろ」
「ふふ。お坊っちゃまなら、食べたくなるだろうと思ってました。甘い物、好きですし」
「確信犯かよ」
「限定のパフェは、何種類かあるんですよ。カフェに立ち寄るなら、アガットさんも誘いましょう!駐車場もあるところなので」
「アガットも甘いもんが好きだしな。誘えば、来てくれんだろ」
「それじゃあ、アガットさんを探しに行きましょう!」
そう言って、アリスが部屋を出て行くから、後を追いかけた。告白は、まだいいか。しばらくは、このままの距離でも。
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