Trump Trap
ある日。
アリスがハルクの部屋に戻ると、アガットしかいなかった。
「アガットさん。お坊っちゃまは?」
「お坊っちゃまなら、今ボルドーさんに呼ばれていないんですよ。すぐに戻るとは思います。アリスさんの手に持っているのは、トランプですか?」
「はい。さっき使用人屋敷の倉庫を片していたら、新品のトランプが出てきて、ジョーヌさんがもらっていいとおっしゃったので、もらってきちゃいました」
「懐かしいです。昔、家族とよくやりました」
「私も家族やいとこ達とやりました!意外に熱中しちゃいますよね」
「うちの場合、下の弟が負ける度にもう一回って悔しがるんですよ。またやると、今度は別の弟が負けちゃって、もう一回って言い出して、キリがなかったんですよね」
「アガットさんのところ、弟さんが沢山いますからね。私もよく妹とスピードをやってたんですが、私相手に容赦なくて、いつも負けてました。しかも、“お姉ちゃん、超弱い。全然勝負にならない”って言われて」
「スピードはその名の通りのゲームですからね。うちもアッシュとエボニーがよくやってましたよ。毎回喧嘩しながら」
二人がトランプにまつわる話で笑い合っていると、そこへハルクが戻ってきた。
「何の話してんの?」
「アリスさんと小さい頃にトランプで遊んだという話をしていたんですよ」
「お坊っちゃまはどうでしたか?」
「昔、母さんとタスク兄の三人でなら何回かやったことあるけど、もうルールなんて覚えてねェよ。それにうちの家族全員でトランプなんてやると思うか?」
「……やらないですね。想像すらも出来ないです」
「だろ?」
「それなら、今ここにトランプもありますし、三人で遊んでみませんか?」
「え」
「そうですね!私もトランプは久々にやりますし。三人なら色んなゲームが出来ますよ!」
「やる」
ハルクがルールをよくわからないので、二人が説明しながら、トランプを始める。
まずは、ババ抜きをやることになった。
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