Riku Note Ⅱ
❰side H❱
ベッドの近くに小さめのノートが落ちていた。
オレのじゃない。こんな小さいのは使わねェし。アガットも使ってねェはず。となると、これはアリスのだろう。表紙を見たら、リクノートって書いてあったからな。てか、安直過ぎだろ。
中を見てみると、案の定、リク兄のことが沢山書かれていた。リク兄に関する情報とか薦められた本の感想が書かれていた。
……すげーな。これ。
どんだけリク兄のことが好きなんだよ。読めば読むほど、かなり嫉妬心がわいてくる。
オレも書いてみるか?いや、無理。こんなのいちいちノートに書いてらんねェし!
そこへアリスが部屋に戻ってきた。
「お坊っちゃま。洗濯物がありましたら、出してくださ……っ!?」
アリスがオレの持っている物を凝視していた。それから自分のエプロンのポケットを漁り、真っ青になっていた。
「お、お、お、お、お坊っちゃま!そのノートを返していただけませんか!?」
「……ヤダ」
「ヤダじゃなくて!それ、私の大事なものなんです!」
アリスがオレの手元からノートを奪いに来るが、呆気なくかわす。ノートをめくっていると…
「リク兄の写真まであんじゃん。これ、ちょっと、いや、かなりヤバイ。一方間違えれば、ストーカーみてェ」
「うっ。自分でもやばいとは思ってましたよ!だから、もう返してください!」
「何々。“5月15日。リク様と久々にお話が出来た。今、大学で流行っているものを教えてもらった”」
「わー!わー!お坊っちゃま、読まないでください!!……っ!?」
その時、アリスが何かに足を取られて、こちらに倒れてくる。オレは避ける間もなく、アリスの下敷きになった。
幸い、オレの下はベッドだから、何ともなかったけど。
問題はオレの上にいるアリスだ。覆い被さってきてる。てか、オレの顔に胸が当たってる!何げなく触ると、想像よりも胸でかくねェ!?柔らかいけど、すげー苦しい!窒息する!
「……うっ…苦し…」
「お坊っちゃま、大丈夫ですか!?今、どきます!」
アリスが急いで起き上がって、何とか息が出来た。
一瞬、死ぬかと思った…。
「これ、返してもらいますからね」
「……」
アリスの手には、リクノートがあった。倒れた時にオレの手から離れたんだろう。もう今のオレにはどうでも良くなっていた…。
「洗濯物がないのなら、洗濯係にないって言っておきますからね」
「…うん」
「それじゃあ、伝えてきます。そのまま別邸の掃除のヘルプに入りますので。また午後になったら来ますね。失礼しました」
そう言って、アリスは部屋を出て行った。真っ赤な顔をしてるオレを置いて───
「オレ、全然意識されてねェじゃん…」
普通、「やだ!」って恥ずかしくなんだろ?
なのに、アイツ、平然としてた。胸触ったのに…。不可抗力だけど。
これ、マジで弟みたいにしか見られてねェ!
やばい。もっと意識してもらわないと!
でも、アイツ、鈍いからな。普通にやっても意識してくれなさそう。
てか、年下には興味ないんだろうな。完全に子供扱いされてるし。
ああ、早く大人になりてェ。
【END】