Riku Note
❰side C❱
「ん?なんだ、これ…」
書斎に本を戻して、自分の部屋に戻ろうとしていた時、廊下の真ん中に小さなノートが落ちていた。メイドの誰かが落としたのだろうか。拾い上げて、中を見る。
そこには───
リクの情報が事細かく書かれていた。中にはリクだけしか知らないようなことまでも。
それだけではない。中にはリクが読んだ本の感想なども沢山書かれている。きっと本人に本を薦められて、自分も同じ本を読んだのだろう。
しかし、すごいな。これ…。名前通りのリクノートだ。
うちのメイドの中にもリクを慕う娘達もいるが、ここまで熱くなっているのは、俺が知っている中ではひとりだけ。
「カルロ様!!」
そこへ噂の人物がやって来た。
いつも着ているメイド服ではなく、部屋着を着たアリスがこちらに向かって、走ってきた。普段、髪を結わいているが、今はおろしており、お風呂に入った後なのだろう。微かに彼女の使うシャンプーの香りがした。
「どうしたの?」
思わず今持っていたノートを後ろのズボンのポケットに隠した。
「あの、ノートを見ませんでした!?」
「ノート?」
「はい。これくらいの小さなノートなんですけど」
アリスが身振りで説明する。やっぱりこのノートは、アリスのか。
「何か大事なノートだったの?」
「大事です!けど、誰かが読んだら絶対に引かれるというか…」
確かに。俺には面白かったけど、人によっては引くかもしれない。リクがどんな反応するか少し気になるけど。
ポケットから取り出す。ノートをアリスに渡すと、ホッとした顔を見せた。だが、すぐに錆び付いたロボットのように俺を見上げる。
「もしかして、み、見ました!?」
「うん。色々なことが書いてあったりして、面白かったよ」
「……っ!忘れてください!」
真っ赤な顔をしながら、アリスは駆けていく。
そんな恥ずかしがることはないけどな。中にはもっとやばいことを書いていた同級生もいたし。つい読んだ時の衝撃は今でも忘れられない。あれに比べたら、アリスのは可愛い方だ。
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