Christmas





朝の5時半です。
お坊っちゃま、全然起きないので背負ってます。
流石にお坊っちゃまを部屋に帰さないと、私が怒られるので!

本館にたどり着き、鍵を取り出そうとポケットに手を入れる。えっと、確かこっちのポケットにしまったはず…。



「そこで何してるの?」

「うわっ!?」


後ろから声が聞こえて、私は驚く。
危ない。危うくお坊っちゃまを落とすところだったわ!



「カルロ様。ビックリさせないでくださいよ…」

「まさか、こんなところで会うとは思わなかったからね」

「朝帰りですか?」

「これくらい普通じゃない?」


普通なの?
ま、こんな時間に帰って来たってことは、今まで女の人といたんだろうな。クリスマスだったし。
確かライ様もクリスマスはいないって言ってたな。相手はどっちかわかんないけど。

まさか、リク様も!?



「リクなら、家にいるよ。クリスマスは出かけないって言っていたから」

「な、何だ。良かったー。あれ?私、今それを口に出しました?」

「いや、出してないよ。出してないけど、顔に書いてあったから…」


私、そんなにわかりやすいのかしら。



「わかりやすいよね…」

「顔を見て言わないでください」

「あはは。君は本当に飽きないよね。ところで何でハルクを背負ってるの?」


そうだった。
本来の私の目的はお坊っちゃまを部屋に帰すこと。すっかり忘れていた!



「え、それは…」

「しかも、こんな朝早くに。もしかして、君の部屋に泊まったのかな?」

「……」


当たっているから何も言えない。
うっ、だから、誰にも会いたくなかったのよ!見つかったから仕方ないけれど。



「俺のこと、言えないね」

「私、やましいことはしてませんから!クリスマスケーキを食べさせただけですし。それにお坊っちゃまはまだ子供ですよ!」

「子供でも君の部屋で泊まったのは事実だよね?同じベッドで寝たんでしょ」

「そうです…」


確かに一緒に寝たけど、それだけだ。やましいことなどない。裸で寝たわけじゃないし。



「ハルク、俺が部屋まで背負うよ。だから、鍵を開けてくれる?」

「え、でも…」

「いいから」


そう言われたので、カルロ様にお坊っちゃまを渡した。「こいつ、重くなったな…」なんて背負いながらも笑っていた。

私は鍵を開けて、カルロ様に先に入ってもらってから自分も後に続く。



「ここ、クリスマスパーティーはやらないんですよね?」

「随分昔にやったことはあるかな。タスクとハルクの母親がそういうの好きで、やってもらってた時期はあるよ。彼女が亡くなってからやらなくなった」

「そうなんですか」


お坊っちゃま達のお母さんって、色んな人から話を聞くけど、イベントごとはちゃんとやってあげてた感じなのよね。優しい人だったとも聞いたし。二人も好きだったし、自分の子供じゃないカルロ様達も可愛がっていたらしい。



「で、ハルクは何で君の部屋に行ったのかな?」

「使用人の皆でクリスマスパーティーやることになって、私がクリスマスケーキを作るとつい話してしまいまして。そのケーキを食べたいなら、誰にも見つからずに私の部屋に来れたらいいですよって言いました…」

「行かないわけないでしょ。君の誘いに。しかも、大好きなケーキがあるなら尚更…」

「そうでした。そこは深く考えてませんでした。でも、ケーキを食べさせたら帰らせるつもりだったんです。そしたら、お坊っちゃまが23時になってしまうと、向こうは鍵が閉まるから部屋に帰れないと言ったので、やむを得ず泊めました」

「……なるほど。ハルクが今着てる服は君の?」

「そうです。薄着だったので、着せました…。風邪をひかせないように」

「大分大きいのに、黙って着たんだ。いつもなら嫌がるのに、君の服だから脱がなかったんだろうね」

「え?寒かったからでは…」

「こいつ、暑がりだから冬でも薄着でいることが多いんだよ。それが原因で風邪引く時もあるけど。そんなやつが黙って着てるわけない」


話してるうちにお坊っちゃまの部屋に着く。お坊っちゃまの部屋の鍵を開けて、玄関同様に先に入ってもらった。

ベッドに向かい、カルロ様はお坊っちゃまをそこに寝かせる。



「幸せそうに寝てるね…。去年なんてこんな顔してなかったのに」

「そうなんですか?」

「うち、親父が放任してるから、皆好き勝手やってたんだよ。俺もあまり家には帰らなかったし、ライも似たようなもんだったかな。リクとドラも部屋にこもってばっかだったし。タスクとハルクはよく二人でいたけど、タスクはリコリス嬢と婚約してからはハルクのことなんて放置。そしたら、ハルクは反抗期突入。ほとんどバラバラだったんだよ…」


そうだったんだ。前から今みたいな感じなんだと思ってた。

…はっ。悠長に話してる場合じゃない!早くあっちに戻らないと、誰かに見つかっちゃう。



「カルロ様、私、そろそろ部屋に戻りますね!ありがとうございました」

「またね、アリス」

「失礼しました!」


カルロ様に一礼してから、お坊っちゃまの部屋を出た。周りに注意しながら、何とか誰にも見つからずに自分の部屋まで帰ることが出来た。

朝から疲れたー。お陰でお腹が空いた。
もうじき食堂も開く時間だから、下に降りて待ってようかな。さてと、何を食べよう。






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