Alice swap Ⅱ
「カメリア」
「……」
「カメリア。聞こえてねーのかよ、おい」
「……」
「焦らすの好きだよな、おまえも」
突然、誰かにお尻を触られた。
その瞬間、ゾワリとした。その感触が気持ち悪くて、つい叫んでしまった。
「きゃああああ!痴漢!変態!!」
「カメリア。おれだって!」
振り返ると、ライ様がいた。私の声にびっくりしたのか、片耳を押さえていたが。
「ライ様!?い、いきなり何するんですか!」
「何って、さっきからおまえのことを呼んでたんだぜ?全然気づかないから、おれを試してるのかと思って、尻を触ったんだよ。まさか、あんなに叫ばれるとは思わなかったぜ」
「そう言いながら、何で肩を抱いて来るんですか!?ちょっと!どこを触ってるんですか!?やめてください!」
ライ様が私を引き寄せ、もう片方の手で太ももを触って、更にはミニスカートの中に手を入れようとしてきたから、流石に手の甲を思いっきりつねる。
「やめてください!」
「痛てて!でも、堪んない…」
ひー!!手の甲をつねったのに、何でうっとりするの!気持ち悪い!
「ライ様、気持ち悪い!あっちに行ってください!!」
「ライさま?カメリア。おまえ、今日はおかしくねー?」
「おかしくないですよ!」
「いや、その口調からして、いつもと違うじゃん」
「それはそうです。私はカメリア様じゃなく、アリスですから!」
「はあ?」
ライ様が何言ってんだ?こいつ…みたいな顔で、私を見る。私だって、まだ信じられないけど、ちゃんと言うしかない。もしかしたら、信じてくれるかもしれないし!
「外見はカメリア様ですけど、中身は私なんですよ!わかりましたか?」
「ふーん。アリス、ね…。よし、わかった!」
え、もしかして、本当に信じてくれた!?
ライ様、意外にわかってくれる人だったの?人は見かけによらないのね。
「じゃあさ、どう違うか、ベッドで教えろよ」
「え?ベッド…??何故!?」
「いつもおれの部屋でヤってるだろ?そこでカメリアとアリスの違いを教えろよ。ほら、部屋に行こうぜ」
そう言って、手を掴まれた。ベッドって、まさか…!
ぎゃあああ?!嫌だ。身体はカメリア様だけど、中身は私だ。ライ様となんてしたくないわよ。トラウマになる!!お嫁にも行けなくなるじゃないのよ。絶対にライ様の部屋に行くわけには行かない!逃げなくちゃ。どうしたら…!
必死に考えていると、ある方法が浮かんだ。
確か、前にメアちゃんが教えてくれた、あの方法。あれしかライ様を撃退出来ない!いざ!!
「ライ様、ごめんなさい!」
「……………っ!!?」
背後からライ様の股間を思いっきり蹴飛ばした。その際、掴まれていた手は外れ、ライ様が股間を押さえて、その場に崩れ落ちた。
今のうちだ!私は、その場からすばやく離れた。
「はあっ、はあっ…」
ライ様から逃げた私は、ご兄弟達の書斎一号室に隠れていた。こっちなら、ライ様は来ないと考えて。もう一つの書斎二号室の方には、ライ様専用の本置き場があるから、危険なのよね。勝手にいかがわしい本を置いてくから、リク様が置くスペースを作ってあげたらしい。優しいわね、リク様。
取り合えず、やっと休めるよ。ずっと逃げ回っていたから、しばらくは動きたくない。少しだけでもいい。休まないと私が持たない!
あとは、どこに逃げたらいいんだろう。自分の部屋には帰れないし、鍵もカメリア様が持ってる。あー!この姿じゃなかったら!!私は頭を抱えた。元に戻りたいよー!
「カメリア?そこで何してるの?」
「え…」
声をかけられて、顔を上げると、カルロ様がいた。その後ろにはアンバーさんの姿もある。本を取りに来たのか、置きに来たのか。カルロ様の手には、数冊の本があった。
「カルロ様。ちょっとライ様に追いかけられていまして…」
「ライに追いかけられてる??君が?」
「何か変でしたか?私…」
「うん。何かいつもと違うよね。ライと喧嘩でもした?」
「ライ様とケンカするほど、仲良くないですよ!」
カルロ様と話してると、ライ様の声が廊下から聞こえてきた。
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