Agatto's Birthday






そして、当日。
私は前日から小食堂の方に材料を運び、軽食用の下準備も済ませていたので、今日はケーキ作りがメインだ。材料もあるし、あとはお坊っちゃまが来れば、始められる。

そこへお坊っちゃまが入って来た。



「アリス。遅くなった!」

「大丈夫ですよ。ところでアガットさんは?」

「アガットなら、今日は出かけねェから、自由にしていいって言っといた!寂しそうな顔してたけど」

「あはは。目に浮かびます。でも、お誕生日ですから喜ばせたいですよね!」

「まあ、アガットには昔から世話になってるからな。ずっと傍にいてくれたし」


お坊っちゃま、アガットさんのこと大事に思っているんだな。
よし。ここは腕によりをかけて、頑張らなくちゃ。



「お坊っちゃま、アガットさんを喜ばせましょう!」

「ああ!」


お坊っちゃまにもエプロンをつけさせて、髪も少しだけ結わいて、前髪をピンでとめてあげた。二人で手を洗い、準備は万端。

早速、私達はケーキ作りを開始した。市販のスポンジではなく、一から作っているのですが、お坊っちゃまは油断してるとつまみ食いばっかり。私が少し目を離すと、必ず何か食べているのです。今も口をモゴモゴさせながら…。



「お坊っちゃま!もうつまみ食いばっかりして、いちごがまた減ってるじゃないですかー!」

「いちごが食べて欲しそうにしてたから」


そんなわけないでしょ。
お坊っちゃまは、いつから電波系のキャラになったのよ!



「お坊っちゃまがアガットさんに誕生日ケーキを作りたいというから一緒に作ってるのに、さっきから食べてばっかりですよ!真面目にやってください!」

「やってるって!でも、小腹空いたから…」

「真面目にやらないなら、次のお菓子は手作りじゃなく、煮干ししか出しませんからね!それでもいいなら…」

「アガットの誕生日ケーキ作り、頑張るぞー!」


お菓子を煮干ししか出さないと言ったら、煮干し効果があったのか、やっと真面目にやるようになった。最初からそのやる気を出して欲しい。



「なあ、次は?何すればいい?」

「そうですね。スポンジは今オーブンで焼き上がりましたから、少し冷ましましょう。それまでは、一旦、軽食を作りましょうか。唐揚げとフライドポテトでも」

「唐揚げ!ポテト!食いたい!」

「まだ出来てないですよ。下準備は済ませてますから、あとは揚げるだけです。出来たら、少し食べさせてあげますから」

「やった!」


目をキラキラ輝かせるお坊っちゃま。そんな彼を見て、つい笑みがこぼれる。私にも弟がいたら、こんな感じかな。



「ふふっ」

「何笑ってんだよ?」

「いえ、私にも弟がいたら、こんな感じかなと思ったら、嬉しくて」

「……」


何故かお坊っちゃまの顔は、ブスッとしてしまった。え、なんで?私の弟は嫌なの?
(※好きな相手から、弟と言われたら、まるで恋愛対象じゃないと言われてると同じことにアリスは気づいてません)




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