Agatto's Birthday
※アリスが屋敷に勤め始めた一年目の物語。
11月も20日を過ぎた頃。
珍しく机の上に置いてあるデジタル時計を見ながら、お坊っちゃまは呟く。
「そろそろ、か…」
「何がですか?」
すると、こちらに振り向いて言った。
「アガットの誕生日」
「え?アガットさん、今月誕生日なんですか!?いつですか?」
「23日。勤労感謝の日だよ」
「もうすぐじゃないですか!もっと早く言ってくださいよ。お坊っちゃま」
「オレも今、気づいたんだよ…」
近い休みはない。あとはどこか街に買い出しに行く時に車を出してもらいたいけど。いつもならアガットさんに頼むけど、今回は頼めないし。
どうしよう。他に誰かに頼めるか聞いてみよう。
「なあ、ケーキ作んの?」
「はい。そう考えてます。アガットさんにはいつもお世話になっていますから」
「オレも一緒に作る」
「え?お坊っちゃまが!?」
私の驚きに少し怒ったのか、お坊っちゃまはムッとしてた。
「たまにはそういうのもいいかと思ったんだよ」
「私は構いませんけど、つまみ食いしないでくださいね?」
「……わかった」
頷くまでにちょっと間があったけど。
取り合えず、二人でケーキを作ろうということになった。
その後、当日にケーキを作るため、メイド長に小食堂を借りたいと言ったら、あっさりと許可が出た。更に材料費までいただいてしまった。
ありがとうございます!
夜にスマルトに相談したら、何とスマルトが明日休みだからと、買い出しを手伝ってくれることになった。更にアンバーさんの車で街に行けることも。皆のご厚意がありがたい…。
.