Cake
学園から帰って来て、自分の部屋に向かう。今日のアリスのお菓子、なんだろう。そろそろケーキが食べてェなんて考えながら、ドアを開ける。
と、そこには、タスク兄がいた。
「え、あれ…?」
「ハルク。何してんの?」
「いや、部屋を間違えたのかと思って…」
「おかえりなさい。お坊っちゃま」
「ただいま…」
そこへアリスが顔を出した。やっぱりオレの部屋じゃん!
だけど、何でタスク兄がいるんだ?
「ハルク。これを見てくんない?」
「これ?」
机の上に並べられた一切れにカットされたケーキが二つ置いてあった。どちらもオレが好きなショートケーキ。今日はケーキか!しかも、二つも食えるなんて最高。早速、ケーキを取ろうとしたら、タスク兄に止められた。しかも、手を叩かれた。
「痛てっ!」
「ストップ。まだ食べていいとは言ってねェから」
「は?何で…」
「問題です!さあ、アリスの作ったケーキは、どっちでしょ!?」
「なんだよ、いきなり…」
ケーキを食べられると思ったのに…。何でクイズに答えないといけねェんだよ。あからさまに不機嫌になっているオレにタスク兄が言う。
「正解したら、明日アリスがお前の好きなお菓子を作ってくれるってさ」
「マジ!?」
「はい。いいですよ」
やった!
一週間に一度しか食えないから、明日も食えることを考えたら、マジで嬉しい。
「でも、外したら、一週間……10日間はアリスのお菓子はねェからな」
「はあ!?」
10日!?長すぎる!何でだよ。せめて一週間にしてくれよ!
「明日も食べたければ、当てることだな。クイズだから、特別に試食してもいいぜ?」
「……わかった」
まず用意されたケーキを見比べる。
白い皿に乗っかったショートケーキ。見た目だけだと、全然わかんねェ!取り合えず、食べてみるか。左側にあるケーキを手に取り、フォークを持つ。
「片方はアリスが作ったケーキ、もう片方は別のメイドが作ったケーキ。オレも試しに両方食べてみたけど、全然わかんなかった…」
「へぇ…」
「タスク様は、私の作るケーキも食べたことないですからね。でも、もう一つのケーキを作ってくれたショコラもたまにお菓子を作ってくれるんですよ!特にチーズケーキが絶品なんです。レアもベイクドも全部おいしくて、私、毎回食べ過ぎちゃうんですよね…」
「アリス。少し太ったんじゃねェ?」
「え!?」
「嘘だよ」
「やめてくださいよ!ビックリするじゃないですか…」
「あははは!からかい甲斐あるなー。アリスは」
二人、意外に仲良くねェ?
思わずムッとしながら食っていたせいで、気づけばケーキを半分近くも食べていた。
「ハルク、わかった?……って、半分も食ってんじゃん」
「こっち」
オレは、左側のケーキを持ったまま答える。右側のケーキは一口だけしか食べてねェ。
「もう一つのは一口しか食べてねェじゃん。いいのか?そっちで?外してもしんねェよ」
「食ってすぐわかったから。こっちがアリスの作ったケーキ」
そして、オレは左側にあったケーキを全て平らげた。すると、タスク兄は言った。
「正解。流石だねー、ハルク」
「これくらい簡単。てか、おかわりねェの?当たったんだから、もう一切れ、欲しい」
「こっちのケーキ、食えば?」
「それ、アリスの作ったケーキじゃねェじゃん。アリスのが食いたい」
「そっちもおいしいのに。じゃあ、すぐに取りに行ってきますね」
そう言って、アリスはケーキを取りに一旦、部屋から出て行く。アリスが出て行ってから、タスク兄がニヤニヤした顔でオレに話しかける。
「お前、本当に好きだねー。アリスの作るケーキ」
「当たり前じゃん。ケーキだけじゃなくて、アイツの作るお菓子は、全部好きだし。本当は毎日食いてェけど、全然許可がおりねェから」
「んー。それはお前の成績次第じゃね?前みたいにアリスとピクニック行くために頑張った時みたいにさ。あのままをキープしたら、少しは違うかもな」
あの時はそりゃ頑張った。条件がかなり厳しかったけど、アイツと出かけるために…。必死でやった。でも、毎日勉強ばっかはキツかったんだよな。苦痛だったけど、ご褒美あったから、何とかクリア出来たし。
だけど、毎回試験で良い成績をおさめれば、アリスのお菓子を毎日、食べられるかもしれないなら、こうしちゃいられねェ…!
「ちょっとボルドーのところに行ってくる!」
「行ってらっしゃーい」
タスク兄に見送られ、オレは部屋を出て、ボルドーのところに向かった。
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