School Trip (中)
翌日も昨日と同じ見学をしながら、ガイドの話を聞き逃すまいとクラスのヤツらがメモを取っていた。
昨日同様に胸ポケットにボイスレコーダーを入れて、録音する。オレと同じ手を使っているのか、ダイヤモンドも手ぶらだった。オレと目が合うと軽く手を振っていた。アイツ、またオレをからかいに来そうだな。
昼過ぎには見学も終わり、昼食を食べた後は好きに観光していい時間となったから、オレはまたもおみやげコーナーのところを見て回る。
昨日のところとはまた違い、更に広くて種類が沢山あり、またオレは頭を抱えた。昨日も思ったが、オレのようにおみやげを買うヤツはあまりいないらしい。観光客はそこそこいても、うちの学園の制服を来て見ているのは、ほんの数人だけだ。
やっぱ買わないんだな、おみやげなんて。ま、オレも今まではそうだったけど。
「あ、ドルチェくん」
「カイヤナイト」
おみやげを見ていたら、カイヤナイトがいた。隣にダイヤモンドの姿はいない。だが、オレは本当にいないのか、辺りを確認する。そんなオレを見たカイヤナイトは笑う。
「シンジュならいないよ?別のところにいるから」
「そっか…」
それを聞いて、ホッとした。またいたら、絶対にからかわれるし。何かオレに対してだけ、他のヤツらと違うんだよな。
てか、誰かと似てんだよ!そのからかい方が。
「カイヤナイトは誰かにみやげ買うの?」
「うん。両親とうちで働いてる使用人の皆にね。使用人の皆にはお菓子を買おうとは思ってるんだ」
「ふーん」
「ドルチェくんは?」
言おうとして、考える。
カイヤナイトなら、変なこと言ったりしねェよな?正直一人で見ても、買えないまま終わる気がしていた。流石にそれは避けてェ。
「オレも世話してくれてるヤツにあげたくて、見てる。……あのさ、聞いてもいいか?」
「何?僕で良ければ…」
「オレ、おみやげを渡したこと一度もなくてさ、何をあげたらいいか、全然わからなくて、何をやったら喜んでくれっかな?」
「あげる人は?男性?女性?」
「どっちも。二人共、オレよりは年上だけど、若いぜ」
アガットもアリスもまだ誕生日は来てないからな。二人共、秋生まれだし。
「うーん、それぞれにあげるなら、食べ物よりは物が良いかもしれないね」
「やっぱそうだよな…」
それからカイヤナイトが一緒に店内を回りながら、お店の物を手に取って、説明してくれる。だが、その中に惹かれるものはなくて…。せっかくカイヤナイトが協力してくれてるのに申し訳ねェ。
「うーん、二人はオレが何をやっても喜んではくれると思うだろうけど、やっぱり喜ばせてェ…」
「そっか。それなら御守りは?」
「御守り?」
「ここ、結構御守りが効くって評判なんだよ。特に恋愛に関してのが強いって、ミルが教えてくれたんだ」
「ミル??」
そう聞き返すと、カイヤナイトの顔が赤くなる。もしかしたら、カイヤナイトの好きなヤツか?
「ミルっていうのは、僕の家で働いてる使用人で、よく僕の面倒を見てくれてる人なんだ。歳は僕より五つ上の17歳」
「オレの世話係してるヤツと同い年だ。カイヤナイト、その人にもおみやげ買うんだろ?」
「うん」
「それじゃあ、その御守りがあるところに行こうぜ。オレもそこに行ってみたいからさ」
「そうだね!」
カイヤナイトと一緒にその御守りがあるところへ向かう。そこは少し混雑していたが、見られないというわけでもない。だから、別々で回ってみることにした。終わったら、連絡をしようと約束して、一度別れた。取り合えず、カイヤナイトと互いの携帯番号だけ交換はした。入れ違いとかになっても、困るしな。
御守りを見て回っていると、オレはある御守りを手に取ってみた。あ、これがいいかも。
交通安全の御守り。アガットにはこれにしよう。毎日、オレの送り迎えで、車の運転をしてもらってるし。事故なんて起こしたりはしねェけど、何かあっても嫌だし。安全一番だよな!
恋愛の御守りも必要かとも考えた。アガット、あまり女を優先しねェからな。オレや自分の弟ばかり優先するから、いつの間にか女と別れてること多いんだよ。でも、全然気にしてねェし。意外に女の気持ちとかには、鈍感だからな。大丈夫か?アガット。
アガットには、御守りとお菓子を買うか。甘いもんが好きだし。流石にここには置いてないから、別のところで見よう。
さて、アリスには何がいいか……あ、これでいいか。とある御守りを手に取る。何か花の形してる。アイツ、花とか好きみてェだし。たまに読んでる本の栞が花の形してたのを挟んでた。それを見ながら、ニヤニヤしてたっけ。
でも、この御守り、何も書いてねェけど、何の効果のあるものなんだ?ま、いいか。ついでにオレも何か買うかな。この横のやつにするか。
数分後。
買い物を済ませて、少し離れたところでカイヤナイトを待つ。ちょっとして、カイヤナイトも来た。
「ドルチェくん、待たせてごめんね」
「平気。カイヤナイトに聞いて、本当に助かった。教えてくれてありがとな」
「ううん。いいのが見つかって良かったよ。二人共、喜んでくれるといいね!」
「ああ」
カイヤナイトはいいヤツだ。コイツに相談して、良かった。おみやげも無事に買えたし。
「ねぇ、ドルチェくん」
「ん?」
「明日の自由行動はどうするの?」
「オレ?明日は部屋から出ないけど」
「え!?」
当初の予定のアリスとアガットに渡すおみやげも買えたし。あ、まだアガットのお菓子がまだだわ。最終日までには買っとかねェと。
明日は部屋でゆっくりしながら、今日の分のレポートを完成させる予定だ。その後は気分次第だ。昨日のレポートはもう終わらせたし。
「自由行動なのに!?」
「一緒に回るヤツとかも特にいねェしな。明後日は一応、一人で回るけど」
旅行前日にアリスと雑誌を見ながら、行きたい店とかチェックはしたから、そこら辺を見て回るつもりだ。食べ歩きとかもいいよな。
「じゃあさ、僕らと一緒に行かない?僕とシンジュで回る予定なんだけど」
「二人で行くんじゃねェの?」
「ドルチェくんが増えても、シンジュはOKしてくれるよ。昨日の感じだと気に入られたと思うし。シンジュ、気に入るとからかうところがあるから」
「アイツのオモチャにされてんの?オレ…」
だから、目が合う度にニヤニヤしてたわけか。あの野郎…。
「それに僕、ドルチェくんと仲良くなりたいんだ!今も一緒に回ったけど、楽しかったし」
「まあ、オレもカイヤナイトとなら楽しかった…」
「それなら明日と明後日は一緒に回ろう!」
「ん、わかった…」
そう返事すると、カイヤナイトは喜んでくれた。
オレと仲良くなりたいなんて、すげー変わってるけど、ストレートにそう言ってもらえて、正直嬉しかった。
「コウ、……と、ドルチェじゃないか。珍しい組み合わせだね」
「シンジュ」
「うわっ、ダイヤモンドがニヤニヤしてる。気持ち悪っ…」
オレとカイヤナイトが話してるところにダイヤモンドが来た。しかも、ニヤニヤとしながら、オレに近づいてくる。
「俺に向かって、気持ち悪いとか言うのはドルチェくらいだよ?」
「言ったけど、何でそんなに嬉しそうなんだよ!」
「ごめんね。ドルチェくん、シンジュはちょっと変わったところがあるんだ」
「ちょっとじゃねェだろ!かなりの変人だろ」
「変人なんて、初めて言われた!もっと言ってくれる?ドルチェ」
「怖っ!」
「あはは!」
クラスのヤツらとなんて、仲良くなれるわけねェと思ってた。話も合わないとも。
でも、こうして普通に話せたんだな…オレも。
「シンジュ。明日と明後日の自由行動なんだけど、ドルチェくんも一緒でいいよね?」
「いいよ。でも、俺達女子が多いお店とかも行くけど、ドルチェは大丈夫?」
「それくらいは平気。オレも行きてェ店があんだよ。アリスが興味示したところが…」
「アリス?ドルチェの口から女性の名前が出るなんて、面白いな。誰?ドルチェとはどんな関係?年齢は?」
うっかりとアリスの名前を出したら、ダイヤモンドが次々にオレに質問をしてくる。困ったオレは、無言で逃げた。しかし、ダイヤモンドは諦めるどころか、追いかけてくる。
「ドルチェ!教えて」
「教えねェ!」
そんなオレらを見て、カイヤナイトは笑っていた。いや、笑ってねェで、ダイヤモンドを止めてくれよ!
夕食を食べ終わり、昨日と同じように今日の分のレポートを作成する。
時間を見ずにオレは、しばらく集中していた。
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