School Trip (前)
その夜。
談話室には、カルロ、リク、タスク、ハルクがいた。ドラは自室、ライは朝から出かけており、まだ帰ってきてはいない。
「そういえば、そろそろ修学旅行か。お前は行かないんだっけ?」
「……行く」
「そっか。やっぱり行かないか……え?」
「だから、行くって」
ムッとしながらのハルクの返答に、カルロが驚きの声を上げた。
「ええ!?あんなに行きたくない、面倒くさいって言ってたのに…。ま、お前が行きたくない理由は一つしかないよね。四日もアリスと会えないし」
「カルロ、うっせェ!」
「兄さん、からかわない。それで修学旅行の準備は終わったの?ハルク」
「うん。それはすぐに終わった。リク兄」
「ん?」
「おみやげって、何を買ったらいい?」
ハルクにたずねられて、リクはしばし考える。
自分がハルクと同じ小学生の時にあった修学旅行のことを。
「おみやげ?うーん、僕も修学旅行の時はあまり買わなかったな。買っても、クロッカスやボルドー達にその地域限定のお菓子を買ってきただけだし。周りも家に買って帰る子達の方が少なかったかな。海外旅行ばっかり行くような子供ばかりの学園だし。でも」
「でも?」
「おみやげを渡したい相手のことを考えながら探せば、きっと見つかるんじゃないかな?」
「見つかるかな…。変なの買って、アイツに嫌われたくねェ」
不安がるハルクにリクは微笑む。
「大丈夫だよ。その人なら、ハルクが選んでくれたものなら喜んでくれるよ。大事なのは気持ちなんだから。ね?」
「……アイツも同じようなこと言ってた。ありがと。リク兄」
そう言って、顔を明るくさせたハルクは談話室を出て行った。二人はそれを見送る。
「少し前まで嫌がってたアイツが急に行くと言い出すとはね…」
「そんなハルクを説得出来るのは…」
「アリスだろうな。じゃなきゃ、あんな素直に行くって言い出すわけないから。あの暴れん坊は」
「タスク、何か知ってる?」
急に話をふられたタスクが読んでいた雑誌から顔を上げる。いつもなら会話に入ってくるタスクが珍しく今まで黙っていた。
「アイツが修学旅行に行くって言い出した理由?そんなのアリスにおみやげを買ってきてって言われたからに決まってんじゃん。今の話からすぐわかったし。それ以外にある?」
「確かに修学旅行に行かないと、おみやげは買えないからな」
「アリスさんなりに気を使ったんじゃないかな」
「それよりハルクのヤツ、毎日アリスに電話かけてくるよ」
「電話?ああ。俺の時もクラスのやつが彼女にかけてたことあったな」
「毎日顔を合わせることが出来ないなら、声は聞きたいとか考えてるはずだし」
「それって、タスクもリコリス嬢に旅行先から電話したことあるだろ?」
「そ。その時はまだ婚約者じゃなかったけどね」
カルロとリクは思った。
この二人、血が繋がっているだけにやることはそっくりだと。
.