Alice's Birthday

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お風呂を終えて、部屋に帰って来た私は、家族やリク様からもらったプレゼント達を見ながら、ニヤニヤしていた。ニヤニヤしないわけがない。今日くらいいいわよね!私の誕生日なんだし。誰にも迷惑かけてないんだし。うふふ。

すると、そこへベゴニアとスマルトが部屋にやって来て、二人からも誕生日プレゼントをもらった。流石に夜遅いから、ケーキとかはなかったけど、今度のお休みに一緒に食べに行くことを約束して、別れた。





翌日。
私はいつも通りにお坊っちゃまの部屋に向かう。



「おはようございます!」

「おはよ。お前、なんかテンション高くねェ?」

「そうですか?昨日、誕生日だったからですかね」

「誕生日?」


お坊っちゃまが不思議そうな顔をする。



「はい。私、昨日が誕生日なので。16歳になりました」

「じゃあ、昨日の夜にリク兄に呼ばれたのって…」

「リク様?はい。私のお誕生日を覚えてくれたみたいで、お祝いしてもらいました!家族や仲良くしてる子達からもプレゼントをもらって、昨日は素敵な日でした!」

「……」

「お坊っちゃま?」


何故か黙ってしまうお坊っちゃま。
声をかけると、お坊っちゃまは私に言った。



「アリス。オレもお祝いする…」

「お坊っちゃまが?大丈夫ですよ!」

「するって!」

「お坊っちゃまは気にしなくて大丈夫ですから。ほら、早く行かないと学校に遅れちゃいますよ!」

「いや、だから、オレ…!」


鞄を持たせ、お坊っちゃまを部屋から追い出す。

お坊っちゃまは気にしなくてもいいのに…。私の誕生日は関係ないんだし。誕生日って、話さない方が良かったかな?……ま、いいか。そのうち忘れるわよね。お坊っちゃまだし。

さて、お仕事、頑張るぞー!





それから数日間。
お坊っちゃまの帰りが急に遅くなった。しかも、ご飯まで食べて帰ることが増えているのだ。お坊っちゃまは友達の家に行ってるだけとか言っていたけど、本当かな?今まで友達の家に遊びに行ったことなんてなかったのに…。



「アリス。どうかした?眉間にシワ寄せて」

「最近、お坊っちゃまの帰りが遅いのが気になって…」

「ああ。そういえば、そうね。いつも真っ先に帰って来てたのに」


今日はお休み。
約束通りにベゴニアとスマルトの3人で街に食べに来ていた。土曜日で混んでいたけど、ベゴニアが予約してくれていたから、待たずに入れた。
注文はしているから、あとは料理が来るのを待つだけだ。



「前からそうなの?」

「前は遅かったわよ。荒れてた時期だったし。アリス達が屋敷に入って来た辺りから早く帰って来るようになったんじゃない?」

「そうなんだ…」

「というか、今日はあんたの誕生日をお祝いしてるんだから、ハルク様のことは今だけは置いておきなさい」

「そうよ。今はアリスのお祝いで来てるんだから」

「うん。そうだよね!」


そこへ料理も届いたから、お坊っちゃまのことは一旦考えるのをやめた。

料理を食べた後はショッピングもした。欲しかった服も買えたし、三人でお揃いの雑貨も買ったりして、楽しい時間を過ごせた。





夕方。
部屋に戻って、着替えていると、内線が鳴った。相手はアガットさんからで、今からお坊っちゃまの部屋に来て欲しいと言われた。
特に何もないから、取りあえず向かってみることにした。



「失礼します」


ノックしてから、部屋に入る。中にはお坊っちゃましかいなかった。



「アリス…」

「お坊っちゃま。私、部屋に来て欲しいとアガットさんに言われたんですが」

「……」


アガットさんはいなかった。
確かにお坊っちゃまの部屋に来て欲しいと言ってたのに。アガットさんはいないのなら、何で部屋に来るようにって言ったんだろう?



「お前に用があるのは、アガットじゃなくて、オレ…」

「お坊っちゃまが?」

「そう。これ、やる…」


そう言って、渡されたのは、透明な袋に入ったクッキー。キレイな形のものといびつな形のものをしているのがそれぞれの袋に入っていた。



「クッキー。お坊っちゃま、もしかして、作ったんですか!?」

「……うん。友達に習いながらだけど」


恥ずかしいのか顔をそらしながら、お坊っちゃまが言った。

だから、帰りが遅かったんだ。
あれ?でも、友達って女の子??お菓子作りを手伝うなんて、男の子じゃないわよね。



「言っておくけど、リコリスは友達だからな!」

「リコリス?その子、女の子ですよね…」

「そう。タスク兄の婚約者。タスク兄と婚約する前から、リコリスは友達だから。それ以外ないからな!」


そうなんだ。
でも、何で私にそんな細かく説明するんだろう?



「お坊っちゃまが作ったのは、このいびつな方でしょ?」

「……うっ、下手くそで悪かったな。食べたくなかったら、リコリスの方を食べればいいじゃん」


このキレイな方のはその女の子が作ったのか。
しかし、私は形がいびつな方のクッキーを手に取り、口にいれる。



「もぐもぐ。…んー。確かに形はいびつでしたけど、味はおいしいですよ」

「……無理にお世辞なんか言わなくても」

「お世辞じゃないですよ。形はいびつでも、私のために作ってくれたんでしょう?気持ちが込められているんですから、まずいわけないじゃないですか」

「……っ!」

「おいしいですよ。お坊っちゃま…」


私はお坊っちゃまの作ったクッキーを食べる。
きっと今まで料理自体したことなかったはずだ。家には作ってくれる料理人がいるから。それなのに、私のために手作りのクッキーなんて作って、指も絆創膏だらけで。
怪我をしても、やめなかったのは私に渡すためだろう。



「自分で作るまで全然わかんなかったけど、お菓子作りって、かなり、いや、結構大変なんだな…」

「そうですね。私もお坊っちゃまくらいの頃から作り始めましたけど、最初は失敗ばっかりでしたよ。でも、喜んで食べてくれる家族の顔が見たくて、作り続けました!」

「……アリス。いつもありがと。あと」

「あと?」

「遅くなったけど、誕生日おめでとう…」

「ありがとうございます…」


私がお礼を言うと、お坊っちゃまは照れたように笑った。

その後、アガットさんが部屋に戻って来て、私にケーキを出してくれた。どうやら街まで行って買って来てくれたらしい。アガットさんにも誕生日のことを謝られてしまったけど、私は気にしないでくださいと答えた。

ちなみにケーキは三人で仲良く食べた。こちらもおいしかった!

でも、お坊っちゃまは、何か物足りなさそうな顔してたけどね。





【END】
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