Alice's Birthday

この屋敷に勤めて、半年が経った。
色んなことあったけれど、私は今日も元気に働いています。

そして、今日…10月4日は私の誕生日。
誕生日だからといって、お休みになるわけではないけれど。今日は特に何事もなく、普通の日だった。何かあるよりは平和が一番なんだけどね。


その夜。
お坊っちゃまの洗濯物を持って、お坊っちゃまの部屋に戻ると、ドアの前にリク様がいた。



「リク様?」

「アリスさん、丁度良かったです」

「お坊っちゃまに何か?すぐ呼びましょうか?」

「いえ、ハルクではなく、アリスさんに用があって」


リク様が私に用?何だろう?



「私、ですか?」

「はい。今から僕の部屋に来られませんか?」

「少し待ってもらっても大丈夫ですか?この洗濯物だけしまってから、すぐにリク様の部屋に行きますから」

「わかりました。部屋で待ってますね」


そう言って、リク様は行ってしまった。
私もこれが終わったら、そろそろ部屋に帰ろうと思っていた。誕生日だし、今日だけは早めに帰ってもいいよね。他に仕事もないし。
この洗濯物だけしまったら、お坊っちゃまに挨拶して、リク様の部屋に行こう。

数分後。
洗濯物をたたみ、しまい終える。終わった。リク様に呼ばれてるから、行かなくちゃ。
ベッドの上で漫画を読むお坊っちゃまに声をかける。



「それじゃあ、お坊っちゃま。私、そろそろ上がりますので」

「もう?」


顔を上げて、時計を見るお坊っちゃま。時刻は、19時50分。



「はい。ちょっと呼ばれてるので。それでは、おやすみなさい。また明日」

「おやすみ…」


一礼して、お坊っちゃまの部屋を出た。えっと、リク様の部屋は確か…。

すぐに移動して、リク様の部屋の前に立ち、ノックする。



「失礼します。遅くなってすみません」

「アリスさん、すみません。いきなり呼んでしまって…。どうぞ。中に入ってください」


リク様が部屋に入ってくださいと私に言ってきた。え、部屋の中に!?
でも、リク様が用もなく、私を呼ぶわけないし…。一体、何だろう?



「お邪魔します…」


中は相変わらずキレイに片づいている。流石はリク様だわ。でも、私、リク様が片付けが苦手でもいいとは思ってしまいそう。

お坊っちゃまなんて、気づいたらベッドの上とか床に制服を脱ぎ散らかしてるのよね。注意しても、むーって顔するし。でも、流石に下着は散らかってないのよね。一度洗ったパンツが落ちてたから、拾おうとしたら、「自分でやる!」って顔を真っ赤にしながら奪われたし。恥ずかしがってたのかな?でも、パンツくらい何とも思わないけどな。



「お誕生日おめでとうございます」

「え…」


リク様が私にプレゼントを渡してきた。思わず私は目を丸くした。
今、誕生日おめでとうって言ったよね?



「覚えてくれていたんですか…?」

「忘れるわけないじゃないですか。僕のお祝いしてくれた時にアリスさんの誕生日を聞いて、その時から何か渡そうと考えてました」


嬉しい…。
まさか、リク様が私の誕生日をお祝いしてくれるなんて思わなかったし。



「ありがとうございます…!開けてみてもいいですか?」

「はい。気に入ってもらえたら、いいんですけど」


リク様が私のために選んでくれたんだもの。何だって、私は嬉しい。

入っていたのは、ブックカバーとブックマーク。
ブックカバーは、本革のしっかりした無地とチェック柄の二種類。

ブックマークは、4つとも花の形のオシャレなものだ。一瞬、チェーンがあったからブレスレットかと思ったけど、よく見たら、ブックマークって書いてあった。
しかも、春夏秋冬の花だから、季節で使い分けてみてもいいかもしれない。こんなタイプのブックマークは初めて見た。私、紙の栞みたいなのしか使ったことなかったし。



「僕がよく使っているメーカーのブックカバーなんです。アリスさんも本を読むと聞いていたので。ブックマークも色々あったんですけど、普通のものだとシンプルかと思って、花の形のものが可愛いと思って、それにしてみたんですけど」

「……」

「やっぱりだめでしたかね…」


リク様の顔を曇らせてしまってる!
違う!こんな顔させたいんじゃないのに…。



「違います!嬉しいんです!リク様からお誕生日をお祝いされるなんて思っていなくて、しかも、プレゼントまで用意してもらえるなんて…」

「アリスさん…」

「私、気に入りました!好きな本があって、それにこのブックカバーとブックマークをはさみます!大切に使わせていただきます!リク様、ありがとうございます!!」

「喜んでくれたなら、良かったです。あと一緒にケーキを食べませんか?アリスさんと食べようと思って、買いに行ったんです」

「はい!!」


何て幸せな日なんだろう!
憧れの人に誕生日を祝ってもらえるなんて…。

その後、一緒にケーキを食べて、私はリク様の部屋を後にした。

誕生日プレゼントももらえた上に一緒に食べたケーキも紅茶もおいしかったし!リク様に誕生日を祝ってもらえるなんて、最高の日だわ!また明日からも頑張れる!



.
1/3ページ
スキ