Summer Story

しばらくして、一つ目の映画が観終わった。

いつの間にか悲鳴や泣き声がしなくなったけど、大丈夫かな。お坊っちゃまの方を見ると、私にくっついたまま、お坊っちゃまは眠っていた。



「通りで静かなわけだ…」

「ハルク、寝ちゃいました?」

「はい」

「寝てんの?ハルク。……本当だ。部屋に運ぼうか?」

「そうですね」


私の腰回りにある手を外す。しかし、私の力では外せない。力が強い!イスから立ち上がり、カルロ様が私にしがみつくお坊っちゃまの手を離そうとする。



「こいつ、アリスから離れまいとしてるな。……よし、取れた。部屋に連れてく?」

「そうだね。部屋で寝かせてあげて」


カルロ様がお坊っちゃまを背負う。何かお父さんみたいに見えた。



「じゃあ、俺、ハルクを連れて、そのまま部屋に戻るから。おやすみ」

「おやすみ」

「おやすみなさい」


二人がいなくなり、シアタールームにはリク様と私だけ。本当に二人きり。
二人きり!?

いざ、二人になると、緊張がすごい!ドキドキしてきたし、汗が…。室内は適度に冷房が入ってるはずなのに。



「さて、二本目を観ましょうか?」

「はい。あ、リク様!その前に夜食はどうですか?私、作ってきたんです。良かったら、どうぞ」

「ありがとうございます。いただきますね」


作ってきたものをリク様に渡すと、リク様は受け取って、食べ始めた。

き、緊張する…!リク様のお口に合ったかしら?ああ、怖い…。神様!



「ど、どうですか?合わなかったですかね…」

「おいしいです。夜なのにすんなりと食べられました。スープも体が温まります。優しい味ですね」

「!!……お口にあったなら、良かったです…」


良かったよー!リク様がおいしいって言ってくれた。もう悔いはないわ。

それから私とリク様は、朝までホラー映画を観た。

流石に4本目を観てる途中で睡魔が襲って、つい寝てしまったけれど。

でも、こうしてリク様と二人で映画を観られるなんて、ここに勤め始めた時は思いもしなかったな。



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