Fellow

その時、店のドアが開く。営業中の看板は出していない。ドアには貸切の貼り紙が貼ってあるはずだ。それなのに店に誰かが入ってきた。入って来たのは、20代くらいの若い女だった。最初に動いたのは、店のオーナーであるオロンジュ。



「すみません。今日は貸切なんですよ。営業は明日になりますので」

「……」

「お客様?」


その女は何も言わない。言わないが、ある一点を見つめていた。その先にいたのは、ルージュだ。



「オパール…」

「おれは“オパール”じゃない」

「嘘よ!あたしにはわかる!あなたがオパールだってことは…」


ルージュの演じるオパールの熱烈なファンのようだ。おそらくずっと尾けて来たのだろう。女の見つめる先が変わった。同じ芸能人であるローズを見ていた。



「オパール。あたしがいるのに、なんでこの女と一緒にいるの!」

「ローズは友人だ。それにおれはきみを知らない。だから、誰といてもきみには関係ない」

「オパール!」

「うるさい。黙れ」


そう言い、グリがいつの間にか女の背後に回り、手刀を下ろす。すると、女は気絶した。

気を失った女を見つめていると、ローズが呟く。



「たまにいるのよね…。こういう子」

「……」

「普通に応援してくれるファンの子達もいれば、一部私達のプライベートにまで追いかけてくる子もいるのよね。テレビでは見せない姿を見て、自分だけしか知らないと優越感に浸る。今回はルージュだったけど、私も他人事じゃないわ」


芸能人も色々と大変なんだろう。今回はファンだったが、売れると記者につきまとまれることもあるだろうし。



「それにしても、ブロンの能力はまだ健在しているんですね…」

「健在してても、少し先しか視えないよ。オレ」


どうやら酔いはさめたようだ。だけど、また飲むかもしれないから、ブロンを見ておくか。



「それよりこの子、どうする?」

「大丈夫。部下を呼んだから」


その時、スタッフ側のドアから誰か入ってきた。ここのスタッフでもあり、オロンジュの部下だった。



「休みに悪いね。この子を頼んでいいかな?」

「いえ、大丈夫です。どこに連れて行きますか?」

「適当なところに置いてきて。なるべくはここから離れたところがいいな。あと、ここでの記憶も消しておいて」

「わかりました」


オロンジュの部下が気絶した女を抱えて、スタッフ側のドアから再び出て行った。

しばらくして、解散となった。流石にあの後も飲もうっという気にならなかった。また飲む約束をして別れた。
オパールとローズは、それぞれタクシーに乗って帰って行った。オロンジュは片付けをしてから帰ると言い、店に残ったままだ(ちなみに自分達で飲んだもの、食べたものはすべてちゃんと片したし、お金も払った)

帰る場所が同じ俺達4人。しかし、全員酒を飲んでいるため、車の運転は出来ない。しかも、俺は来る前に車で来たことをすっかり忘れていた。



「誰がする?運転」

「誰が運転しても、飲酒運転になるな」

「捕まるわけには行かないよね」

「当たり前だ。アメジスト様の顔に泥を塗る気かよ!」

「ノワールの言うとおりだよ。アメジスト様の信頼は失いたくない」


すると、今まで黙っていたジョーヌが口を開く。



「こうなるんじゃないかと思いまして、代わりになるドライバーに連絡を取って、呼んでおきました!」


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