Affection

「アリス。これから街で買い物に行こうぜ!」

「お坊っちゃま。出かける暇があるなら、少しは勉強をしたらどうですか?期末試験、中間試験よりも成績が下がってましたよね?」

「うっ。買い物に行ったらやるって!なあ、行こうぜ!」

「そう言って、いつもやらないですよね?お坊っちゃまは…」

「今日はするって!ほら、アガットを車で待たせてるから、早く行こう!」

「…わかりました」


ハルクに手を引かれて、アリスは玄関の方へ歩き出す。それを上からじっと見つめるグリ。



「……」

「グリ。何を見ているんですか?」


ジョーヌがグリに声をかけた。すると、グリが無言で指を差す。差した先には、ジョーヌの部下であるメイドのアリスと彼女が世話係をしているアメジストの息子の一人であるハルクがいた。



「アリスとハルク様ですね。あの二人は何だかんだ言いながらも仲良くやってますね」

「あの二人を見ていたら、どこかで見たことあるような気がするの」

「今見てたからじゃないんですか?」

「違う。うーん!ここまででかかっているんだけど…」

「……。もしかして、あそこの二人じゃないですか?」


今度はジョーヌがとある方向を指差す。差した先には、白と黒と対照的な色の服を着た二人の男の姿。



「クロ!一緒にここに行こう!」

「そんな暇、あるわけないだろ。今は仕事が立て込んでんだよ」

「クロ、仕事のし過ぎは良くないよ!気分転換しなくちゃ」

「仕事を終わらせないと気になって、休めないんだよ」

「えー。せっかくクロが喜んでくれるかと思って、チケットを取ったのにー!」

「……わかった。行く」

「やった!クロはそう言ってくれると思ってたよ!既にアメジスト様とボルドーさんの許可、車の手配は出来てるからね!はーい!出発ー!」

「はあ!?準備周到過ぎだろ!おい!ブロン」


ノワールの腕を掴みながら、駆け出すブロン。仕事モードの時に比べるとかなり印象が違うが、彼の素はこっちだ。しかも、ノワールにだけ甘える。



「……」

「グリはあの二人をアリス達に重ねたんじゃないですか?」

「……そうかも」

「もう少しでアラサーに手が届こうとしてる男が中学生男子と同じ行動してますね。精神年齢はハルク様と変わらないんじゃないですか?ブロンは」

「ブロンはノワール大好きだからね。ノワールも何だかんだ言いながらもブロンには甘いから…」


その様子を見ながら、グリは笑う。彼女はそんな二人が好きだからである。





【END】
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