Ideal

ある日。
ライが屋敷にいる時、執務室から誰か出てくるのが見えた。その人物は常にアメジストのそばについて回っているため、屋敷にいること自体が少ない大変珍しい相手でもあった。

だから、この機会を逃がさないようにライが慌てて駆け寄る。その相手は、アメジストの秘書をしているブロンだった。



「ブロン!」

「おや、ライ様。久しぶりですね。どうしました?」

「次の休み、暇なら俺の相手してくんない?」

「ライ様の相手?……ははっ、お断りします」


にこやかに拒否するブロン。しかし、ライは拒否されたからといって、簡単に諦めるタイプではない。



「なんでだよー!」

「ライ様、まだ未成年じゃないですか。オレが淫行罪で捕まりますし。あと…」

「あと何だよ?」

「一番の理由はオレの好みじゃないので!」

「俺は好みだぜ!ヤれば、好みになるかもしんないし」

「なりません!オレのタイプはノワールみたいなタイプですから」


腕をバツにしながら、ブロンは答える。それにライが質問してくる。



「ノワール?……ってことは、ブロンは男がいいんだ?」

「いいえ。ノワールみたいな女性がいれば、一番ですが、そう簡単にノワールみたいな人は滅多にいませんから」

「ブロンって、本当にノワールのことが好きだよなー。むしろ、好き過ぎじゃね?」

「ええ、好きですよ。大好きです。オレの一番はノワールですから!ノワール優先を許してくれるなら、付き合っても構いません。だけど、付き合う女性って、最初はそれでもいいと言ってくれるんですけど、最後には私を大事にしてよ!…と怒るんですよね。オレ、最初からノワール優先と言ってるのに」

「あ!それ、ちょっとわかるかも。俺もたまにそういうことある!」

「ライ様もですか?」

「うん。あるぜ!こないだもさ…」


何故か話が合い、そこで長話をする二人。そんな二人を見ていたノワールとグリは───。



「あの二人、たまに意気投合するよね?」

「似てるところがあるんじゃないか?ブロンとライ様は」

「あ、似てるかも…」

「しかし、ブロンはいつまでライ様と話してる気なんだ?アイツ、昼食を取りに行くために執務室を出たんだろう…」

「ノワールが食事に誘えば、話すの止めるかもよ」

「止めないといつまでも話してそうだな。アイツは…」


そう言って、ため息をつくノワール。それから二人の元へと向かう。



「何だかんだ言いながら、ブロンには優しいんだから」


グリが小さく笑いながら、そう呟いた───。





【END】
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