Rainy day【後編】

「カルロ兄さん。こんな時間に何?」

「リク。悪いんだけど、朝までアリスをここで寝かせてくれないか?」

「アリスさん?」


リク兄の部屋だった。
確かにリク兄なら、寝ているアリスに手は出したりはしない。カルロの部屋よりはマシだけど!



「寝てる…。兄さん、寝てるアリスさんにちょっかいかけてないよね?」

「してないって!してたら、連れて来ないよ」

「そうだね。ハルクもいるみたいだし、今回は信じるよ。じゃあ、僕のベッドに寝かせてくれる?」

「はいはい。わかりましたよ」


カルロがアリスを抱えながら、リク兄の部屋に入っていくからオレもついてく。アリスをベッドに寝かせると、カルロが部屋を出ようとする。オレはその場に残っていると、リク兄に声をかけられる。



「ハルク?」

「……オレもここに居ちゃダメ?」

「ハルクはそろそろ寝ないと。明日は学校でしょ?」

「そ、うだけど…」


時間は既に0時を回っていた。
離れたくねェよ。だって、オレが部屋に戻ったら、リク兄とアリスが二人きりになっちまうし。何かあるわけじゃないけど、やっぱり二人きりにさせたくない。



「またワガママ言ってるのか?早く部屋に帰るぞ。ハルク」

「リク兄!お願い。静かにしてるから!ここに居させて」


これで断られたら、仕方ない。部屋に帰ろう。リク兄の返事を待った。



「……わかった」

「リク!」


カルロは断ると思っていたんだろう。やっぱりリク兄はカルロとは違う。心が広い。



「彼女を無理矢理起こさなければいいよ。ということで、カルロ兄さん。アリスさんを運んでくれてありがとう。おやすみ」

「ありがと。じゃあな!カルロ」

「ちょっ…!」


カルロが返事する前にオレがドアを閉める。閉めるとすぐにベッド横に座り込む。

すると、リク兄が部屋の電気を消した。机がある方のイスに座り、電気をつけた。部屋の電気を消したのはアリスを起こさない為だろう。



「僕はこっちで本を読んでるから。ハルクも眠たくなったら我慢しないで寝るんだよ?」

「わかった!ありがと」


リク兄は本を手に取ると、ゆっくりと読み始めた。オレは眠っているアリスの寝顔を見つめていた。本当によく寝てる。頬を触っても、全然起きねェし。

起きないからアリスの手を取り、自分の手と合わせてみる。うーん、手の大きさは同じくらいなんだけどな。手を合わせた後に絡めてみる。手は何度か繋いだことあるけど、こうやって眺めることはなかったからな。アリスの手、すげー柔らかいし。ずっと触っていたいくらいだ。


………何か眠い。まだ寝たくない。アリスの寝顔を見てたい、のに…。瞼が重くなってくる。目を開けていられない。

オレはアリスの手を絡めたまま、そのままの状態で眠ってしまった。



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