Rainy day【後編】

そうして、三階に着いた。ここには滅多に来ない。
親父に呼ばれる以外、絶対に踏み入れねェ場所だ。



「親父の部屋や執務室はいないと必ず鍵がかかってるから、流石に鍵がかかっている場所にはアリスも入らないだろう。入る可能性が高いのは、ここかな」


そう言って、カルロが入った部屋の後に続く。そこは本棚が沢山置かれていた。



「うわっ。見てるだけで頭痛くなりそうな本ばっかじゃん…」

「外国語の本だな。親父も本読むのは好きだから。しっかし…」


カルロがジーっとオレを見てくる。すげー何か言いたそうな顔だ。



「兄弟で本を読まないのは、お前だけだぞ。親父の血を引いてるはずなのに」

「別に血は引いても、本は必ず読まなきゃいけないわけでもねェだろ」

「そうだけどさ。本を読めていたら、アリスと話せたんじゃない?」


アイツが本を好きなのは知ってる。前に書斎に一緒に入った時とか、すげーテンション上がってたし。それが可愛かった。

少し前にリク兄と本の話をしてても、すげー楽しそうだった。リク兄も同じ話が出来る相手って、なかなかいなかったのか嬉しそうだったし。そんな二人をオレは遠くから見てることしか出来なかったんだよな。邪魔するのも悪い気がして…。

カルロとかなら平気で邪魔は出来るけどさ。



「さて、いるとしたらここだと思うんだけどね」

「カルロもここに入ったりすんの?」

「俺?たまにあるよ。俺達の書斎にはない書籍ばかりあるし。俺よりリクの方が結構出入りしてるけどね。タスクは来ないけど、たまにドラは来てるな」

「へぇ。……ん?」


何となく奥の方が気になって、向かってみる。すると、毛布の塊があった。何だ?あれ。そう思って、近づくと寝息が聞こえた。

毛布をめくると、アリスが寝ていた。



「……いた」


アリスは本を読みながら、寝ていた。器用だな、コイツ。相変わらず無防備で、もう少し警戒心を持って欲しい。



「やっぱりここにいたね、アリスは」

「アリス、連れてく」


眠るアリスを運ぼうとしたが、運べなかった。でも、ここで寝かせたくなんかねェし。もう一度…!意気込んで背負おうとしたが、結果は同じ。見かねたカルロがオレに聞いてくる。



「お前じゃまだ無理じゃない?代わりに俺が運ぼうか?」

「ヤダ」

「アリスを抱えたまま、階段を降りられるか?引きずったら、彼女は起きちゃうぞ」

「…………。オレの代わりにアリスを運んで」

「了解」


そう言うと、オレと違い、軽々とアリスを抱えた。
悔しい。何でオレ、まだガキなんだよ。アイツが他の誰かに抱えられてる姿なんて見たくなんかねェのに…。


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