Rainy day【前編】

「……すごい雨」


窓の外は、どしゃ降りだった。
傘は玄関ホールに置いてあるけど、使っても濡れるだろうな。こうなったら、戻ったらすぐにお風呂に入ろう。

あ、もうこんな時間だ。私は腕時計を見た。今日は22時になるとロックされてしまうのだ。前にそのことをすっかり忘れて、一晩をここで過ごすことになった。だが、それがバレて、執事長に2時間も説教されたわ…。

しかし、同じ轍は踏まない!前回の私とは違う!



「さて、今日はそろそろ戻りますね。こないだみたいに屋敷から出られなくなる前に!」

「アリス。お前、時計ちゃんと見てんの?」

「見てますよ!腕時計もして、確認しましたし!抜かりはありません。まだ22時前!10分前です!」


私はお坊っちゃまに向かって、自信満々に言った。だが、お坊っちゃまは呆れていた。



「とっくに22時は過ぎてるぜ」

「……え?」


私の腕時計は、まだ21時50分を指してる。
しかし、お坊っちゃまが手にした時計は、22時を回っていた。



「あー!腕時計が止まってる!!何で?!」

「また朝まで出られないな。今日は屋敷にボルドーはいないけど。親父の出張について行ってるから。いたら、また説教コースだったな」

「あの時は辛かったですよ!執事長、私に対して、厳しかったんですから。それより私、朝までどこにいたらいいんですか!?」

「別にここにいれば、いいじゃん」

「だめですよ!私、また書斎を借りて、そこで朝まで…」

「書斎、あれから夜の間だけ鍵かかってるから、鍵ないと入れないぞ。オレ、書斎は使わないから持ってねェし」


鍵!?まさか、前回のことがあったからなの?
お坊っちゃま、本は読まないからな。鍵を持っているのは───



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