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教室に帰んの面倒だな。
さっきの一件で、午後からの授業も出る気になれねェし。コウ達にサボるとメッセを送ってから、授業が終わるまで適当な場所で時間を潰すことにした。

どこに行こうか考えていたら、いつの間にか図書室の前にいた。普段なら入ることはねェけど、何となく足が向いていた。
中に入って、空いてるところにでも座ろうとしたら、そこにタスク兄がいた。



「ん、ハルクじゃん」

「……タスク兄こそ。サボりかよ」

「オレは自習だよ。一人になりたくて、ここに来ただけ。てか、お前。まーたぶっさいくな顔してー。どうした?」


タスク兄が隣に座れという仕草をする。
オレはさっきあったことを聞いてもらいたくて、タスク兄の隣の席に座り、愚痴った。



「アイツだよ!ツツジ!あの陰険二重人格野郎めー!!」

「ツツジ?ああ、シトリン伯母さんの息子か」

「毎回、顔合わせる度にマウント取ってくんだよ!オレ、アイツのことなんかどうでもいいし!放っておいてほしいくらいなのに!すげーうぜェ」

「オレと同じ学年にもヒマワリがいるけど、絡んだりしてこないよ?異性なのもあるし、ヒマワリがおとなしいタイプだからもあるだろうけどさ」


ツツジと同じクラスだったら、絶対に登校拒否してた。他クラスだから、まだマシだけど。
たまに今日みたいに鉢合わせることもある。そんな日は最悪だ。



「ツツジがお前に絡むのは他にもあるけどな」

「は?」

「何でもねー。ハルク。お前、こないだはトッキーの弟と口喧嘩してただろ?」

「あれは…!」

「アリス絡みだっけ?入学する前に女を争ってたとか噂になってたけど」

「争ってなんかねェよ!」


スーパーでの一件を見られてたのか。あの場所で誰かに見られると思ってなかった。あれ、入学する前なのに…。
本当に誰がどこで見てるかわかんねェな。



「どうせ、アリスが自分以外の男と仲良く話してたから嫉妬したとかだろ?お前、アリスが関わると心が狭いもんなー」

「タスク兄こそ、他人のこと言え……痛た!痛てェから!」


つい本音をもらしたら、プロレスの技をかけられた。すぐに技をかけてくんのやめてほしい!



「んなもん、当たり前だろ。オレのことよりも、お前だって。三年のオレのところまで色んな噂は回って来てんだから。特にお前関連が多い。ドルチェの名前は、お前が思っているより注目されんだよ。良くも悪くもな」

「なんでオレ?何もしてねェけど」


そう返したら、タスク兄がすげー呆れた顔でオレを見てくる。だから、なんで!?



「お前、そういうところはアリスと似てるよな。自分に関して鈍感なとこ」

「オレ、あんな鈍くねェよ!」

「いや、マジで似てきた。一緒にいるせいかもな」


いくら否定しても、タスク兄は信じてくんねェ。オレはアリスよりは鈍くねェのに!アリスはマジで鈍すぎる。



「アリスから離れたら、似なくなるんじゃねェ?ちょっと離れてみたら?」

「……ヤダ。今、離れてるし。これ以上、離れたら、耐えらんねェ」

「離れる気はゼロか。婚約者が出来たら、離れなきゃなんないかもしんねェよ?」

「婚約者なんかいらねェし」

「お前が駄々こねたって、婚約者は決まんだよ。そろそろアリス以外に目を向けておいた方がお前のためなんだからさ」


アリス以外、どうでもいい。
アイツとはずっと傍にいるって、約束したんだから、離れるわけねェんだし。



「アリス以外の女、興味ねェもん」

「本当に真っ直ぐだねー、ハルクは。お兄ちゃんのオレが褒めてあげよう。イイコ、イイコ!」


そう言って、オレの頭を撫でるタスク兄。そこまで子供じゃねェんだからやめろ。



「やめろよ。ガキじゃねェし!」

「オレからしたら、ガキだよ」

「もう撫でんなよ!」


そんなオレ達のやり取りは、他のヤツらにも見られていたらしい。ご丁寧にも写メまで撮られていた。しかも、オレが頭を撫でられているところを。
更には女子達の間でその写メが回っていたとも…。



「見て。図書室でドルチェ兄弟が可愛いやり取りしてる!」

「滅多に見られないよ!こんな表情は」

「やっぱりイケメン同士は絵になるわね…」

「あの兄弟だからでしょ。他じゃこうはならない」

「確かに!」


そんな女子達の会話など知らないオレは、その後もタスク兄と授業が終わるまで図書室にいた。





【END】
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