If……
学園に来ると、ハルクは来ていない。
翌日、数日、一週間、二週間、一ヶ月……経っても来なかった。こんなに長期で休んだことは一度もなかったのに。
アイツと仲の良いヤツらに聞いても、わからないらしい。連絡もまったく取れないようだ。
「アイツに聞いてみるか…」
オレはティーデに連絡を取ることにした。
数日後。
ティーデと連絡を取り、ドルチェ家にやって来た。
久しぶりに来たら、雰囲気が変わっていた。アリスがいた頃は、明るかったはずなのに、どこか陰鬱な雰囲気を感じた。
そんなオレは、今ティーデと一緒に地下牢にいるというハルクに会いに来た。
鍵を開けて、重い扉を開けると、地下に続く階段があり、降りる。すると、少し離れたところから音が聞こえた。
ガン!ガン!ガシャーン!!
蹴りつける音、何かが割れた音などが地下内に響く。
「すげーな…」
「これ、ずっとだよ」
「ずっと?」
「そう。最初の頃はもっと激しくて、ハルクがずっと叫んでた。アリスの名前をずっと…」
「そのアリスは?」
本当はアリスの居場所を知っているが、知らないフリして聞いてみた。
「もういないよ。パパがアリスを辞めさせたの。それを聞いたハルクが探しに行くってきかなくて、怒ったパパが地下牢に入れたの。カルロ達もハルクの元へ来てたんだよ。でも、ハルクは拒んだ。“アリスがいい。アリスをここに連れてきてくれ”って…」
「心配してる家族よりも女かよ」
アリスは今うちにいる。ティーデにも言うつもりはない。
あんな状態のアリスを会わせるわけには行かねーし。ドルチェ家のヤツらには会わせたくない。少しずつだが、回復に向かって来てるアイツをこれ以上、傷つけさせたくねー。
話してる内にハルクのいる牢の前に来た。ティーデに頼み、二人だけにさせてもらった。
すると、「……わかった」と言って、ティーデは席を外してくれた。
「なんだよ、リゼル。オレを笑いに来たのかよ…」
「お前に聞きてーことがあんだよ。アリスに手を出したのはお前か?」
「……」
「答えろ!」
「……………オレのモンに手を出して悪ぃかよ」
ハルクがまるで自分の所有物のように言った。そんなわけねーだろ!アリスはコイツの別の兄弟に想いを寄せていた。
「アリスは合意したのかよ!」
「してねェよ。アイツ、鈍いから。好きだって言っても全然伝わらなくてさ。その鈍感を利用して、関係を持たせて、何度も抱いた。身籠れば一緒になれるはずだったのに…。親父がオレからアリスを引き離した!引き離すだけじゃなく、アリスに手を出した!!」
コイツが手を出したから、アリスは笑わなくなっちまったのに!更にはコイツの父親にまで…!
「お前のせいか!お前のせいで、アリスは…」
「てか、さっきからアリスのことを聞いてくるってことは、居場所、知ってるだろ?教えろよ!!どこにいんだよ!アリスは」
「知ってても誰が教えるかよ!」
頭にきたオレは、そこから離れた。アイツはオレに向かって、叫んでいたが無視した。
「アリスの居場所、教えろ!!アリスはオレのモンだ!ずっと一緒だって約束したのに!アリスは姿を消した。なあ、どこにいんだよ!ここに連れて来いよ!!」
誰が言うかよ。アリスをあんな目に遭わせた帳本人なんかに会わせねーよ!
「アリスに会わせろ!アリスがいねェと、オレは…!」
バン!
地下のドアを思いきり音を立てて閉めた。階段のところにティーデはいた。
「ティーデ。ありがとな」
「ううん、それはいいけど。ハルクが叫んでるよ?」
「放っておけよ。さ、上に上がろうぜ」
ティーデを促し、オレは地下を後にした。
オレを見送ろうとするティーデに挨拶しようとした時、誰かに声をかけられた。
「あれ?君はトキワの弟の…」
まずい。兄貴の友達のヤツだ。コイツとは避けねーと。話しかけられる前に逃げるとするか。
「ティーデ。じゃあな。今日はありがとな!」
停めてあったうちの車に急いで乗り込み、家へと帰る。
30分後。
家に着き、真っ直ぐにアリスのいる部屋に向かう。すると、アリスは窓を開けて、その前に立っていた。
「アリス!」
「リゼル。私ね、考えたの…」
「話、聞いてやるから、まずはそこから離れろ!」
「聞いて。私、汚れが落ちないなら、どうやったら落ちるかを考えて、ようやく見つけたの」
「アリス、頼む!頼むから、こっちに来てくれ」
窓から離そうと声をかけるが、アリスは離れない。
「死ねば、汚れは落ちるって」
「やめろ!アリス」
「だから、私、ここから飛び降りる。今までありがとう。リゼル、じゃあね」
そう言って、窓の向こう側にアリスは消えた。
「アリス!!」
慌てて駆け寄り、アリスの手を掴むが、アリスはそれをかわして、ヒラリと下へ落ちていく。
「アリスーーーーーーーーー!」
オレの叫び声が辺りに響く。
そうして、アリスは地面に横たわる。
「……これで私は…逃れられる。ああ、最後にリク様に会いたかっ、た……な」
大好きな相手の笑顔を浮かべた後、アリスの意識はなくなった───。
【END】
翌日、数日、一週間、二週間、一ヶ月……経っても来なかった。こんなに長期で休んだことは一度もなかったのに。
アイツと仲の良いヤツらに聞いても、わからないらしい。連絡もまったく取れないようだ。
「アイツに聞いてみるか…」
オレはティーデに連絡を取ることにした。
数日後。
ティーデと連絡を取り、ドルチェ家にやって来た。
久しぶりに来たら、雰囲気が変わっていた。アリスがいた頃は、明るかったはずなのに、どこか陰鬱な雰囲気を感じた。
そんなオレは、今ティーデと一緒に地下牢にいるというハルクに会いに来た。
鍵を開けて、重い扉を開けると、地下に続く階段があり、降りる。すると、少し離れたところから音が聞こえた。
ガン!ガン!ガシャーン!!
蹴りつける音、何かが割れた音などが地下内に響く。
「すげーな…」
「これ、ずっとだよ」
「ずっと?」
「そう。最初の頃はもっと激しくて、ハルクがずっと叫んでた。アリスの名前をずっと…」
「そのアリスは?」
本当はアリスの居場所を知っているが、知らないフリして聞いてみた。
「もういないよ。パパがアリスを辞めさせたの。それを聞いたハルクが探しに行くってきかなくて、怒ったパパが地下牢に入れたの。カルロ達もハルクの元へ来てたんだよ。でも、ハルクは拒んだ。“アリスがいい。アリスをここに連れてきてくれ”って…」
「心配してる家族よりも女かよ」
アリスは今うちにいる。ティーデにも言うつもりはない。
あんな状態のアリスを会わせるわけには行かねーし。ドルチェ家のヤツらには会わせたくない。少しずつだが、回復に向かって来てるアイツをこれ以上、傷つけさせたくねー。
話してる内にハルクのいる牢の前に来た。ティーデに頼み、二人だけにさせてもらった。
すると、「……わかった」と言って、ティーデは席を外してくれた。
「なんだよ、リゼル。オレを笑いに来たのかよ…」
「お前に聞きてーことがあんだよ。アリスに手を出したのはお前か?」
「……」
「答えろ!」
「……………オレのモンに手を出して悪ぃかよ」
ハルクがまるで自分の所有物のように言った。そんなわけねーだろ!アリスはコイツの別の兄弟に想いを寄せていた。
「アリスは合意したのかよ!」
「してねェよ。アイツ、鈍いから。好きだって言っても全然伝わらなくてさ。その鈍感を利用して、関係を持たせて、何度も抱いた。身籠れば一緒になれるはずだったのに…。親父がオレからアリスを引き離した!引き離すだけじゃなく、アリスに手を出した!!」
コイツが手を出したから、アリスは笑わなくなっちまったのに!更にはコイツの父親にまで…!
「お前のせいか!お前のせいで、アリスは…」
「てか、さっきからアリスのことを聞いてくるってことは、居場所、知ってるだろ?教えろよ!!どこにいんだよ!アリスは」
「知ってても誰が教えるかよ!」
頭にきたオレは、そこから離れた。アイツはオレに向かって、叫んでいたが無視した。
「アリスの居場所、教えろ!!アリスはオレのモンだ!ずっと一緒だって約束したのに!アリスは姿を消した。なあ、どこにいんだよ!ここに連れて来いよ!!」
誰が言うかよ。アリスをあんな目に遭わせた帳本人なんかに会わせねーよ!
「アリスに会わせろ!アリスがいねェと、オレは…!」
バン!
地下のドアを思いきり音を立てて閉めた。階段のところにティーデはいた。
「ティーデ。ありがとな」
「ううん、それはいいけど。ハルクが叫んでるよ?」
「放っておけよ。さ、上に上がろうぜ」
ティーデを促し、オレは地下を後にした。
オレを見送ろうとするティーデに挨拶しようとした時、誰かに声をかけられた。
「あれ?君はトキワの弟の…」
まずい。兄貴の友達のヤツだ。コイツとは避けねーと。話しかけられる前に逃げるとするか。
「ティーデ。じゃあな。今日はありがとな!」
停めてあったうちの車に急いで乗り込み、家へと帰る。
30分後。
家に着き、真っ直ぐにアリスのいる部屋に向かう。すると、アリスは窓を開けて、その前に立っていた。
「アリス!」
「リゼル。私ね、考えたの…」
「話、聞いてやるから、まずはそこから離れろ!」
「聞いて。私、汚れが落ちないなら、どうやったら落ちるかを考えて、ようやく見つけたの」
「アリス、頼む!頼むから、こっちに来てくれ」
窓から離そうと声をかけるが、アリスは離れない。
「死ねば、汚れは落ちるって」
「やめろ!アリス」
「だから、私、ここから飛び降りる。今までありがとう。リゼル、じゃあね」
そう言って、窓の向こう側にアリスは消えた。
「アリス!!」
慌てて駆け寄り、アリスの手を掴むが、アリスはそれをかわして、ヒラリと下へ落ちていく。
「アリスーーーーーーーーー!」
オレの叫び声が辺りに響く。
そうして、アリスは地面に横たわる。
「……これで私は…逃れられる。ああ、最後にリク様に会いたかっ、た……な」
大好きな相手の笑顔を浮かべた後、アリスの意識はなくなった───。
【END】