小ネタ集16
【タスクとハルク】~時々、アリスとリコリス~
とある休日の朝。
玄関口でタスクがハルクの手を掴んで、車に乗せようとしていたが、ハルクはそれを拒んでいた。
「ハルク、行くぞ!」
「ヤダ!オレ、行きたくねェし」
「何で嫌がんだよ!せっかくリコリスがお前のことを連れて来て欲しいって言ってるんだぞ!」
「一人で何か行きたくねェし!イチャイチャすんのを前で見なくちゃいけないオレの身にもなってくれよ!」
「……わかった。一人じゃなきゃいいんだな?」
「は?」
すると、タスクはスマホを取り出して、どこかに電話する。そして───
「今どこ?……うん。それなら、今すぐに玄関に来て。そこからなら、1分で来れるよな?拒否権はねェから。……じゃあね」
「??」
それだけを告げて切る。ハルクはわけがわからず、目をパチパチさせるだけ。
「タスク兄、誰に電話したんだ?」
「そのうちわかるって」
すると、こちらへ走ってくる誰かの足音が聞こえて来た。
「タスク様!」
「アリス、こっち!」
やって来たのは、ハルクの世話係のアリスだ。余程急いで来たのだろう。全速力で走って来たのか、息を切らしていて、話すどころではない。
「大丈夫か?」
「はあ、はあっ……だいじょ…う、ぶ……に……はあ…見え……ます…か!?……はあっ」
「……聞いたオレが悪かった」
座り込むアリスを心配するハルクとは対照的に、タスクは「アリス。もうちょい体力つけた方がいいな。次は体力つけることをさせるか」と容赦なく口にして、アリスは恐怖で更に言葉を失っていた。
彼女は運動が苦手なため、体力もない。息を切らしているために、話せるまで時間がかかるので、しばし待つ。
「さて。アリスも来たことだし、出発しようか!」
「え、どこにですか?私、制服なんですけど」
「大丈夫。リコリスの家だから」
「ええ!?私、まだ仕事がありますので、行けません!!」
アリスが逃げようとしたら、タスクが行かせないようにする。
「リコリスに連絡したら、すっごい喜んでたんだよ。これで連れて来なかったら、オレが責められるじゃん。ほら、これを見て」
「……あ」
タスクに見せられたスマホの画面、そこにはLIMEのトーク画面が───
{ハルクが一人じゃヤダっていうから、アリスを連れて行っていい?}
{え、アリスさんも来てくれるの!?嬉しいわ!急いでおいしいお茶菓子を増やさなくちゃ。紅茶もアリスさんが気に入ってくれるものを出さなくちゃいけないし、こうしゃいられないわ!タスク、絶対に二人を連れて来てね(´∀`)ノ}
{了解(`・ω・´)ゞ}
「……………」
「ね?これを見ても行かないなんて言える?」
「……くっ!なんてずるい!私が年下に弱いことを知ってるからって、何て仕打ちなんですかー!」
「どごがだよ!むしろオレは、アリスが羨ましい!リコリスのこんなイキイキとした姿、今まで見たことねェし!!」
「えっ…」
タスクが静かに泣いていた。その姿にアリスは、自分のポケットからハンカチを差し出す。と、そんな二人のやりとりにハルクは呆れていた。
(アリスもタスク兄も何がしたいんだよ。二人でコントでもしてんのかよ…)
だが、アリスがいるならば、二人のイチャイチャを一人で見るよりはマシだと思い、ハルクもリコリスの家に向かうことになった。
しかし。
リコリスがぴたりとくっついた相手は、タスクではなかった。
「お菓子、どうですか!?」
「どれもとってもおいしいです!特にこのケーキは初めて食べましたけど、頬が落ちそうになるくらいおいしくて、やめられません」
「嬉しいです!それ、私の大好きなケーキなんです。アリスさんにそう言ってもらえるなんて…(*´∀`*)ポッ」
「……」
「……」
「紅茶もおいしいですね!今まで飲んだものの中で一番おいしく感じました。これ、ストレートでもいいですけど、ミルクティーにしても良さそうですね」
「本当ですか!?私の一番お気に入りの紅茶で、ストレートでもレモンやミルクをいれても、合うんですよ!アリスさんに気に入っていただけるなんて、とっても嬉しいです!!(*>∀<*)」
目の前に座るアリスとリコリスを見ながら、タスクは悔し涙を密かに流し、ハルクはむっとしながら、お菓子を食べていた。
「あ。タスク、はあくんも遠慮しないでどんどん食べてね!……あの、アリスさん!宜しかったら、この後、一緒にお庭を歩きませんか!?アリスさんもお花が好きだと聞きまして、うちの庭に咲いてるお花を見て欲しくて…」
「はい。是非見てみたいので、案内して欲しいです!」
「はい!!」
リコリスは、婚約者であるタスクではなく、アリスにくっついたのである。キラキラと目を輝かせ話しかけてくるリコリスに、年下から慕われることが嬉しいアリスが嫌がるわけがない。
「リコリスがいつになく、テンション高ェ…」
「オレもここまでテンション高いリコリス、初めて見た。でも、可愛い!可愛いから許す!」
「許しちまうんだ…」
それからアリスとリコリス、その後にタスクとハルクが庭を歩いていた。案内しながら、相変わらずリコリスはアリスから離れない。庭の花を見ては、アリスとリコリスは笑い合う。まるで恋人同士のように…。
「アリスさん」
「はい。何ですか?リコリス様…」
すると、リコリスは上目遣いで恥ずかしそうに言った。
「呼んでみただけ、です。ごめんなさい…」
「……………か」
「か??」
「可愛いです!!」
アリスがリコリスに抱きつく。彼女の中で相当可愛く見えたのだろう。リコリスも最初は驚いていたが、抱きつかれるのが嬉しかったのか喜んでいた。それにハルクは静かに怒る。
「……アリスまで、何やってんだよ」
「オレもハルクの言ってた意味、ようやくわかったわ…」
この日よりタスクは、心に決めた。リコリスと会う時にアリスの話はしないことを。
だが、タスクがしなくても、必ずリコリスが聞いてくるのである。最初は適当にごまかすも、あまりにリコリスがシュンとなるので、タスクは心苦しくて、結局は話してしまうのである。
なので、リコリスの家から帰って来る度にハルクの部屋に来ては、アリスに当たり散らす。
「リコリスが今日もオレの話よりアリスの話を聞きたがる!アリス!オレのリコリスを取んなー!!」
「Σ私のせい!?」
【END】
とある休日の朝。
玄関口でタスクがハルクの手を掴んで、車に乗せようとしていたが、ハルクはそれを拒んでいた。
「ハルク、行くぞ!」
「ヤダ!オレ、行きたくねェし」
「何で嫌がんだよ!せっかくリコリスがお前のことを連れて来て欲しいって言ってるんだぞ!」
「一人で何か行きたくねェし!イチャイチャすんのを前で見なくちゃいけないオレの身にもなってくれよ!」
「……わかった。一人じゃなきゃいいんだな?」
「は?」
すると、タスクはスマホを取り出して、どこかに電話する。そして───
「今どこ?……うん。それなら、今すぐに玄関に来て。そこからなら、1分で来れるよな?拒否権はねェから。……じゃあね」
「??」
それだけを告げて切る。ハルクはわけがわからず、目をパチパチさせるだけ。
「タスク兄、誰に電話したんだ?」
「そのうちわかるって」
すると、こちらへ走ってくる誰かの足音が聞こえて来た。
「タスク様!」
「アリス、こっち!」
やって来たのは、ハルクの世話係のアリスだ。余程急いで来たのだろう。全速力で走って来たのか、息を切らしていて、話すどころではない。
「大丈夫か?」
「はあ、はあっ……だいじょ…う、ぶ……に……はあ…見え……ます…か!?……はあっ」
「……聞いたオレが悪かった」
座り込むアリスを心配するハルクとは対照的に、タスクは「アリス。もうちょい体力つけた方がいいな。次は体力つけることをさせるか」と容赦なく口にして、アリスは恐怖で更に言葉を失っていた。
彼女は運動が苦手なため、体力もない。息を切らしているために、話せるまで時間がかかるので、しばし待つ。
「さて。アリスも来たことだし、出発しようか!」
「え、どこにですか?私、制服なんですけど」
「大丈夫。リコリスの家だから」
「ええ!?私、まだ仕事がありますので、行けません!!」
アリスが逃げようとしたら、タスクが行かせないようにする。
「リコリスに連絡したら、すっごい喜んでたんだよ。これで連れて来なかったら、オレが責められるじゃん。ほら、これを見て」
「……あ」
タスクに見せられたスマホの画面、そこにはLIMEのトーク画面が───
{ハルクが一人じゃヤダっていうから、アリスを連れて行っていい?}
{え、アリスさんも来てくれるの!?嬉しいわ!急いでおいしいお茶菓子を増やさなくちゃ。紅茶もアリスさんが気に入ってくれるものを出さなくちゃいけないし、こうしゃいられないわ!タスク、絶対に二人を連れて来てね(´∀`)ノ}
{了解(`・ω・´)ゞ}
「……………」
「ね?これを見ても行かないなんて言える?」
「……くっ!なんてずるい!私が年下に弱いことを知ってるからって、何て仕打ちなんですかー!」
「どごがだよ!むしろオレは、アリスが羨ましい!リコリスのこんなイキイキとした姿、今まで見たことねェし!!」
「えっ…」
タスクが静かに泣いていた。その姿にアリスは、自分のポケットからハンカチを差し出す。と、そんな二人のやりとりにハルクは呆れていた。
(アリスもタスク兄も何がしたいんだよ。二人でコントでもしてんのかよ…)
だが、アリスがいるならば、二人のイチャイチャを一人で見るよりはマシだと思い、ハルクもリコリスの家に向かうことになった。
しかし。
リコリスがぴたりとくっついた相手は、タスクではなかった。
「お菓子、どうですか!?」
「どれもとってもおいしいです!特にこのケーキは初めて食べましたけど、頬が落ちそうになるくらいおいしくて、やめられません」
「嬉しいです!それ、私の大好きなケーキなんです。アリスさんにそう言ってもらえるなんて…(*´∀`*)ポッ」
「……」
「……」
「紅茶もおいしいですね!今まで飲んだものの中で一番おいしく感じました。これ、ストレートでもいいですけど、ミルクティーにしても良さそうですね」
「本当ですか!?私の一番お気に入りの紅茶で、ストレートでもレモンやミルクをいれても、合うんですよ!アリスさんに気に入っていただけるなんて、とっても嬉しいです!!(*>∀<*)」
目の前に座るアリスとリコリスを見ながら、タスクは悔し涙を密かに流し、ハルクはむっとしながら、お菓子を食べていた。
「あ。タスク、はあくんも遠慮しないでどんどん食べてね!……あの、アリスさん!宜しかったら、この後、一緒にお庭を歩きませんか!?アリスさんもお花が好きだと聞きまして、うちの庭に咲いてるお花を見て欲しくて…」
「はい。是非見てみたいので、案内して欲しいです!」
「はい!!」
リコリスは、婚約者であるタスクではなく、アリスにくっついたのである。キラキラと目を輝かせ話しかけてくるリコリスに、年下から慕われることが嬉しいアリスが嫌がるわけがない。
「リコリスがいつになく、テンション高ェ…」
「オレもここまでテンション高いリコリス、初めて見た。でも、可愛い!可愛いから許す!」
「許しちまうんだ…」
それからアリスとリコリス、その後にタスクとハルクが庭を歩いていた。案内しながら、相変わらずリコリスはアリスから離れない。庭の花を見ては、アリスとリコリスは笑い合う。まるで恋人同士のように…。
「アリスさん」
「はい。何ですか?リコリス様…」
すると、リコリスは上目遣いで恥ずかしそうに言った。
「呼んでみただけ、です。ごめんなさい…」
「……………か」
「か??」
「可愛いです!!」
アリスがリコリスに抱きつく。彼女の中で相当可愛く見えたのだろう。リコリスも最初は驚いていたが、抱きつかれるのが嬉しかったのか喜んでいた。それにハルクは静かに怒る。
「……アリスまで、何やってんだよ」
「オレもハルクの言ってた意味、ようやくわかったわ…」
この日よりタスクは、心に決めた。リコリスと会う時にアリスの話はしないことを。
だが、タスクがしなくても、必ずリコリスが聞いてくるのである。最初は適当にごまかすも、あまりにリコリスがシュンとなるので、タスクは心苦しくて、結局は話してしまうのである。
なので、リコリスの家から帰って来る度にハルクの部屋に来ては、アリスに当たり散らす。
「リコリスが今日もオレの話よりアリスの話を聞きたがる!アリス!オレのリコリスを取んなー!!」
「Σ私のせい!?」
【END】
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