小ネタ集16

【グレンとマシロ】

夕方。
グレンが中庭を歩いている時にベンチで眠る弟を見つけて近づいた。



(……おや。相変わらず気持ち良さそうに眠っているね)


グレンは、マシロの寝顔を見て、小さく笑っていた。

屋敷内では、よくマシロがあちこち眠っているところを目撃されている。ただ眠っているだけなので、使用人達も用がなければ、声をかけないようにと指示されていた。

たまにアリスやアガット達といった世話好きな者達が声をかけることもあるが、マシロは特に嫌がることもなかった。



「マシロ。こんなところで寝ていると風邪を引くよ?」

「……………………グレン兄…」

「ん?」

「ここはあったかくて、気持ちいいから、つい…」

「確かにここは、あたたかいね。でも、夕方にもなれば、寒くなるし。いつまでもここで寝ていたら、風邪を引いてしまうよ。そろそろ起きよう?」

「…………わかった…」

「良い子だね、マシロは」


グレンは、マシロの頭をそっと撫でる。マシロも振り払ったりなどはしない。二人は実の兄弟で、彼らの母親は、芸能界で活躍する人。テレビで観ない日はないというくらいの有名人だ。二人はたまに母親と会うこともある。他の兄弟の母親は、死別していたり、仲が悪かったりしているので、二人の方がかなり特殊なのだ。


そんな二人の姿をたまたま見かけた女の使用人達はというと、興奮していた。だが、大きい声を出さずに、小声で話す。



(今の見た!?)

(見たよ!イケメン兄弟の戯れ!)

(グレン様とマシロ様…。本当に仲良しでいらっしゃるわよね)

(実の兄弟からね。タスク様とハルク様とは、また違うわね)

(あの二人も仲良しじゃないの)

(そうよ。色々な形の兄弟があるのよ!)

(いつまでも見てられるわ…)

(尊い…)


この後、女の使用人達の間で話されたのは、言うまでもない。なお、今日だけでなく、兄弟達のやりとりは毎日、毎日使用人達の間で話されている。

ちなみにアリスは、リクの話以外にはまったく興味を示さない。リクの話の時には、すごい勢いで食らいつくが、それはまた別のお話。




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