Riku's Birthday

そして、誕生日当日。
私は、何故か誰もいないリク様の部屋にいた。


ケーキを完成させた時、クロッカスさんが私のところへ訪れた。
すると、彼は私にリク様の部屋で待機して、リク様が入ってきた時にクラッカーを鳴らしてみたらどうかと提案をしてきた。
最初それを聞いた私は「出来ません」っと拒否した。だって、勝手に部屋に入ったら、リク様は怒るんじゃないの?私、リク様には嫌われたくないんだけど!なのに、クロッカスさんは「リク様はあなたには怒らないので大丈夫です」の一点張り。

仕方なく、リク様の部屋でケーキを持って、待っているわけなんだけど。
リク様の帰ってくる時間だから聞いて、待機を始めて、10分が過ぎた。



それにしても、私は部屋の中を見渡す。

リク様の部屋に入ったのは、今回で二度目だ。初めて入った時は、熱があったからよくは覚えてない。だが、このベッドで寝たことだけは覚えてる。緊張して、寝られなかったもの!いい匂いしたし。
というか、ベッドだけでなく、部屋の中までもいい匂いがする。本棚には本が沢山置いてあるし、それなのにキレイに片付けてられてる。リク様の性格が出ているのね…。
私、いつまでもここにいられるかもしれない。なんなら住みたいわ!

ん?……はっ、やばい!リク様の部屋にいると、思考が変な方向に…。だー!!ここにいたら、私がおかしくなってしまう。
リク様、まだですか!早く帰って来てください!!

その時、部屋のドアが開いた。来た!
私は入ってくる相手に向かって、クラッカーを鳴らす。



「お誕生日おめでとうございます!」

「……」


入って来たのは、リク様だ。しかし、リク様は私を見て、呆然としていた。



「リク様?」

「あ、すみません。部屋を間違えたのかと思ってしまって、驚いてしまいました…」

「ここはリク様の部屋ですよ。驚いてくださったなら、サプライズは成功ですね!」


良かったよー。
黙ってしまったから、怒ってるのかと思っちゃった。勝手に入ってるし。クロッカスさんが私ならリク様は怒りませんって言ってはいたんだけど、そんなの本人じゃないとわからないし。

早速、リク様に座ってもらい、その前にある箱を開けた。箱の中は私がリク様用に作った誕生日ケーキだ。ちゃんと名前入りのプレートもケーキの上に乗っけてある。もちろん食べられる!



「約束の誕生日ケーキです」

「おいしそうですね」

「ありがとうございます。ちょっと待ってください。今、切りますから」


ケーキをカットして、カットしたものをお皿に乗せて、リク様の前にフォークと一緒に置く。すると、リク様はフォークを取り、ケーキを一口食べた。



「………おいしいです!」

「よ、良かったです!リク様、あまり甘いの好きじゃないと聞いたので、ティラミスケーキにしてみたんです。甘くならないように調整するのが少し苦労しましたけど、リク様にケーキをリクエストされましたから頑張れました!」

「僕がケーキを頼んでしまったせいですね。すみません…」

「謝らないでください!勉強になりましたから。リク様には感謝してるんですよ」


何度も失敗し過ぎて、諦めそうになった。でも、リク様が私の作ったケーキを食べたいと言ってくれたから諦めなかった。喜んでくれる顔が見たかったから。

一切れ分カットしたケーキを食べたリク様が言った。



「アリスさん」

「はい。なんですか?」

「このケーキ、残り全部食べてもいいですか?」


私の作ったティラミスケーキを見ながら。

え、でも、リク様、甘いの得意じゃないよね。カルロ様が「リクは辛党だ」って言ってたし。いくら甘さ控えめとは言っても、甘い物なのに…。



「それは構わないですけど、リク様、甘いの自体好きではないと聞きましたよ。大丈夫ですか?」

「平気です。このケーキなら食べられます。それに…」

「それに?」

「僕のために作ってくれたケーキを他の誰かに食べさせたくないんです」

「リク様…」


私は夢を見ているのだろうか。リク様がそんなことを言ってくれるなんて…!
思わず自分の頬をつねってみる。



「……痛い」

「アリスさん!?」

「すみません。これは夢なのかと思ってしまって」

「夢じゃありません。現実ですよ。アリスさんって、たまに突拍子ないことをやりますよね」


リク様に笑われてしまった。でも、いいの。リク様が笑ってくれるなら…。



「はい。リク様のケーキですから、良かったら全部食べてください。あ、飲み物もあったのに忘れてました!急いで用意しますね」

「ありがとうございます」




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