小ネタ集13

【疑問点】


翌日以降、私は仕事の合間に年上であるカルロ様やアガットさん、クロッカスさん辺りに甘くないケーキを作っては試食してもらっていた。しかし、それをお坊っちゃまが黙っているはずもなく───



「オレにもケーキくれよ!」

「だめですよ!今日のはお酒が強めなものなんですから。お子様は食べられません!」

「ヤダ、ヤダ!オレも食べたい!」

「だめったらだめです!」


ギャー、ギャーと騒いでいたら、その騒ぎに運悪く執事長に見つかってしまった。また怒られると内心思いながらも事情を説明した。すると、執事長がケーキに興味を示したので、試しにそのケーキを食べてもらった。なんと執事長の口に合ったらしく、怒られずに注意だけで終わった。

はあー、怒られなくて良かった。でも、怒られなかったけど、お坊っちゃまがうるさかった。

しかし、また騒ぎになったら、次こそは怒られてしまう。だから、ケーキはお坊っちゃまのいない午前中に作ることにした。

そうして、リク様の誕生日まで、あと二日まで迫っていたある日。今日も甘くないケーキを作って、食べてもらおうと渡り歩いていた。


そういえば、最近お坊っちゃまが「ケーキ!」って叫ばなくなったのよね。どうしたんだろ?あんなに騒いでたのに…。

そんな中、用を済ませ、お坊っちゃまの部屋に戻ると、お坊っちゃまが何かを食べていた。しかも、私を見て、固まる。



「ア、リス…」

「お坊っちゃま…」


お坊っちゃまの口まわりは、クリームがついていた。しかも、見たことのある。それはそうだ。今日、私が作ったケーキだったのだから。



「それ、私が作ったケーキですよね!どこから入手したんですか!?」

「……」


何も答えないお坊っちゃま。すると、後ろから声が聞こえた。



「ごめんなさい。アリスさん、俺です…」

「アガットさん!?」


どうやら飲み物を取りに行っていたらしいアガットさんが部屋に戻ってきた。

その後、アガットさんは説明してくれた。甘くないケーキとはいえ、お坊っちゃまが好きなケーキ。そんなケーキを貰えず、悲しんでるお坊っちゃまがかわいそうで半分、いや半分以上あげていたことを。アガットさんにもらっていたからケーキと騒がなくなったのか。お坊っちゃまは…。



「すみません。俺のをあげてました」

「ブランデーが入っていたのもですか?」

「あれは流石にあげてないです。それ以外は…」

「そうですか。それなら、いいです」


そう言って、私はある物を取りに部屋を出た。
それを手に持って、部屋に帰ってくると、お坊っちゃまが机に突っ伏せていた。



「どうしたんですか?お坊っちゃまは」

「ああ。今、アリスさんが出て行ったじゃないですか。それで怒っていると思って、落ち込んでいるんですよ」

「え?怒ってませんよ、私…」

「え、そうなんですか?俺もてっきり…」


もしかして、黙って出て行ったから、怒ったっと勘違いしたのかな。



「理由もわかりましたし、もう怒ってないです。お坊っちゃまはブランデーの入ったケーキを食べてないんですから。それを食べさせていたら、アガットさんにも怒ったと思いますけど」

「……本当…?」


お坊っちゃまは顔を上げた。どうやら私達の会話を聞いていたらしい。
私はお坊っちゃまの方へ近づく。



「怒ってないですよ。あと、これ…」

「?」

「ケーキです…」


今日作ったケーキの残り。もう一切れしか残ってはいないが、それを渡す。



「オレが食べてもいいの…?」

「はい。いらなかったら…」

「食べる!」


そう言って、お坊っちゃまはケーキを食べ始める。その姿に私は、アガットさんと顔を見合わせた。




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