Edo
ある休日の午後。
専属執事であるウィルに僕の部屋に誰も来ないように人払いをお願いしといた。せっかく彼女が来てくれたのに、邪魔をされたくなかった。念のために鍵はかけておく。部屋は、どの部屋も防音になっているから、ドアを開けてない限りは、外に音が漏れないようになっている。
たまにラーが開けたままの時があるけれどね。本人に聞いてみれば、その方が相手の反応がいいからだって。でも、ラーの新しい専属執事のオーは、マホくんとは違うから、ちゃんと人払いはしておいた方がいいと思うな。
そして今、僕のベッドにはリアがいた。二人で生まれたままの姿で抱き合っていた。彼女との関係は、初めてではない。数え切れないくらいに遊んでいる。今日みたいに僕の部屋だったり、彼女の部屋だったり、ホテルの部屋などもあった。リアは、僕のセフレの一人だった。
「リア」
「エド。大好きよ!」
「ありがとう」
リアが甘えるように僕に抱きつく。僕はそんな彼女の頭を優しく撫でる。
「ねぇ。相談があるんだけど」
「何?」
「どうしたら、他の兄弟ともヤれる?」
一瞬、目を丸くする僕。だが、すぐにいつもの笑みを浮かべた。
「……それを僕に言う?」
「あなただったら、まともに答えてくれそうだからよ。同じ兄弟でもブラッドは知らないって言うし、ライは適当だし、スミレは嫌がるから」
「あの三人はそうだね」
ビーは、自分と同じくらいのレベルの釣り合いが取れるキレイな女性だったら、誰でも良いとしか考えていない。ラーについても、リアと色々と相性が合うから、気に入ってるだけで好意まではない。反対にスーは、リアが好きだから、他の兄弟とはして欲しくないのだろうと考える。
僕としても、リアのことは嫌いではないが、後腐れなく遊べる相手としか見ていない。
「そんな君の希望は誰?」
「グレン、カルロ、マシロ、タスク、ハルク辺りかしら。ドラ、フェリはもう少し大きくなってからがいいわね」
「ドーとフーはまだ小学生だからね。というか、ほぼ全員を狙ってるの?リアは…」
「ドルチェ家の兄弟は、タイプは違えど、顔が良いのばかりだからね。あたし以外にも狙ってる女達が沢山いるわよ?」
「あれ?その中にリィの名前だけがなかったけど」
「リクも以前ならば、狙ってたわよ。でも、諦めることにしたわ」
「珍しいね。どうして?」
カメリアが息を吐いてから、答えた。
「前にあたしがメイドの子と入れ替わったこと、覚えてるでしょ?」
「あー、あったね…」
どこからか他人と入れ替わる薬を手に入れたリアは、ハーの世話係のアリスと入れ替わった。あの子の身体でリィに迫り、誘惑したらしい。うちの兄弟、一部を覗けば、彼女を気に入ってるから、リアの選択は間違ってはいない。
「あの子の姿ならいけるかと思ってたんだけど、全然ダメ。リクには、お見通しだったのよね。容赦なく拒否された。……それに」
「それに?」
「リク、キレると、伯父さまにそっくりで怖かったのよ」
「リィは一番父さんに似てるから。外見も性格も」
似たくないって、リィは言っているけど、どんどん似てきてはいる。本人には言うつもりはないが。でも、そのうちにラー辺りが口を滑らせそうではあるかな。
「エドから見て、誰ならヤれる?」
「うちの兄弟、か」
僕は考える。
まずリィがリアと関係を持つことは、100%ない。リィの好みは、どう見てもリアとは正反対だ。それに女の子に触られるだけで、じんましんが出るからね。リィに以前、好みのタイプを聞いてみたら、本の趣味が合う娘と話していた。リィと本の話が出来るのは、セレストさんの息子のグゥだけだ。男でも厳しいのに、女の子なら余計に難しいだろう。
それならば、他の兄弟はどうか。
「グレは、好きにならないとしたくないみたい。性欲は死んでないって、本人は言ってたよ。カルは、後腐れのない遊び慣れた娘なら、相手にするはずなんだけどね。一度相手した女の子とは、しないんだった。だから、仮にリアと一度寝たら、二度目はないかも」
「確かに一度だけなんて無理ね。下手くそな男なら、二度とヤらないけど。カルロ、下手ではないでしょ?」
「さあ?僕は見たことないからね。以前、カルとしたことある女の子が話してくれたけど、「色んな男としたけど、今までで一番顔も良いし、上手くて最高だった」って」
「エド。その女にカルロと比べられたの?」
「僕、その子とはしてないよ。誘われたけど、その時は気分じゃなかったからね」
「あなたにしては珍しいのね」
リアが目を丸くしながら言った。
だって、そうだろう?これでも僕は、カルを可愛がっているんだ。カルだけじゃない。弟達みんなとグレのこともね。僕に兄弟がいると、聞いた時は本当に嬉しかったんだから。
「マーは……掴めないな。そもそも好きなタイプがわからない。マーと二人きりで話したことないし。グレならわかるかもしれないね」
「マシロも普段はボーっとしているけど、ベッドの上だとどんな風に乱れてくれるか興味はあるのよ。マシロ、興味あると、なかなか離さなそうだし」
「それはあるかもしれないね」
「グレンもマシロもあの俳優の息子だし、一緒に連れて歩くだけでも自慢になるわ」
グレとマーの母親は、老若男女問わず人気のある芸能人だ。彼女を嫌いという人を聞かないくらい好感度は高い。中には好きじゃない人もいるだろうが。僕の周りでは聞かない。
だけど、リアには悪いが、あの二人はそう簡単には落ちない。リアに対して、良い感情はないだろうし。反対にリアは落としがいがあると、燃えるだろうけど。
「ターは、婚約者一筋だよ。リアに興味持たないんじゃないかな」
「タスクも男らしくなってきてるから、食べたいのよね。何とかならない?」
ターも最初は、女の子に興味がなかった。嫌悪とかじゃない。ただ友達と遊んでる方が楽しかったようで、話すと友達とのことばかりだった。あとは、ハーの話を楽しそうにね。やっぱり何だかんだ言いながらも、可愛いがってるし。
「難しいかな。ハーの婚約者にするつもりだったのをターが父さんに頼み込んで、婚約者になったんだから。一目惚れしたって本人も言ってたし。そうなると、ハーも難しいんじゃない?アリスを毎日追いかけてるんだから」
「ハルクはあの子の姿で迫ったら、顔を真っ赤にさせてたわよ。胸を触らせたら、満更でもない顔してたし。夜は大変だったんじゃない?」
「刺激を与えちゃったんだ。中身は君でも、身体はアリスだからね」
ハーに関していえば、彼も一途だ。
最初はアリスに母親を重ねてるのかとも思っていたけど、違った。完全に好意だ。アリスの隣に男がいるだけで嫌がる。専属執事のアガが彼女と楽しそうに話しているだけで、不機嫌になっていることもあるし。
二年前からハーは、アリスの後ばかり追っていた。自分の世話係にしてからも、変わらなかった。姿がないだけで、探し回る。あれだけメイドに近づこうともしなかったのに…。
「難しいね」
「そうね。今の段階だとね。それなら…」
リアが僕にキスをしてきた。最初は軽いキスを何度か重ね、そのうち深く激しいものに変わる。僕らの間を銀の糸が繋がるもすぐに切れる。
「今は、あなたとの時間を楽しむことにするわ。だから、あたしだけを見て?」
「かしこまりました。姫様」
再び、二人で気持ち良くなれることをした。僕の持っているゴムを全て使い尽くすまで。また買わないとだなと思いながら…。
その後、リアは夜遅くまで、僕の部屋にいた。世間でいう終電と呼ばれる時間。この時間では、うちにいる運転手は、既に帰っているから、僕の車でリアを自宅まで送った。
「ありがとう。また連絡するわ。エドからの連絡でもいいわよ。すぐに予定を空けるから!」
「わかったよ。その時は連絡するね。おやすみ、リア」
「おやすみ、エド」
軽く口づけて、リアが自宅の敷地内に駆けてく。そんなリアを笑顔で見送ると、僕はスマホを取り出して、ある連絡先に電話した。
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